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狼とドライアード 17(イオの話)
イオの話:
本当に、駐屯地の人達に迷惑をかけるつもりは全く無かった。
それでも歌ってしまったのは、好きになった人達に非難と失望の視線を浴びせられるのに耐えられなかったから、だと思う。
歌ってしまって、逃げてしまって。それでここの人達に迷惑をかけるのをやめにしよう。私はディナン公の館で歌ったのと同じ歌を歌った。
歌い終わるとオッドアイさんも、シルバーバックさんもヒルダさんもボーッとしたので、私は逃げようとした。でもオッドアイさんは握った腕を離してくれていなかったので、力をこめて指を1本1本緩めなくてはならなかった。
早くここを離れなければ。
でも。酒場を出ようとしたその時、シルバーバックさんが戦斧でオッドアイさんにきりかかった。
それが合図だったように酒場にいた人狼達は一斉に殺し合いを始めた。
私は、呆然としてその場に立ち尽くした。あの時、勇気を出して中庭を見ていれば、この事がわかっていたに違いない。
でも、心の底でわかっていて見て見ぬふりをしたか?と、聞かれれば否定しきる自信は無かった。あの音は何だったのだろうとずっと思っていたのだから。