表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/63

十六話

 意識を取り戻すとどこまで気を失っていたんだろうと思うのと同時に僕はまだ生きているのかという感覚もあって、もしかしたら死んでしまったのかななんて思ったりもした。


「フィンちゃん起きたのー?」

「あ…ヘレス…」

「うーん…フィンちゃんて呼んでいいのかあたし分かんなくなっちゃったんだけどフィンちゃんはどう思うー?」


 なんのことを言ってるのか分からないがヘレスが多分看病してくれていたのだろう。周りを見渡せば森の中で近くには川が流れている。


「えっと…呼び方は気にしてないけど?」

「まっ、あたしもフィンちゃんはそういうと思った!可愛いもんねー」

「うん?うん、ありがとう?それよりもここは?」


 ヘレスから今の状況を聞くと前線都市アデルバからは脱出できたということ。南門が開くのを見て成功したと思い移動しながら僕を探していて倒れていたのをそのまま拾い脱出。


 そのあとは僕の道案内がないと困るということからリュックの中身を見れば最低限の食料などはあったし地図もあったけど魔族の地図の読み方が分からないということで僕の意識が回復するのを待つために食料と水分を確保できる場所へ移動して今がそこであること。


「あれからどれくらい時間が経ってるの?」

「2週間かなー?フィンちゃんに食事を取らせるのすごい大変だったんだからねー?」


 一緒に行動してる間は常に食事を摂っていたから大丈夫だとはおもうけど出血が酷すぎたからもし食事をくれてなかったら回復がもう少し遅かったかもしれない。


「えと。ありがとう?」

「大丈夫だよー。それにしても本当に無茶ばかりするんだからー」


 間延びした声のヘレスを聞くと落ち着く。それほどまでに意識を失う前の光景がまだ頭の中に残っているということでもあるのだが。


「他のみんなはどこかに行ってるの?」

「フィンちゃんの携帯食だけじゃ足りないってことで加食できるもの探したりとかかな?あたしはフィンちゃんが食べれるって言ってたものを探そうって言ったんだけどフィンちゃんが起きてない間にそれは食べたくないって言われちゃったー」


 僕が言ったものっていうと痺れる程度の果実とかのことかな?それらを食べてくれた方が助かるけどそんなに嫌だったのか。


 周りを再度見渡すが、多分地図を見ても道があるとこまで出ないと僕も現在地は分からないだろうな。

 川があるという情報だけで考えるなら予測でしかないけど前線都市アデルバからは相当離れたと思う。


「魔領に人間国の食べ物とかあるのかな?」

「魚は普通にあたしたちの国と差はなかったよ?果実とかキノコとか野菜は分かんないものが多かったかなー?」


 ということは主に川魚を捕まえて食べていたのか。2週間ということは僕のリュック内の携帯食だと1週間は少なくとも川魚生活をしてるのかな。


「一応キノコは乾燥させて果実とか野草はフィンちゃんが起きたら分かるかなと思っておいてあるけど見る?」

「僕に分かるものであれば…ただキノコはちょっと詳しくないから見ても分からないかも」

「それじゃあキノコはだめだねー」


 野草に関しても多分だめなものが多いと思う。瘴気で育った野草は果実よりも影響が酷いから人間が食べたらどうなるか分からない。魔族でも自分で栽培する者がほとんどだし。


 僕が動こうとする前にヘレスは籠に入れたものを持ってきてくれてそれらを見てみるが、書物に載ってなかった果実もいくつか混じっていてそれらは除外していった。


「残りは食べれるの?」

「僕の知ってる限りだと味が極端に酸っぱいものや甘すぎるものが混じってるけど食用として使われてるもののはずだよ」

「甘いもの…どれだろう?」

「この色が混ざり合ってる果実だね」

「食欲は失せる見た目だねー…でもいっか」


 恐れることなくかじって、美味しかったのか一個そのまま食べつくしていた。

 魚ばかりの生活で飽きていたのかもしれない。


 体を動かそうとして左腕が少し違和感を覚えるが、ちゃんとくっついている。

 指に力が入りづらいというのは治療した結果の後遺症だろうか?リハビリすれば治ればいいのだけど。


「フィンちゃんはさー。あんなことしたら魔領で商売とかもうできないんじゃないの?」


 元々商売なんてしていなかったからなんて答えようか迷っていると僕が落ち込んでるように見えたのか若干早口になりながらヘレスが話してくる。


「いや、あれだよー?なんか困ったらさ教会にくればフィンちゃんも別に大丈夫だよって言いたかったんだよ?まぁ…教会も魔王の子を討伐した貢献者となれば全然受け入れるからさー?」

「えっと…多分教会に行くことはないので大丈夫だよ。でもありがとうね」

「そっか?行くあてがあるならいいんだけど困ったら言ってねー?」


 生きている以上、万魔は残りゴドー、テト、レアラがいるからそもそも僕かヘレスが生きてる保証はあまり見込めない。

 今回だってギュスターヴが僕に対して何か話そうとしていなかったら恐らく全滅していた可能性の方が高い。


「たださー。フィンちゃんに協力してた魔族の人たちは大丈夫かなー?」


 そいつらはもう死んでるとは言えないし、苦笑いしか返せないが。


 僕が立ち上がると衣服が汚れてないものになってるのでヘレスが着替えさせてくれたんだろうなと思いつつ歩くとヘレスから「あまり遠いところ行かないようにねー?」とだけ声を頂いて真っすぐ森を進んでみればやはりどこか分からない。


 フィブラなら見つけてくれるかもという期待はあるが、時間がかなり経っているから案外僕が死んだものという扱いになってるかもしれないな。

 それならまた次の場所で騒動を起こす必要があるが、前線都市アデルバを守っていたギュスターヴ亡き後代わりの万魔か、はたまた高位の魔族が配属されたあと次の街は警戒が強まってることだろう。


 そもそもテトが僕の存在を確認してから日が浅い状態での内乱騒ぎだ。僕そのものが周知されていることも考えないといけない。

 いざとなれば命令を下せるとしてもそこまで来たらアキ達に隠せるわけはないだろうし。


 わざわざギュスターヴが中央広場にいたことが悔やまれる。もう少し分からないところで暗殺できたらとかいろんなことが頭をよぎるが…勝てたことが奇跡に近いのだから前向きに検討したほうがいい。


 とにもかくにもリビリアへ何とか生存報告と、フィブラから今の状況を確認。

 次にすることはアキ達と一緒に南に進んでこの状況よりも休息に適した場所を見つけることだ。


「フィン?」


 アキが両手いっぱいに果実を持って僕のところまで歩いてきた。


「もう動いて大丈夫なのか?ヘレスから大丈夫だとは聞いていたけど…全然目を覚まさないから」

「あはは。そんな果実持って真剣に迫ってこないで、面白いから。大丈夫だよ」

「そっか…よかった…」


 喜んだ顔をした後になぜか落ち込んだ顔をして、どうしたのか。僕からしたらよくもまぁ万魔の矛を打ち破ったものだと賞賛しかない。


「俺がもっと強かったらフィンも死にかけなかったんだろうけど…」

「それは間違ってるよ。アキは十分強いし、僕は実際に生きてるじゃない」

「でも…」

「僕は何回も負けを覚悟しちゃったけどアキが奮闘してくれたおかげで勝機を見いだせたんだよ。ありがとうね」


 そもそもアキがいないと成立しない状況だったのだ。そんな落ち込む必要なんてどこにもない。


「ごめん…」

「あんまり僕はなんて声をかけていいのか分からないけどさ?僕も無茶な作戦にしちゃってごめんね」


 そう言って身長が届かないので肩をぽんぽん叩くと、わざわざ頭を下げてきたので撫でてあげる。


「ありがとうな…」


 ただ奇跡は二度起きない…僕がまた相手の戦力を間違えて人数差で襲おうものなら間違いなく死ぬ。そのことを再度思い万魔の強さを再確認して戦えるように考えなくては。


「とりあえず戻ろうか?」

「そうだな。そろそろあいつらも戻ってるかもしれないし。ヘレスはどうしてた?」

「果実の選別したら先に食べちゃってたよ」

「まともなもの食べれてないからな…俺の分残ってるといいけど」


 その両手に抱えてるものも含めれば十分足りるだろう。

 一応周囲を魔眼で魔力の流れを見通すが小さな魔物の気配くらいで特にフィブラの魔力を感知することはなかった。


「フィン殿…」

「うわっ!?」


 周辺を見てたはずなのに背後から唐突にナナシが現れて驚いて変な声が出てしまった。

 いつから、そしてどこから出てきたんだこいつは。


「…自分を探していたのかと…違ったか…?」

「え?違うけど?」

「そうか…」


 ナナシにはそう見えたのか。まぁたしかにどこにいるか分からない奴ではあるけど見ていたなら普通に声をかけてほしい。なんで背後なんだろう。


「ナナシさんは大丈夫なの?」

「…?あぁ。武器は…残り少ない…」

「体調の方を聞いたつもりだけど。でもそっか。それも考えないといけないね」


 どんな武器を使っていたのか結局確認できなかったが投擲していたことから恐らく消耗品か、使った後は本来回収する予定だったのかもしれない。

 移動も問題だけど物資も問題だったか。


「フィン殿は…魔族なのか…?」

「え?」

「何言ってんだよナナシ、魔族ならこんな危険な旅についてこないだろ?」

「…そうか…」


 アキが聞いていたのか代わりに答えてくれたけど。やはり疑ってはいたのだな。

 ただテトに続きギュスターヴも僕の名前を言ってたことを聞いていたのだとしたらナナシからしたら僕は関係者以外に見えないだろう。


 抹殺したい気持ちがせりあがるが、今は共闘するしかないのだからいざとなればナナシには魔族と打ち明かして万魔の3人を殺したい動機でも適当に作っておくか…。


「おぉ!ヘレスさんから聞いてはいたがもう動いて大丈夫だとは」

「ダルガンさんも元気そうでよかった」


 ヘレスと一緒に魚を焼きながら果実を頬張って元気いっぱいに手を振っている姿を見てまた全員でいれたことに少し安堵する。


 さて、食事でもしながらにはなるがとにかく情報を聞いておかないと。


 アキが持ってきた果実を選別しながら僕の分の魚も用意されてあったのでそれを焚火の近くで焼きながらみんなの会話を聞けば。魚の話や魔物の話などちらほら出つつでただの雑談の中いつ会話に混ざろうか迷っているとアキが僕の焼いていた魚を渡してきた。


「もう焼けてるよ」

「ありがとう」


 一口かじれば。なんとも野性味あふれてるといえばいいのか、微妙に生臭さが残ってるが魚を初めて食べたことに今気づく。


「なんというか、新鮮な味?」

「そうかな?結構川で見かける魚だから変わった味はしてないと思うんだけど?」

「えっと…」


 なんといえばいいのか困っていたらヘレスが大口で魚を食べながら会話に交じってくる。


「調味料とかなんにもかけないで食べたこと少ないんじゃないー?フィンちゃんのリュックにそういうのは無かったけど商人なら携帯食の方が食べなれてるだろうし」

「そうなんだ?」

「それにフィンさんは開拓地で育ったのならむしろ山菜や肉を食べることの方が多かったのではないか?」


 僕を置いて勝手にみんなが納得してくれるからそれでいいけど。


「そういえば野草もフィンが見てくれたんだっけ?」

「フィンちゃんは野草はあんまり食べない方がいいって言ってたけどー?」

「見たことある野菜があったから良かったら見てほしいんだけど」


 アキが取り出してきたのは瘴気を含んだ野草だった。これは食べれないだろう。

 そのことを言おうと思ったけれどどうにも食べたい気持ちが強いのか強いまなざしで見られてしまっている。


「えと、うーん…」

「あー…駄目そうかな?」

「ちょっと待ってもらっていい?」


 そこまで期待してるなら僕自身期待はしてないけど試しに瘴気を少しでも払う術式でも使ってみるかと魔眼で瘴気を主に含んでる球根から魔法糸で編み込んだ術式を展開してみると野草の色が青々敷くなっていく。


「え?」

「フィンちゃんなにしたの?」

「美味しくなるおまじない的な…?お腹壊すかもしれないけど多分食べれるかもしれないよ?」


 一応瘴気自体は無くしたと思うけど瘴気で育ったことに変わりないから保証はできないことを告げたが美味しい野菜なのか小さい鍋を取り出して魚と野菜を一緒に煮込み始めていた。


「アキさん本当に食べるのか?」

「まぁ魚に飽きてきたっていうのもあるし、果実も食べれて満足ではあるけど栄養的に野菜は必要だと思ってね」

「1人で…食べてほしい…」


 アキ以外は食べたくなさそうにして、アキが少し寂しそうに鍋を煮込んでいるから近くに座って出来上がるのを一緒に待つ。


「フィンも食べるか?」

「うーん?まぁ食べようかな」

「そっか!一応ネギのはずだから出汁が出て美味しいはずなんだよ」

「ねぎ…?」


 野菜の名前なんだろうけど僕はやはり食べたことないものだ。

 多分身体的に僕は食べてもお腹壊さないかもしれないけどアキだけに食べさせるのも申し訳ないので出来上がったスープを一緒に食べると、魚がさっきまで生臭かったのがなくなって美味しく食べれた。


「どうだ?フィン」

「おいしい…」

「そっか!」


 それを聞いていたのかナナシ以外も食べたそうにしだして、アキが小さい器によそって渡して食べているとみんな美味しそうに食べていた。


「なにこの草で美味しくなるのー!?」

「ふうむ。これが栄養であるか」


 栄養とは違うとアキが説明してるが、異世界から来たという割にはこの世界にあるもので調理とか出来ることが少し意外だ。元の世界とやらの知識なのだろうか。


 ふと気になってナナシの方を見ると特に何かをしてるわけでもなかったため一応声をかけておく。


「ナナシさんも食べてみたらどうかな?」

「腹を…下すのかもしれんのだろう…?」

「多分大丈夫…多分」

「…食べる」


 ナナシも食べに来てくれたことでアキがまた喜んでいるので恐らく良いことをしたのだろう。

 実際にお腹を壊したら僕は少なくとも動けるから大丈夫だろうけど、その時は野草に対して瘴気を払うなんて術式をしても無駄だったと思おう。


 それがなければ案外いろんな野草もなんとか食べれるかもしれないし食料が少しでも増えれば旅路が楽になるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ