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十七話

 体の調子はやはり左手に違和感が残るが問題はない。

 それをあえてみんなに言う必要もないかと思い。僕たちは森に入った場所を目指すことにした。


 そうすれば地図を見て大体の位置が分かるはずというのもあるが、奥地に行って迷ってしまう可能性もあったため。


「俺たちにもその地図の読み方教えてくれないか?」


 アキがそう言ってきたためどうしたものか少し考えてしまう。

 別に説明してもいいんだけど、魔領はそれなりに広い。要所だけしか僕も知識でしか知らないから上手く説明が出来るかも怪しい。

 ただ何も言わない方が怪しいかと思って今から目指すところだけ教えよう。


「僕たちが以前戦闘を行った場所が魔族の戦場になることが多い前線都市アデルバが地図で言う子の位置で。そこから南下してそのまま魔領の奥地に向かうところかな」

「それは我々だけでは危ないのではないのか?」

「ダルガンさんの言う通り危険ではあるんだけど、国境での出来事から今のうちに戦力を削いでおけば人間に対して攻めてくる懸念は消えると思う」


 それらしいことを言ってるが。リビリアがいる以上攻めることはないだろう。どうせ魔王の座で揉めてる段階でもあるだろうし。ギュスターヴを討った今、慎重になっているはずだ。


「そもそもあたしたちってー今ごろ国ではどういう扱いなのかなー?」


 ヘレスがそう言えばダルガンが難しい顔をしている。多分人間国からは僕達…というかアキ達は死亡者扱いかもしれない。

 前線都市の情報が人間に漏れるとも思えないし、国境整備に今頃人間は大慌てだろう。


「その…」


 アキが何かを言おうとしたところでダルガンがそれを手で止めた。


「吾輩から言おう、ヘレス。」


 いつも厳つい感じだが柔らかな言い方を最初よりはしていたダルガンが真剣な顔になってヘレスと向き合う。


「フィンにもいつかは言おうと思っていたのであるが、フィンはアキさんから聞いていたのであるな?」

「えっと、どの話しなのかわからないんだけど」

「ではそのままヘレスにだけ話しておこう。教会からは恐らく国の支援を行うように言われていたのではないか?」


 わざわざ魔領まで来てることの説明だろうか?僕がアキに言われたことはなんだっけかな?

 魔領まで行くことまでは覚えているんだけど。


「そうだねー…んーそれで言うなら正確に言えばあたしが来たのはアキちゃんが行くっていうから教会から派遣されたんだけどねー」

「む?」

「…ダルガン殿、恐らく全員言われてることが違う…」

「それなら吾輩から言おう。アキさんを先導し魔軍の弱体化を図ることを吾輩は言われた」


 ダルガンがそう言うとアキは少し驚いていた。ナナシの言う通りみんな言われてたことが違うのだろう。

 アキが驚いた理由はダルガンと元々国元で知り合いだったからかな?


「オレは…アキ殿が報告した人間が国境へ向かった魔族…元凶…それを突き止めるように言われた…」

「あたしはアキちゃんを無事に帰すことと…まー今更言っても問題ないと思うけどアキちゃんの死体回収が理由でここまでついてきてるよー」

「俺の死体回収って…そんな理由でヘレスはここまで来てたのか?」


 各々目的は違うのか。国と教会の方針の違いはよく分からないが、ナナシは国側の人間じゃなかったか?


「俺は魔領へ潜伏して状況を確認するように言われてきただけなんだけど」


 あぁ、そういえばそんな内容だった気がする。潜伏どころか大立ち回りしていた気がするけどアキは不満とかなかったのかな。みんなが反対しなかったからとか?


 そこまで来てアキ以外の視線が僕の方に向いてきて僕も何か言う流れっぽい気がする。


「えと。アキについてきて少しでも役に立てるように…?」


 そう言うとアキが照れくさそうにしながら、ヘレスが抱きしめてきた。人間はこのスキンシップ好きだな。


「フィンちゃんだけは一番純粋な目的で安心したなー」


 ごめんけど多分一番不純だと思う。本来の目的を言おうものなら間違いなくナナシの目的として僕が対象者だ。

 なんなら僕がいなければ恐らく人間国はもう十数年は安泰だったろう。なにせ僕がリビリアに言われてやってきたときにはリビリアがすでに魔王を殺した後なのだから。


「こうして話すと楽になるであるな!ヘレスさんもナナシさんも胸の内を話してくれて吾輩はうれしく思う!」


 ダルガンは晴れた顔で笑っているしヘレスとナナシは相変わらずだ。アキだけは僕に申し訳なさそうな顔で頭を撫でながら胸の内を吐露する。


「むしろ俺のせいでフィンだけ危険なことに巻き込んでごめんな」

「えっと、お構いなく?」

「なんだそれ」


 しかし人間も人間で派閥がありながら妙なことをこの少人数で行かせたものだ。

 軍を率いても皇竜テトがいた時点で敗北していただろうけど。教会の判断的にリビリアと同じような感じがする。アキを生死問わず持ち帰ることを目的にするなんて大分イカれてる。


 ナナシに関しては僕をずっと疑っていたと思えば納得はするが、今まで特になにもされてないけど本当は僕に対して何か言いたいことや聞きたいことが色々あったのではないだろうか。


「ただ俺は遠回りしてでも国に戻ったほうがいいんじゃないかと思うんだ。ナナシの目的は果たされてないけどそれ以外は十分できたと思う」


 それは困るなぁ。しかもアキが言ってしまえばヘレスは無条件で同意するだろうし。ギュスターヴを倒したとなればダルガンも反対はしないだろう。

 実際顔を伺えばナナシ以外は帰りたそうにしている。


「その…元凶の件なんだけど心当たりがあるんだけど」

「え?」


 ここは嘘でもなんとか繋いでおかないといけない場面だ。元凶になりえる存在を言えばナナシは納得して帰るかもと思うが嘘を重ねればまだなんとかなるはず。


「まず最初から説明すると、国境にいたのが魔王の子の1人。そして都…前線都市アデルバにいたのも魔王の子。魔王には子供が複数いてそれぞれ種族が違うんだよね」

「人間を操作したのも…魔王の子ということか…?」


 ナナシが問うてくるが実際僕も魔王の子なのだからそこは間違いないので頷いておく。

 後は誰のせいにするかってところだけど。これはもう消去法でいくしかない。


「そこでレアラという魔王の子がいるんだけど色んな混血の魔族で何をするか分からない魔族ということだけ…多分その魔族がいる限り安心できないんじゃないかな…?」

「フィンはヴァンパイアの仕業かもって言ってたけどヴァンパイアの混血でもあるのか?」

「えっと、そこまでは分からないけど、それが分からないくらい混血らしいとは聞いたかな。多分ヴァンパイアの血も入ってると思う」


 そこまで言えばヘレスはあまり興味なさそうにはしていたが、残り三人は考え始めてくれている。

 僕も、なんでそんなこと知ってるんだ?と言われたら噂程度に聞いたとしか答えれないが実際は隔離された塔の書物で見た程度の情報しか知らない。


 ただどの万魔を以ても、人を操れるほどの魔族なんてレアラくらいしか僕は知らない。事実が僕だとしてもレアラなら出来てもおかしくはない。


「一応聞くのであるが。そのレアラとやらの場所はわかるのであるか?」

「…魔王城だと思う」

「そんな遠くから…人間に影響を及ぼせるのか…?」


 ナナシの疑問も最もだし、及ぼせるわけないだろう。真実を知ってるがゆえになんとか誤魔化さなければならない。


「これは実際に人間国で起きたから僕も半信半疑ではあるけど、遠くからでも操作できるんだと思う。レアラは実験に没頭しているそうだから内容までは分からないけど試験的にやったことじゃないかな?」


 実際はただの引きこもりで、戦力としても他の万魔よりは下とは書類で見たことがある。

 何をしているかとかは詳しくは記されてなかったのでレアラがどんなことをして万魔の知識と言われているかは分からないが多大なる知識の貢献をした。という抽象的なことしか分からない。


「皆は…戻っていい…オレは行く…」


 ナナシがそう言って進もうとするのをダルガンが掴んで引き留める。


「まてまて。これはナナシさんだけの問題ではなかろう?吾輩もついていく。というよりもそんな危険な存在なら行くしかあるまい」

「アキちゃんはどうするのー?」


 ナナシはダルガンが引き留めてる間にヘレスはアキに聞くが、アキは困った顔で悩んでいる。


「俺は…俺たちじゃその魔族は倒せないんじゃないかと思う…」

「じゃあ帰ろっかー」


 困ったな一番帰っては困る人間が帰るとなると勝機はない。というよりもナナシとダルガンがレアラにたどり着く前に恐らく殺されて終わる。


「アキなら倒せるよ」

「え…?フィン?」

「えっと…ヘレス?教会がアキを重視してるのってそういうことじゃないの?」

「フィンちゃん…まーそうねー」


 アキがどういうことか戸惑っているが、僕はリビリアから。ヘレスは教会から勇者がアキであると恐らく知らされていると半分はそうであってほしい願望でヘレスに問いかけるとヘレスは話すのを嫌そうな顔している。


「フィンちゃんはむしろあたしの味方してくれると思ったんだけどー?なんでアキちゃんを戦わせたがってるのかなー?」

「僕はアキに本当のことを知ってほしいだけだから」

「たはー。純粋だなー…その純粋はさーアキちゃんを危険に放り込むって思わないわけ?」


 敵意のある声音に変わっていくヘレスにナナシもダルガンも話し合いを止めて僕たちの話を聞き始める。


「アキちゃんは帰りたいんでしょー?それなら帰ろうよ?」

「アキでなければならない理由を知っていてヘレスはどうして帰らせようとしてるの?」

「そりゃフィンちゃん教会のご意向だからだよー?あたしも死にたいとは思わないし。むしろアキちゃんのこと好き好きしてたフィンちゃんがどうしてそう言ってるかわっかんないなー?」

「そこまで聞けば十分かな…教会はやっぱりアキを勇者として判定してるんだね?」

「俺が勇者…?」


 僕がそう言えばヘレスから睨まれるが、どうしてもアキが必要な僕としてはヘレスと敵対してもここは退けない。


「そういえばフィン俺の事勇者様って言ってたっけ?」

「あーーー?そうなんだ?最初からしってアキちゃんに近づいてきたわけなんだフィンちゃんは」

「そういうヘレスはどうなのかな…?」

「どういう意味?」

「教会が…エイガムアス教会が勇者を選定しているはずなのにアキだけは公表をせずにいるのは自己保身じゃないの?」


 少なくとも勇者の選定は行われ複数人の勇者がすでにいる。そのうちギュスターヴに何人か殺されたらしいけどそんなことは今はどうでもいい。


「あたしは教皇でもなんでもないただの神官だよー?そんなことまでわかんないかなー?」

「それでもヘレスはアキを重要視して勇者というのもさっきの反応で分かっていたという反応だったじゃないか」


 ヘレスはいつもの温和な表情ではなく溜息と一緒に僕に対して術式を発動させてきた。

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