狼とドライアード 4(ヒルダの話)
ヒルダの話:
駐屯地に着くと、とりあえずイオには元のようにフードをかぶってもらった。目立ちすぎるからね。
疲れて、人形のような綺麗な顔が凍り付いたように見える。私がこの娘の身内だったら、ひとまずあったかい風呂に入れるところだ。
そう思いついてシルバーバックに風呂が沸かせないかどうか聞いてみた。シルバーバックが隊舎の世話係に頼んでくれてね。
湯を無駄にするのももったいないからイオと順番に入って、私もあったまったらファングの馬鹿の事なぞ正直どうでもよくなったよ。
イオも少しくつろいだようだ。頬が薔薇色になって笑顔も見える。やっぱり寒かったんだろうね。
「今日は私の部屋で寝な。ベッドも一緒で構わないだろ」
イオは頷いた。
「私の寝間着はちょっと大きいね。サーシャのを借りてくるからちょっと待ってな」
人狼は大柄なのが多くってね。女の人狼は男ほどではないんだけれど、それでもね。
案の定、サーシャのでも大きかった。まあ、しょうがないか。
「この駐屯地には女性の方もいらっしゃるんですね」
「人狼は女の方が強いんだよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ。月神は女の味方でね。腕力や体力は、まあ、男が強いんだけど、女はいつでも狼に変化できるのさ。男は満月の時だけだけどね」
「知りませんでした」と、イオは目を丸くした。
「兵士をやろうって女は少ないんだけれど、まあ、色々あってやってる者もいるからね。ここでは、女の兵のまとめ役は私なんだ。なんでも相談しておくれ」
イオは頷いた。
「さて、食事なんだけど、部屋に持ってくるよ。食事の時間に遅れたから、ディックの酒場で何かもらってこよう。大したものは無いんだけれどね」
イオは少しボーッとしていたが、慌てたように立ち上がった。
「運んでいただくなんてとんでもない。私も一緒にいきます」
イオは疲れているみたいだったから私としてはゆっくり休んでいて欲しかったんだけどね。あまり恐縮されても返って気疲れしそうだったから、私はイオと一緒に酒場まで夕食を食べに行く事にした。