狼とドライアード 6(オッドアイの話)
オッドアイの話:
ヒルダはイオと一緒に煮込みか何かを食べていた。シルバーバックは軍関係の連絡を読んでいる。字を読めるのはこの部隊では奴だけだからな。
ヒルダがイオを皆に紹介すると、酒場はちょっと静まり返った。あまりここら辺では見ない雰囲気のお嬢さんだ。まあ、でもヒルダがいつもの調子で睨みを効かせていたので、からかおうって奴はいなかった。
ヒルダは賑やかに話しながら食事をしている。いつもの調子だったので、少しすると酒場もいつもの雰囲気に戻っていた。
そこへファングが戻って来た。ヒルダはまだ怒っていたらしい。
「イオ、もういいかい?部屋に戻るよ」
そう言って、イオの手を引っ張って酒場を出ていった。
「オッドアイ、俺は余所者は追い返せと言った筈だぞ」と、ファングは不機嫌そうに俺に言った。
「一度追い返したんだが、また戻ってきやがったのさ。生憎だが今度こそそういう用事はシルバーバックに頼んでくれ」
「事情も聞かずに適当に追い返すから半端な事になるんだ」と、シルバーバックの奴が余計な口をはさんだ。俺の半分くらいの年なのに生意気なんだよ、シルバーバック。
「どんな事情だったんだ、シルバーバック?」
ファングにそう聞かれて、奴は立ち往生した。ざまあみやがれ。
「悪い。まだ聞いていない」
「おー、おー。仕事の早いことで」
俺がそう言うと、シルバーバックは本気でムッとしたらしい。テーブルに乗っていた俺の酒瓶をとりあげて床にあけた。飲み過ぎだ、とか言っている。おい、ふざけるんじゃねえぞ。