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二十四話

 子供たちには遊べると思って火の色を変える術式を教えておいた。反応はとても良く何の色ができるのか全色見せてくれと言われたけど、僕は綺麗な空を見たくて覚えた副産物だったから青色やオレンジ色しか出来なかったので、また会ったときにみんなの色を見せてとその場は誤魔化しておいた。


 宿泊代は払い、食料を大量に部屋に置いてナナシの方を見ると相変わらずこねこねしている。

 僕も明日からいなくなると考えて一緒にこねこねしているとたまにナナシが配分が違うと言いだしてきて僕の爆弾に何かを混ぜてくる。


 そして静かな時間になるが今日はナナシがいつもよりかこねこねの速度が遅い気がする。

 早いときは考えてる時で、遅いときはなんだ?寂しいとか怒ってるとか?


「ナナシさん怒ってる?」

「怒ってない…」

「ナナシさん寂しい?」

「…寂しくない」

「ナナシさん楽しい?」

「楽しくない」


 うん、最後のは違うとわかる。ただどういう気持ちなのかやはり分からないんだよな。

 でもまぁナナシももしかしたら不安な気持ちがあるのだろうし、そういう意味を考えたらただ部屋の中でこねこねし続けるというのは楽しくないっていうのは案外真理なのかもしれない。


 アキの時は頭を撫でたらわりと落ち着いてたし、ナナシが大人しく椅子に座っているのもあって腕を伸ばして頭を撫でてあげたらこちらを向いて目が合った。


「…なんだ…?」

「不安なのかなと」

「…どうしてこうなる?」

「いや、落ち着くかなと」

「…そうか」


 そのまま撫でていたら、別に拒否されることもなく撫でられているのでもしかしたら本当に不安だっただけなのかもしれない。


 子供たちに魔法を教えたようにナナシにも軽い魔法くらいはもっと教えてあげればよかったかななんて今更ながらに思う。そうすれば少しでも戦える可能性の幅を広げれたし。

 隔離塔では思わなかったことばかりだけど。あの時こうしたほうがよかったんじゃとか、もっと良い方法があったんじゃないのかとか。それでも今できる全力を僕はしてると思うから…。

 もしここで死んだらなんて話し出したらナナシはきっと不安な気持ちが増えるだろう。


 それでも、もしここで僕が死んだらナナシは本来の目的を達成するはずだから。帰ってもいいんだよと言えればどれだけ気持ちが楽になるだろう。


「ナナシさん」

「なんだ…」

「うーん…なんだろうね?」


 レアラの件なんとかなると言えば納得して帰ってくれるだろうか?そんなことを言いたくなってしまった。

 でもきっとなんか今言うのは卑怯な気がした。結局僕が蒔いた種を他に擦り付けた結果ナナシは頑張ってくれて来たんだからその頑張りは無駄にしちゃいけない気がして。


 そのあとも黙々とこねこねした後は外が少しずつ明るくなってきたのでナナシとの時間もあと少しかと思いナナシの方を見ればこねこねの速度が落ち着いている。不安…少しは消えたかな?


 僕はリュックの中身を点検して一応普通の暖房魔道具も余りではあるが中に入れておく。

 もしかしたら向こうで作るかもしれないし。


 後のことはナナシに任せよう。少なくとも信頼に足る人物だ。


「ナナシさん、ちゃんとご飯食べてね」

「…失敗したら…逃げろよ」

「うん、その時はそうする」


 ジョルジュの家に向かう道中空を見上げれば雪がどんどん多く降ってくる。

 火で燃やす手段も考えていたけどこの雪じゃそこまで燃え広がらないかもしれないな。


 ナナシと一緒に作成した地図は内部構造が丁寧に描かれており僕が狙うのはまずは人目の少ないところに警備している魔族からだ。

 そこまで確認してジョルジュの家に着いた後はドアをノックして反応を待ち以前見た両親に家へと案内されてまだ兵士が来てないというので感謝の気持ちも込めて魔道具に魔力を注ぎなおしてあげているとやってきたという知らせが来たので居間の方へと来てみればダルガンよりも厳つい鎧を着こんだ魔族がいた。


「その娘か?」

「そう、仕事先を探してるみたいでね。フィさん?この人が兵士の方だよ」


 まぁ兵士というのは見れば分かる。


「初めまして旅の者になりますがフィと言います」

「うむ。オンダラと呼んでくれ。東の方で魔道具の調子が悪いのでその整備などを任せたいのだができるか?」

「複雑なものでなければ整備は出来ますけど…出来なかったら魔力を供給するくらいは出来ます」

「そうか十分だ」


 それだけ話すとジョルジュの父親と少し話し合っている中、よく見るとジョルジュが今起きたのか寝ぐせをそのままに階段の方にいたので軽く手を振っておいた。

 恥ずかしかったのか顔を赤くして階段を上がっていったので会話する時間はなかったが少しでも顔が見れてよかった。


 オンダラの方は話が終わったのか椅子から立ち上がり外に向かい始める。この椅子良く壊れなかったな。ジョルジュの家財は大体古い物なのによくあの厳つい体を支えたものだ。


 僕もオンダラの後を追い、ジョルジュの両親には頭を下げて感謝を告げて家を後にした。

 東の方と言ってたから東の砦なのだと思うが、オンダラ自体はどこで警備したりしてるのかさりげなく聞いておきたいが本人はあまり話す性格ではないのか静かに歩いていた。


 たまにだが荷物を多く困ってそうな魔族がいたら手助けが必要か聞いていたりするので、これも仕事の内なんだなとまじまじと見ていたら一言「すまない」と言って案内を再開してくれる。


「オンダラさん達の仕事って主に巡回なんですか?」

「それもあるが、雪かきも仕事の内だな。鍛錬になるという理由もありレディオンの民が不便ないようにするのもある。逆に夏場なんかは川まで水汲みなんてこともある。基本は鍛錬という理由だが民が快適に過ごせるように務めるようにせよとゴドー様が立案された内容だ」


 お、おう。聞いたら沢山答えてくれた。

 案外お喋りだったのか。


「ゴドー様は民のことを大事にされてらっしゃるんですね」

「うむ…少し頭の固いところはあられるが友と民を大事にする尊敬するお方だ」

「頭が固いというと?」

「むむむ。1日置きに砦を移動して鍛錬と称して交流されるのだが相手にできるものがおらんのだ…」


 1日置きねぇ…左回りか右回りで僕が警戒する日が決まるなら出会わないようにすることはできそうな気がする。もちろん油断はできないが。

 それと相手にできるものがいないというのは残念な話しだ。多少でもやりあえるものがいれば数で押せばなんとかなるなんていう淡い期待はできないということだ。


「僕も鍛錬に付き合わされたりしないですよね?」

「ははは。それはないだろう。兵のみだよあのお方が鍛錬させるのは。君は職人扱い?になるのかな」

「それなら良かったです。武術はからっきしなので」


 談笑が進めば案外話しやすい。というか子供たちを除けば一番話しやすいのではないだろうか。厳つい恰好とか顔で判断してはいけないな。


 ほかにめぼしい情報はなかったが、暇することなく東の砦まで来たら他の兵とのやりとりをし始めて僕に銀のプレートを渡してきた。一瞬魔銀かと思ったがそうではなく普通のプレートだ。

 プレートには管理人と書かれてあるので身分証明みたいなものだろう。


「大体のところはそれを見せれば入れるとは思う。魔道具整備と言えば会議などしてない限り通してもらえるだろう」

「なるほど…」


 これ他の人に売るやつとかいたら悪用されるんじゃと不安に思うが、まぁそんな奴がいたら即座に捕まえれる自信があるのだろう。

 それに魔法に疎い民が多いのなら悪用しようなんて考える輩の方が少ないか。


「寝室まで案内しよう」


 そういわれて中に入ることができて、ナナシが描いた地図とおおよその位置は同じで一体どうやって侵入したのか気になるがこれなら迷うことはなさそうだ。


 道は大体知っていたのでオンダラの話は適当に相槌を打ちつつ細かく周りを見るが質素な作りでありながらただひたすらに固い建築をしてるというのは感じる。

 花畑が有名と聞いていたから廊下に花でも活けてるとかもう少しおしゃれな要素も想像したがそんなことする暇があればゴドーは鍛錬でもするのだろう。


「直近で困ってる魔道具とかも案内されるのでしょうか?」

「いや、どうせ全部を周ると思うから都度見かける兵に魔道具の位置を聞くと良い。魔力が切れたものは発見したものが管理人に報告に行くはずだからその者についていけば良い」

「なるほど?」


 入るのはあんなに難しかったのに入った後はわりと自由なんだな。別に必要としてないがお給金とかどういう感じでもらうのだろう。

 国からお金が渡されるはずだから僕にも給料は出ると思うのだけど。


「他に魔道具整備してる方はいるんですか?」

「いや昨年で亡くなられてからは外注することがほとんどだ。住み込みで働きたいという者もいなければ整備士の者は長く務める者は少ない」

「そうだったんですか。その方はきっとこの場所が好きだったんでしょうね」

「そう…だな。そう言われれば何もないところではあるが嬉しいものだな」


 まぁ実際何もないしな。他の砦もこんなものなのだろうか?

 はっきり言ってあらかじめ地図を見ていなかったら同じような廊下風景で道に迷っていた気がする。

 扉も似たような作りだし。


 寝室まで案内されて、実質個室の部屋ということなので自由に使ってほしいと言われて中を覗くと埃が舞っていてまずは掃除から必要そうだなと感じるくらいには手入れがされてない。

 前任者の人を慮ってあげたら掃除くらいしてあげればいいのだろうに。


「迷った時も見かけた兵に聞けば答えてくれるとおもうので気軽に話しかけていってほしい」

「分かりました。仕事の方は今日から働けばよいですか?」

「明日からで問題ない、食料も自由に食糧庫から取っていけば良い…味の保証はしないから外で食べることを勧める」


 それは食糧庫として機能してないのではないか?非常食なのかな?

 ただカビだらけだったりしたらさすがに困るのではないのか。


「あ、休日の事とか聞いてもいいですか?子供たちと少し約束してまして」

「む?休日か…自由にしてよいと思うぞ。仕事さえしていれば誰からも特に何か言われたりはしない。魔道具の魔力が切れて三日経っても直らないなどあれば誰かが注意はするかもしれないが」

「なんというか…雑ですね」

「ははは。そんなものだ。暖房もあれば嬉しいがゴドー様からしたら寒さに負けてると言われるし照明器具だけ注意すれば案外何とも言われなかったりするからな」


 これがナナシの言ってた統治者によって民が変わるというやつか。たしかに警備兵がこれなら魔法を覚えようなんて暇なく鍛えられていたのだろう。

 まぁ僕にとってはありがたい話ばかりなので素直に受け入れよう。


「それでは警備の方に戻るが他に何か質問はあるか?」

「いえ…あ。ゴドー様が鍛錬してるときに邪魔したくないので鍛錬場だけ案内してほしいんですが」

「構わないぞ。見たがるものはいても邪魔したくないというのはあれか?血なまぐさいことは嫌いか?」

「まぁ…好きではないですね」


 正直に言うと笑いながら案内される。良い魔族だ。

 筋力ばかりに鍛えているが魔法や魔術を教えればもっと万能な兵士になっていただろうなと思う。

 いっそ少しでも魔法を使えるようにしてゴドーにぶつけるか?


 案内された場所を見て圧巻の光景を見た。


「「「ハッ!」」」「「「「セイ!」」」」


 勢いよく自分の武器や格闘を用いてこの寒空の中半裸で鍛錬をしている。


「えと…これは?」

「言ったであろう?寒さに負けるようではいかんと鍛錬するときは大抵服を脱いで皆励んでいる」

「それは…なんといえばよいのか…」

「初めて来たものは大体同じ反応をするから大丈夫であるよ。それに実際汗を掻いて服が邪魔になるまで鍛錬をするから合理的ではある」


 こんなの一般開放されていたら見物人が多く見てることだろう。ということはわかる。

 一体どんな思考をすればこんな鍛錬の仕方を考えるのか。


「以上であるが他には大丈夫か?」

「はい大丈夫です…とりあえず部屋の清掃からしようと思います」

「うむ。それが良いな」


 オンダラはそのまま鍛錬場の方まで身を乗り出して着こんでいた鎧を脱いで1人の魔族に絡んでいた。友達…?なのかな少し興味があって見ていたが肉弾戦で一撃一撃が重そうに聞こえる痛々しい音と共にやりあっていた。


 魔眼で動きを確認すると魔力の動きが肉体と連動している。ただ無駄が多いというのが本音と同時に戦闘においてその無駄を差しおいても戦いとして成立できるほどに激しい戦いの後にボロボロになりながらオンダラが勝利した様子だった。こちらに手を振っているところを見るにもしかしたら僕にサービスで鍛錬の様子を見せてくれたのかもしれない。


 手を振り返したら鎧を着こんでそのまま外に向かいに言っていたので巡回に向かったのだろう。

 体力馬鹿なのか?そしてやられたであろう友人もボロボロの状態で掛け声と一緒に素振りを始める。

 どっちも体力馬鹿なのか?


 これで魔法が使えたらどれほど脅威だったかと思うが。ナナシの言っていた通り前線都市にいた兵たちとは格段にレベルが違うのを見れて良い成果だった。


 寝室まで戻ると、さすがに面倒だったので浄化の術式を使って清掃を済まして。部屋に置いてあるものを確認すると日記帳みたいなものがあったので一応確認したら字が汚くて読みづらいが、どこどこを整備したので何日は保つとかこまめに書いてあった。


 日記というよりは記録帳と言った方が正しいかもしれない。

 あまり読む気にはなれなかったが、ちゃんと読み解いていけばどこになんの魔道具が置いてあるか書いてあるので意外と便利かもしれない。


 まだ使える無記入の紙に魔道具の内容と場所を記させてもらおう。


 他に使えそうなものはないかなと見て行けば部屋の隅に壊れた魔道具が置いてあってそれを持ち上げてみれば名前が刻まれてある。


『愛しいファビー』『愛しいキュアル』


 もしかしたらこの場所が好きで働いていたんじゃなくて魔道具オタクで魔道具に名前をつけて働いていた変態だったのかもしれない…。


 いや…もしくは遺留品の可能性もあるのだ。でもそれならその魔族の持っていた物を持つよな?なんで魔道具に名前がついてるんだ?


 ここの連中はまだ予想の段階だが馬鹿の集まり…いや。その馬鹿の集まりに2カ月も悩まされていたなんて思いたくないから鍛錬に紳士な連中なのだ。そう思って記録帳を書き写すことにした。

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