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二十二話

 ナナシから爆弾の作り方を聞いたが集めたものを砕いて練りこんでいくという流れらしく魔道具の改造よりは遥かに楽だった。

 配分があるらしく一応それも注意してやっていくがナナシの方が素早くこなすので僕は補助に回って仕事に行くからという流れになって子供たちのところに魔法を教えながら過ごしていくというのが続いた。


 ジョルジュの両親で働いた影響かジョルジュから仕事を斡旋してもらって意外と依頼してくる魔族が多くお金も大分溜まってナナシの食費に困ることも材料に困ることも少なくなってきて更にそれ以上の成果も得られていた。


 依頼者の中には魔道具がそもそも消耗品だと思っていた者がいて魔力が尽きただけの魔道具が転がっていてそれを対価にしたこともあり、わざわざ魔道具を買いあさっていた時よりも暖房魔道具が結構もらえたりした。


 子供たちにもお礼という形で魔眼の練習も込めて暖房魔道具をおすそ分けしつつ、僕が泊ってる宿の中に大量に爆弾が作られていってる。


「フィン殿は…色んな者に慕われるのだな…」


 ふとナナシがそんなことを言ってきて、雑談なんて珍しいなと思った。


「僕は普通にしているだけだよ。むしろちょっとこの要塞が異常だった感じかな…?」

「異常…?」

「前に僕がみんなに魔法を教えたと思うけど、人間の国でも術式自体は珍しいものではなかったでしょ?」

「そうだな…そこから魔法に変えるやり方は知らない者の方が多いが…」

「魔族ではわりとポピュラーな内容のはずなんだよ。それがこの要塞では知らない魔族の方が多かったんだよね」


 そこまで話すとナナシも興味を示してくれたのか一緒に考えてくれ始めてくれる。


「恐らくだが…指導者の問題ではないか…?」

「指導者?」

「フィン殿は移動することが多いから…指導者や統制者に興味はないかもしれんが…統治する者によって民の生き方は変わる…」


 というとこの要塞を統治しているといえばゴドーか。

 たしかにゴドーが魔法に長けてるという話は聞いたことがないが…その影響で魔族がここまで魔法を蔑ろにするものなのだろうか?


「考え方によっては…これは脅威だフィン殿…」

「そうなの?」

「我々がやろうとしてるのは…主に暗殺に近い…フィン殿の作戦で言うと火計の方は成功するが混乱を鎮静する能力に長けている可能性が高い…」


 僕とは違う考え方だ。

 火なんて魔法でなんとかされると思っていたが、むしろ魔法を使えないと考えて要塞都市を燃やせばそれに苦戦し、北門の破壊がそんなに効果を発揮しないということだろう。


 東西の問題に関しては僕の能力頼みだからナナシはそれを知らずに心配なのだろう。

 実際僕もその考えで予想してみるが、魔法での戦いなら魔法障壁をあらかじめかけておけば万魔を使う時間を稼げると思っていたが。そうではないとしたら?


「ナナシさんはこの要塞の兵たちはどれくらい強いと思う?」

「前線都市よりは近接能力に長けている…前線都市の魔王の子よりは弱いが…オレでは一対一でも太刀打ちはできない…」


 別にナナシを過少評価も過大評価もしてないがナナシは俊敏な動きで捉えることは僕では困難だったしギュスターヴもそれは思っていたはずだ。

 それを考慮すれば一対一でも太刀打ちできないということは勝てない、むしろ負けると言ってるのだろう。


「それと…連携力が高い…」

「ギュスターヴの人望が高いとは聞いていたけど…ゴドーの兵の方が強い?」

「間違いない…憶測だが…ギュスターヴとやらは集う者が多いが練度は低く…ゴドーの兵は数よりも質で勝っている…」


 なるほど。しかし僕としては案外ありがたいのではないだろうか?操りさえできればそれだけゴドーですら苦戦してくれる可能性がある。

 とはいえそのゴドーが化け物なんだが…。


「単刀直入に言ってほしいんだけど、作戦の成功率はどれくらいだと思う?」

「2割あればいいほうだ…」

「たった2割…」


 ここまで考えても2割。いやむしろ僕一人だと2割もなかったと考えたらナナシが来てくれたことはかなり大きい戦力だ。


 どうしたらいいか迷うが。予定していた2カ月の内2週間は経過しているから残りは1カ月半。


「やっぱり作戦の見直しかなぁ…」

「今の作戦はやったほうがいい…ただ…他に計略は必要だ…」


 ひたすらに僕は貰い物の暖房爆弾とナナシは夜に要所の地図作成と空いてる時間にナナシ爆弾をこねこねしている。


「ナナシさんは何か作戦思いついたりしないかな?」

「…フィン殿の方が知略には長けている…実際魔法の話も疑問に思う着眼点もある…」

「その答えを出してくれたのはナナシさんだけどね」


 1人の時だったら間違いなく失敗してたと思う。最初にナナシが来たときはどうなるかと思ったが今ではとても頼りにしている。


「一つ…」

「ん?」

「アキ殿達が来る可能性…それなら可能性は4割くらいには…なるとおもう…」

「この雪だからなぁ…」

「作戦決行を…先延ばしにはできないのか…?」

「…理由はちょっと言えないけど…先延ばしにすれば今より状況が悪くなるかな」

「そうか…」


 リビリアが敗北した瞬間ゴドーとレアラはともかく、戦闘最強と言っていい皇竜テトが僕を殺しに来るだろう。


 そしてテトに勝つにはアキよりもリビリアがいないと厳しいと思う。

 すでに喧嘩を売ったという意味でテトは僕に対して容赦はしないだろうし、ギュスターヴを討った者として捜索もされれば竜総出で出陣されたら時間の問題で見つかるだろう。


 最悪リビリアが負けるにしてもテトを倒さなければ僕は死ぬのが確定する。


「フィン殿は…」

「ん?」

「いや…何故魔王の子を殺すのだ?」


 今までその話題に触れてこなかったのに今日のナナシはお喋りだな。

 そしてその質問は核心でしかない。


「んー…」

「答えたくないなら…いい…」

「きっと平和を望んでるから…じゃ駄目かな?」

「平和…?」


 僕は実際にはわからないけどリビリアは魔王は戦争をしたがっていて、そして人間も戦争をしたがっている。そんな話を鵜呑みにするわけではないが理由にはなるだろう。


「魔族も人間も平和な世界とか?」

「それは…ヘレス殿が言っていたやつか…?」

「そういえば言ってた気がするね。でも僕はヘレスのやり方じゃ平和にならないと思うし、倒さないといけない奴はいると思うんだよ」


 矛盾に近い言葉ではあるけど。

 平和のために結局殺しを選んでる時点で僕が戦いの火種になってるとヘレスなら言いそうだ。

 ただヘレスとの違いは僕はリビリアを知っていて、ヘレスはリビリアを知らない。


 それにリビリアが嘘をつかないと思っていてもリビリアがその時嘘をついてないとしても、気が変わって戦争を望むように変わり果てたら意味なんてなくなるだろう。


「フィン殿は…多分ろくな死に方しないな…」

「あはは。何度死にかけたか分からないから実感湧かないや」

「ふっ…そうだな」


 アキ達がいれば4割の勝率…そこに僕の万魔が加われば5割以上になるはずだ。

 それでもアキ達はいない状態での2割を決行しなければならない。


 僕がするべきはこの可能性を上げることだ。そのためにはさっきまでの会話でナナシが言っていた魔法に長けてない部分を攻めるという考えが思い浮かぶ。

 たしか魔力を補給する魔族がこの要塞で仕事をしていたはずだ。その魔族たちを操れば…もしくは残りの時間をすべて魔法を使える魔族を味方に加えればアキのいない分を補って4割まで勝率を上げることは可能じゃないだろうか?


 まだ1カ月半ある。ではなくもう1カ月半しか残ってないと考えたらその方が利口な選択だと思える。

 ただこれは相談できる相手がいないし、僕ができる戦法の延長戦でしかない。


「ナナシさん、爆弾の方は足りるかな?」

「北門に関しては…自信は無いが期限までには一角を崩せるとは思う」

「中央広場にもその爆弾て少し分けてもらっても大丈夫?」

「問題ない…」


 ということは分断できたとして東西の制圧を僕がやるにあたって死なないことをまず優先しないといけない。

 この要塞の中で少しずつではあるが知り合いも増えたしそれを利用すれば多少の邪魔があっても最短ルートを通って真反対まで移動しなければならない。


 もう猶予がないのだとしたら…2週間後から決行して1カ月をかけて東西のどちらかを先に制圧してそれをゴドーに悟らせないようにしないといけない。


「もし僕が2週間後から爆弾作りを手伝えなくなっても間に合うかな?」

「…?まぁ…いけなくはない」

「それじゃあ覚悟をそろそろ決めないとね」


 まずは東西どちらかに給仕でもなんでもいいから仕事を求めに行って潜伏してとにかくゴドーに会わないように動きながら全員に万魔を行使していくしかない。

 人員移動とか詳しいことまで分からないがそれでも今の可能性だと負けが濃厚なら危険でもやるべきだ。


「どうするつもりだ…?」

「ナナシさんも言ってたでしょ?慕われるんだなぁって…どうにか味方を作れないか試してみようかなって」

「危険すぎる…それに言ったはずだ。質が違う…それだけ統治者に心服している証拠だ…」

「大丈夫だよ。ゴドーにさえ会わなければ…いやまぁ、ばれた時点で失敗するしその時は暴動を起こすから失敗だと思ってほしいな。そしたらナナシさんは要塞から撤退してアキ達と合流してどうするか決めて」


 そこまで言えばナナシは黙ったまま作っていた爆弾の手を止める。

 何か考えているのかは分からない。


「何故…?」

「なにが?」

「何故…いつも危険な役回りをするんだ…?」

「それは僕にしかできないからだよ」


 アキなら表情が変わるから分かりやすいけどナナシはいつまでたっても分かりにくい。

 この質問も。僕は別にいつも危険な役回りをしていたつもりはないしむしろ安全な役回りをしていたと思う。

 今回は危険だとは思うがそれまでは命を守る保証をもって行動してきたはずだ。


「…賛成できない…」

「ナナシさんなら賛成してくれると思ったけど」

「暴動というのも保証はできない、それにオレがアキ殿と合流してもフィン殿がいなければレアラを倒すこともできない、それと…」


 珍しく流暢な喋りに思わず驚いたが。どれもこれも安心してほしい内容だ。


「ナナシさん。僕よりアキの方が強いしレアラを倒すのに向いてるよ。暴動に関しては僕を慕ってくれてる子供がいてね…その子たちに訴えかけてもらえるようにするから。ほら子供って純粋だから兵士たちの言うことなんて聞かないで騒ぎにくらいはしてくれるからさ」

「しかし…」

「ずっとゴドーを倒す方法を考えてたけどさ。僕じゃ分かんないや。あはは。でもさ可能性を少しでも上げるならこれしかないなって僕は思うんだ。ナナシさんは他に代案あるかな?」

「…か、考える…」

「そっか。考えるなら2週間後までに考えてね」


 話し終えると、いつもは黙々と一定間隔でこねていた爆弾作りがいつもより早い気がする。

 爆弾じゃゴドーは殺せないだろうな。


 潜入するにしても東西どちらかに伝手があればいいのだけど、子供たちにまた頼る形になるけど聞いてはみるか。


 それからは話すこともなく時間が過ぎて行って。子供たちと集まる時間かなと思う明るさになってきたので出かけることをナナシに告げたのだが集中してるのか返事はなかった。



「フィ姉ちゃん!」


 広場に行くと相変わらず真っ先に声をかけてくるのは元気なヴェルだ。

 それからみんなが僕の元へ集まってくる。


「先生見てください!もうちゃんとした魔法が使えるようになったんですよ!」

「お姉ちゃん!私も短い時間だけど魔眼を使えるようになった!」

「フィ先生、少しだけど魔道具に魔力を補給できるようになったよ」


 僕と比べるとやはり魔法の扱いが通常の魔族は上手いのだなと自分に呆れてしまう。才能の差というやつだろうか。


「みんなすごいね。というかもう僕よりみんなの方が魔法上手だよ」


 そう言うとそんなことないとみんなは言うが、僕の非効率なやり方を聞けば多分幻滅されてしまうかもしれない。


「みんなにちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

「どうしたのさ今更?俺たちの仲じゃん!」

「うーん…ちょっと難しいかもしれないお願いでね?東西の砦?みたいなところあるでしょ?あそこで住み込みで働きたいんだけどそれに詳しい人いないかなって」


 住み込みで働きたいと言ったところでみんなの顔が暗くなる。実質遊びに来れなくなると思っているのだろう。


「あ、でも休日とかもらったらここに来るからさ…駄目かな?」

「…お父さんとかに聞いてみるけど…なんで兵士のいるところにわざわざ行きたいのさ」

「先生なら別にそんな働かなくても…むしろ本当の先生になってもいいんじゃないでしょうか」


 みんな思い思いに言ってくれるけどこればかりは譲れないし…それに…。


(どうせこの子たちは死ぬ)


「それまでにとっておきの魔法を教えてあげるから。お願い」

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