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狼とドライアード 20(ファングの話)
ファングの話:
イオが死んだ後は、あまり難しい事は無かった。酒場の中の人狼達は一斉に眠り始めた。
俺はレンシアと一緒に酒場の外に出た。
「ベアード、全部終わった。救護班を呼んで中に入れてくれ」
悪い夢を見ていたようだ。だがあまりイオの事を考えている暇は無かった。ご親切にもすぐエルンシア軍が銀の武器を持って攻めてきたからな。
「獅子奮迅の活躍だったようじゃないか、ファング」
オッドアイは図々しく言った。戦いの間中、寝ていたくせによく言うぜ、全く。
救護班の話だと寝ていた人狼達は、起こしても起きなかったらしい。怪我をした奴の傷にアルコールをぶっかけても、縫い合わせても起きなかったそうだ。救護班の奴らはその点ではやりたい放題できて、楽だったらしい。
エルンシア軍は勿論勝つつもりで攻めてきたのだが、やっぱりこちらが警戒体勢をとっていたのがきつかったようだ。
不意をついたつもりが迎え打ちされて、かなり志気が落ちたんだな。イザベラを始末して安心していたんだろう。