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十九話

 要塞レディオン。要塞というよりかは要塞都市というべきだろう。

 フィブラと分かれたあとに要塞に入るときに魔族かどうか確認されたくらいで簡単に入れたのはよかったけれど。


 魔眼で周囲を見渡せばギュスターヴほどではないがどれも魔力に揺らぎを感じさせるほどに強い者から普通に暮らしているものが数多くいることで若干酔いそうになりつつもどこにゴドーがいるのかがさっぱりわからなかった。


 思えばずっと中央にいたギュスターヴの方が動きやすかったのだと実感できる。

 身バレを隠しつつ人気のなさそうな宿を選んでそこからこそこそと道具屋を巡ったりとしていたが道具だけ揃えても特に意味はなく作戦の立てようがない。


 人間の国と前線都市でやったように一度内乱でも起こそうかと思ったがそれで警戒されてしまっては元も子もないので地道に探すしかないのだが。要塞と言うだけあって一般的には立ち入り禁止区域が多く困った。


 一般開放されてる場所だけでも十分広いのだが、恐らくゴドーは一番厳重な建物にいるのではないかと予想はしてもそこまでの道のりも長い。



 気づけば一か月という時間をほとんど探索行動で費やしてしまい何をしてるのか自分でもよく分からないまま散歩しているのが現状だ。


 外は雪も降り始めていて寒くなってきたので厚着のローブでも買おうかとしたときにはフィブラが現れてお金と衣服はわりと充実している。


 フィブラから戦況を聞くたびにリビリアが段々と不利になっているという話を聞いて焦りはするのだが冬の間は大丈夫だから安心してほしいとのこと。

 理由を聞けば竜は冬が苦手らしく動きが鈍くなるという理由で少し拍子抜けだったが、テトが下がったとしてもレアラがリビリアと交戦しだして春には決戦があるだろうとは伝えられた。


 おおよその猶予は残り3か月といったところらしい。


 一応参考までにゴドーがどこにいるか聞いたりもしたのだがゴドーは自由奔放らしく一番厳重な建物だけを警戒しないでもっと視野を広げて戦闘を起こす場合は入念に準備したほうがいいとアドバイスをもらったくらいだ。


 あとフィブラの竜もそんな頻繁に動かせなくなるからと多めにお金をもらって次に来るときはゴドーとの決着が済んだあとかリビリアが危険なときだろう。



 そこまでの状況がわかってなお、どう行動を起こせばいいのか分からない。

 命令して建物に入り込むという作戦も考えたけど僕の命令してる間は記憶が残るし意識も残る。

 この万魔が使いづらいと分かったくらいで大人しくしているくらいしかできなかった。


 宿に戻り、浄化しつつベッドに倒れこみ要塞の地図を作る作業をしつつ。住人との交流を思い返す。



 最初はあまり交流しない方がいいと思っていたがあまりにも情報がないので近くにいる魔族にそのままゴドー様って今なにしてるんでしょうね?なんて聞いてみれば


「あんた知らないのか?万魔の矛ギュスターヴ様が亡くなって以降ゴドー様はそりゃあもう乱心されていたさ。今は復讐に燃えて自己鍛錬してるんじゃないのかねぇ」


 なんて聞いて顔を青ざめてしまったくらいなものだ。


 一応聞く人が違えば答えが変わるかなと思ったけどどれも似たようなものだった。


 なので現在分かることは、この要塞にゴドーは存在していることは間違いないこと。

 そして鍛錬の場所が毎回違うということ。

 体格は巨躯で恐ろしいほどということも聞いたので、外見だけでわかる可能性もあるが魔族は外見的特徴が様々なので案外分かりにくい可能性もある。


 薄暗い空から舞い落ちる雪を見て、本来なら朝日がでてもおかしくはないのだけど夕暮れ以下の時間帯といってもいいくらいには暗い。


 白い息を吐きながらフードを目深に被って、要塞の地図を書き加えていって落とすべき要所の確認を再度行う。

 暖房の魔法でもあれば部屋の中でも暖かいのだろうけど僕が使えば暴走してしまうだけなのでコートだけが頼りだ。それかもう少し値段の高い宿に泊まれば暖房の魔道具がある部屋があるかもしれないが…贅沢は言えない。それをするくらいなら武器として使える魔道具を買った方がいい。



 背伸びをして作業がひと段落したので、本格的な計画を練る。


 第一目標はゴドーの抹殺。これは譲れない。その為の過程としてが第二目標からだ。

 第二目標は要塞の各要所となってる部分の破壊及び乱闘騒ぎを起こすこと。これはギュスターヴ戦でもある程度は有効だったため行っておきたい。

 今回は対策されてる可能性も考慮してそもそも要所となってる部分そのものを複数個所制圧しておきたい。


 東西南北のうち、南がもっと堅いので東西を制圧して南と北を分断したのちに南へ総攻撃しゴドーの探索をしつつ排除。


 第三目標は魔道具をあらかじめ暴走するように仕組みを変えて中央を爆破し大通りを封鎖させること。これで分断はより有効になるはずだ。


 部屋の隅には少しずつ買い込んだ魔道具があるのでそれを細工しないといけないのだけどさすがに1人だとしんどいながらも僕がゴドーを倒すためなのだから仕方ない。


 中央爆破は万魔を使い魔族を従わせて行う予定だが。第二目標を先に行う必要があるため僕がどれほど要所を早く制圧できるかが鍵になるだろう。


 それでもさすがに毎日部屋に閉じこもって魔道具をいじるのは気が滅入って来たのでたまには外に出て魔道具を弄ろうかな。


 ゴドーをどうやって倒すか。肝心の第一目標がいまだに定まらない。そんなことを思いながら雪景色の中、路地の途中にある広場に用意されてある椅子に腰かけて魔道具を弄る。

 本来なら小範囲の暖房を行うための器具で現在は値段が季節的に高騰してるため少数しか毎回買えないがこれを小型爆弾に変えてそこそこ用意しないといけない。


 そんなことをしてると子供の魔族が雪を集めて転がしたりとこの広場が遊び場に変わっていく。元々彼らが普段遊んでいたのかな。


「あ、なんか珍しいやつがいるー!」

「だめだよ知らない魔族に近づいちゃ」


 無邪気な声が聞こえてきてちょっとこの場所から離れて別の場所でも探そうかなと思ったところで最初に僕を珍しい扱いしてきた少年が近づいてきた。


「なにしてんだ?」

「少し外の空気を吸いながら作業してただけだよ」

「へー…これ直してんの?」


 僕が弄っていた魔道具に興味を示したのかじっと眺めているので、まだ未改造の魔道具を手渡してあげると興味津々に見ていた。


「ねぇ、だめだよ勝手に触ったら…」

「いやくれたんだから大丈夫だよケミリも見てみろよ!魔道具なんて普段触らせてもらえないだぜ?」


 少年が少女に対してケミリと呼び、少し気になることを話していた。


「魔道具を普段触らせてもらえないって、どういうことかな?」

「んぁ?知らないの?子供は魔力が安定するまで魔道具を触っちゃいけないんだぜ?」


 そういうものなのか。隔離塔の資料ではそんなことは書いてなかったけど一般市民の常識と僕の知ってる常識は案外違うのかもしれないな。


「魔法や魔術は使わないの?」

「そんなの教えてくれるやついねえしなぁ?」

「あの…私たち帰りますから…」


 少女は不安そうに言ってるし、後ろの方では僕たちのやりとりに混ざりたそうにしてる子供たちが数人いる。


 子供なら大丈夫かと思いフードを払って顔を見せてちゃんと安心させるようにケミリと呼ばれる女の子に声をかける。


「別に僕は気にしてないよ。それよりもみんなが知りたいなら魔法を少し教えてあげようか?」

「え…?」

「まじで!?姉ちゃん魔法使えるの?」


 少年は後ろの子供たちを呼びかけて行き、ケミリは僕がフードを外したことできょとんとしたように見ていた。


「どうしたのかな?」

「あ、えっと。綺麗だなって…」

「ありがとうね。ケミリちゃんでいいのかな?ケミリちゃんも可愛いよ」


 それから興味津々だった少年がヴェル。後ろにいた男の子が2人ジョルジュとレイモンド。

 僕の名前はどうしたものかと考えたけど実名を言ってもありふれた名前なので問題はなさそうな気がしたけどフィと短く名乗っておいた。


「フィ姉ちゃんってどんな魔法が使えるの?」

「僕はそんなには使えないかな。でも知ってることはあるから多分大丈夫だよ」


 ジョルジュとレイモンドも魔法と聞いてから全員が集まって僕の話に集中して聞いてくれていた。


 純粋に魔力がどんなものか分からないということだったので。まずは魔力を少しでも見えるようにするために魔眼を僕の方で術式発動して見せてあげるとそれだけで喜んでくれていた。


「すごい!魔力ってこんなふよふよしてんだ!」

「フィ姉ちゃんの魔力少ないように見えるけどこれって普通なの?」


 はしゃいでる中レイモンドが僕に対して質問してくるがこれは多分聞かれると思っていたことだ。


「僕の魔力は基本的には使うことがないから引っ込めてるんだよ。他の魔族は使う頻度が多いから常に放出してるけど僕は魔法が下手だからね」


 魔法糸で術式を紡ぐなんて面倒くさいことをしていると普段から魔力を放出している必要がないことは説明しなくてもいいだろう。多分この子らなら僕と違って普通に魔法を使えるだろうし。


「これで魔法使えっかなぁ!?」

「とりあえず見てもらった通り魔法を使うにはまず術式とか色々あるんだけど。簡単なやつから教えてあげよう」


 そうしていると思い出すのはアキ達に教えていた魔法のやりとりだが、あの時とは違い魔族というのもあるのか僕が教えていくとすぐに小さな火を灯したり。水球を作ったりとしていた。


「こんな簡単に魔法って使えんの!?」

「わぁ…」


 ケミリもちゃんと話を聞いていたようで魔法を使っている。

 しかし一般魔族が子供にどうして魔法を教えていないのかが分からないな。安定してないとか言っていたけど僕とは違って十分に使いこなしてるように見える。


「みんなに言うけどこのことは内緒だよ?僕のことも…せっかく魔法が使えたのに使っちゃダメって言われちゃうかもしれないだろうし」

「「「「はーい」」」」


 それから魔道具を弄りながら皆の様子をみてるとさすがに魔法を使いすぎて魔力枯渇して疲れてる様子が見られる。

 お遊び程度の魔法をそんなに使いまくるなんて相当に魔法を使いたがっていたのかな。


 要塞に住んでる住人は大小はあれど魔力総量が多い魔族が多かったからもっと生活に使いまわしてると思っていたが…いや、暖房の魔道具が高騰してる値段なのももしかしたら魔法をそもそも使わない魔族が多いからって理由なのかもしれない。


「フィお姉ちゃんて偉い人なの?」

「ん?ケミリちゃんどうしてそう思うの?」

「だって魔法を教えてくれる人ってお金がいるってお母さんが言ってたよ」


 それを言われて見れば僕の場合は資料や本が隔離塔に運び込まれてほぼ独学みたいなところはあったけど。普通は教える人がいてお金が発生するのかな。

 でもこんな小さい魔法で高いお金が必要ともあまり思えない。


「んー。僕はたまたま自分で使うようになっただけなんだ。だからそういう教えてくれる人がいるならその人の言うことを聞いた方がいいのかもしれないね」

「えー…でもお姉ちゃんの教え方分かりやすかったよ?」


 困ったな。まさかここで一般常識がないことが露呈するとは。


「僕の場合は多分だけど魔法よりも術式に詳しいから…?かなぁ?」

「それあんまりわからなかったけどお姉ちゃんが使ってるのは術式なんだよね?」

「そうだよ。魔族は基本的に魔法の方が得意だから術式を覚えるのは魔法を使うための下準備みたいなものかな?一度覚えちゃえば術式を組まなくても魔法で実現させちゃった方が早いしね」

「うーん?」


 少し羨ましいものである。ほぼ無自覚で術式を覚えて魔法をさっさと使うのだから。

 それとも僕も子供のころから無邪気に教えてもらっていたら出来ていたのかな。暴走するというのも僕が変に術式を意識しすぎてるのかもしれないし。


「そろそろ暗くなってきたけどみんなは帰らなくていいのかな?」

「あ?本当だ!あ…でも…フィ姉ちゃんは明日もここに来る?」

「僕?まぁしばらくは魔道具を弄らないといけないから気分が向いたらかな?」

「明日も来てよ!」


 そういわれて別に悪い気はしないからいいのだが。一度魔道具店を巡って買える分の魔道具を買い込んでから来ることにはなるかもしれない。


「それじゃあ昼過ぎごろには来るようにするよ」

「やった!約束だぜ!」


 子供たちが喜びながらさっきまで魔力枯渇して倒れていただろうに楽しそうに帰っていく。


 僕はあと数個仕上げてから宿に戻るとしようかな。


(子供を使ってゴドーを襲えばいい)


 ふと無意識にそう思ってしまった自分に悪寒が走る。

 ゴドーを子供を使って倒す…出来るか出来ないかで言えばもしかしたら出来るかもしれない…。

 僕の知る限り魔力暴走してでも強力な魔法を放つように仕向けてゴドーに近づくには子供として不自然ではないだろうし。


 ただそうすれば暴走して生きてたとしても子供はゴドーに殺される。そんなことをしてしまっていいのだろうか。


 別に元々そんな目的であの子たちと話したわけではない。でも僕にはもう後がないこともまた事実で。それを考えると実現的な行動だ。


 今まで操った人間も魔族も区別なく平気で殺してきたのだし今更子供を数人殺したところで僕に罪悪感なんて綺麗事を言える資格なんてないだろう。


 ギュスターヴを殺した後に見た魔族の視線を思い出し。あの子供たちをどう利用するか計画を練り直していかないといけない。

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