第二話
第二話
やはりプロ4人でやるセットはいい。余計なことを喋る奴もいないし、皆んなマナーもいい。うんうん。これこそが麻雀だ。
「ツモ 1300-2600の一本場は1400-2700」
うん。点数申告も皆んなしっかりしてるな。
さあオーラスだ。俺は3900をツモるか5200のであがりでトップか。
ガラガラガラガラ
ドアが開いた。大関さんがオッサン3人引き連れて帰ってきたようだ。なんか4人酔っ払ってねえか??
「さぁ大関さん、ぶつべ!」
「はいはいやりましょ」
「おいトシちゃんビールとってくれい!」
「クソジジイ!自分で取れよ!」
「はいはい僕が持ってきますから。はいビール飲む人ー?」
「はーい!」
最悪だ。せっかく4人で楽しく打ってたのに。これじゃあぶち壊しだよ。
「お兄ちゃんたち悪いねえ。パチンコ打ってたらタチの悪いのに捕まっちゃって。ビール飲む?サービスするからさ?」
「いえ。大丈夫です。僕たちプロなんで。でも少し静かにしてくれると助かるんですけど」
「プロだってよーー!!にいちゃん達あれかーー!Mリーガーってやつかーー!?」
「いえ。いつか僕たちもなりたい目標みたいなものなんですけど。」
「おう。じゃああれだな?雀鬼ってやつだな!?」
いい加減ウザいな。こんな酔っぱらい無視して集中してオーラスやろう。
四五六六七八④⑤⑤⑨⑨45 ドラ③
クソ。なかなかテンパイしない。後ろのジジイがニヤニヤしながら見てるのも気に入らない。
ツモ⑤
よし、ツモって裏乗っけて逆転だ!
「リーチ」打④
「おー!雀鬼リーチだー!!頑張って下さい❤︎」
ジジイに応援されても嬉しくもなんともねえよ。
数巡後
「ツモ 500-1000」
「おーツモったかーよかったのーー流石プロだーー!」
裏ドラが乗らなかったのは残念だが、このプロのメンツでアガれたのが嬉しい。やはり先制リャンメンテンパイは即リーチだ。
「さぁ大関さん。こっちもおっぱじめようか。いやあプロの近くで打つなんて緊張するなぁ。」
どうやらジジイ達の卓もスタートするようだ。こっちはこっちで楽しむとしよう。
俺は少し気になった。あの卓、枠ついてないんじゃないの?大関さんも気付いて無いし。ほら、配牌上がってるのに誰もツモって無いじゃん。ちょっと教えてやらないと。プロとして。
自動卓のガラガラと次の山を積む音が終わった。
「よーし俺の親だな!北!」
俺は眼を疑った。
爺さんは親の第一ツモを取ると、手の中から北を裏返しで打牌し、卓の穴に放り込んでしまったのだ。
「西!」
「⑨!」
「東!」
「一!」
彼等の麻雀には河が無いのだ。バカな。こんなので麻雀ができるはずがない。俺は彼等の麻雀?をいつしか食い入る様に見入っていた。
「大関さん、プロがみとるでー」
「ああ。やっぱ気になりますよね」
「俺らがやってんのは麻雀じゃなくて麻ぁそうなっちまったもんはしょうがねぇ雀だからなぁ」
「麻ぁそうなっちまったもんはしょうがねぇ雀?」
「そうそう。面白いのよ。これが。西!」
「成田さん。ダウトです。12000」
「うわー東発からバレたー!流石大関さん!」
ダウト?何のことかと一瞬思うも、すぐに謎は解けた。成田っていう爺さんが裏返しで切った牌が表になると西ではなく6ソーだったのだ。どうやら打牌の呼称は嘘をついてもいいらしい。ただそれがバレてダウトを宣告されると、宣告された点数を払わなけばならないようだ。ダウト成立後、局は流れず、そのまま続行された。俺は成田という爺さんの手牌を覗きに行った。
77889一ニ三七八九九九
ドラが8のこの局 安めのツモあがりを拒否したのか?これじゃあダウトで12000払ってフリテンじゃないか?このオッちゃん何がしたいんだろう。
「うーんちょっと危ないけど9ソー!」
「大関さんそれ高め!ピンフ メンゼン ジュンチャン 一盃口 表表 バイマン!」
「いやーやられた!やっぱ危ないよな!手に惚れちゃった!」
「何や、大関さんダウト取ったはいいけど赤字やないかい!」
「まぁそうなっちまったもんはしょうがねぇっちゅうことで笑笑」
訳がわからない。ツモアガリを切って高めロンって。フリテンじゃないのか?
俺が不思議そうな顔をしていると
「これが麻ぁそうなっちまったもんはしょうがねぇ雀の醍醐味なのよ。普通の麻雀とは違うところで、ツモアガリが無いのよ、で、フリテンも無い。フリテンも無いから河もいらない。まあ俺らが集まった時しかできないからなあ。今日は騒がしいかも知れないけど許してよ。俺はこれだけが楽しみなんだからさあ。」
常識人がいた。そういえばこのオッちゃんだけ妙に口数が少ないと思ってはいたけど。
「よぉいつまで見てんだよ。やんないなら帰るぜ?雀TMやりたいし」
「あー腹減ったな。俺もなんか白けちゃった。」
「解散する?俺風俗行きたい。俊ちゃん麻ぁそうなっちまったもんはしょうがねぇ雀?でも見てたら?」
かくして、俺らのセットは解散した。
この後、自分でもびっくりする言葉をいつのまにか発していた。
「あのー 僕も混ぜてくれませんか?」