麻ぁそうなっちまったもんはしょうがねぇ雀
麻ぁそうなっちまったもんはしょうがねぇ雀
第一話
AM 9:00 アラームの音で目が覚める。
そうだ、今日は団体の勉強会だった。
俺は大山俊。競技プロだ。雀TMというネット麻雀ゲームの最高位まで到達した事もあり、同期の中でもトップの成績を残している。
電車で2駅。吉雄家で牛丼をすすり、雀荘「ポッポ」へと向かう。階段を登り、ドアを開けようとすると鍵が掛かっている。店長の市川に電話をかける。
「もしもし市川さん。今日店空いてないの?今日勉強会って言ってあったじゃない?」
「悪いな俊ちゃん。俺今多摩川競艇来ちまっててよう。今日は店休みなんだ。」
とんでもない野郎だ。俺が予約入れたのは2週間前だってのに。しかも一昨日よろしくって電話いれたのに。
「ああそうだ俊ちゃん。すぐ近くによう。大関ってやつがやってる雀荘があるからそこ使えばいいじゃない。集合したらそこで待ってて。大関迎えに行かすから」
「大関?知らないなあ。まあほどほどにしてよね。市川さんは本当勝手なんだから。」
「悪い悪い終わったら飲み行こうぜ」
程なくしてセットのメンツが集まった。俺は皆んなに事情を説明し、大関という人間を待つことにした。
メガネをかけた太ったおっさんが声をかけてくる。
「君たちが市川さんが言ってたセットのお客さん?お待たせ。すぐ近くだからさあ行こうか。」
セットのメンバーで誰かが言った。
「ありゃ大関じゃなくて横綱だろ。」
確かに。俺もそう思う。
店に到着。看板もないし外から見て雀荘とはとても思えない。大関が鍵を開け、電気をつけると俺らは奥の席に通された。
「帳面とペン。チップ置いとくね。焼き鳥使う?」
「焼き鳥とあと、チップもいらないです。俺らプロなんで」
大関はニヤッと笑い、皆んなにお茶とおしぼりを配った。
「あれ、捨て牌の河を抑える枠がないですね。つけてもらえませんか?」
「ああごめんごめん。ウチこれ使わないから外してたんだよ。はいこれどうぞ。」
何言ってんだこいつ。枠使わないとかありえないだろ。準備不足を言い訳しやがって。
「じゃあちょっとパチンコ行ってくるから好きに使っていいよ。お金は適当に置いといてね。」
そう言い残して大関さんは行ってしまった。
「まあいいや。始めようか」
かくして俺らプロ4人でのセットが開始された。