狼とドライアード 8(イオの話)
イオの話:
ヒルダさんの部屋に戻ったら、サーシャさんが遊びに来た。色違いの寝巻きをもってきて、どれがいいかって聞きに。
それからレンシアさんと、疲れたから途中で寝てしまったユナさんと。イザベラさんは仕事中でいないそうだ。
色々聞かれるんだろうと思って憂鬱になったんだけれど、皆が集まるとそれぞれ負けずに楽しそうに話始めた。
始めにどの色の寝巻着が私に似合うか議論して、それから私の洋服が綺麗って誉めてくれて、それから人狼の中で誰が一番好みかって聞かれて。
サーシャさんが言っていたけど、ファング隊長は私達が酒場に行った後、ヒルダさんが帰ってきているかどうか心配して部屋の様子を見に来ていたらしい。それを聞いてヒルダさんは嬉しそうにしていた。
皆があまり楽しそうに話しているから、私も身の上話とか、ここに来た事情とかを話して皆に聞いてもらえればどんなにいいだろう、と思った。きっと、すごく楽になる。
でもやっぱりどんな風に話始めていいのかわからなかった。
それに、皆遠慮なく大声で喋っていたので、私の話を聞いてもらうにはベッドの上に立って”注目!”と叫ぶしかなかったかもしれない。
へとへとになるまで話て、今日、ファング隊長と一緒に哨戒に出たユナさんは寝てしまって、皆部屋に帰って寝る事になった。
「そういえば、あんたの話を聞いてあげられなかったね」と、寝る前にヒルダさんは思い出したように言った。
「また、明日にしよう。それから、もし私に相談しづらいようだったらサーシャかシルバーバックに相談しな。シルバーバックはわかるね。今日、荷馬車に一緒に乗っていた人狼さ」
私は頷いて、おやすみなさい、と言った。疲れが一気に出てしまって、寝るより外なかった。
朝、早く目が覚めた。ぐっすり寝て頭がすっきりしている。ヒルダさんは、まだ寝ていたので、私は起こさないように起きて、身支度をした。
外に出ると、門の方で人の声がする。ファング隊長と何人かの兵士が集まっている。隊長がこちらを見て手を振ったので私はそちらに行った。
「イオ、どうした」
「朝、早く目が覚めてしまったんです」
「そうか。散歩なら構わないが、出ていくつもりならヒルダに一言断ってからにしてくれ。俺はこれから出て留守になるからな」
「わかりました」
私が答えると、隊長は安心したように頷いた。
「いってらっしゃいませ」
と言って私が頭を下げると、少し笑って頭を撫でてくれた。そのまま隊長と兵士達は門を出て行った。昨日話したレンシアさんが兵の中に居て、私に手を振ってくれた。