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狼とドライアード 16(ファングの話)
ファングの話:
俺達がエルンシア側に入ってしばらくすると、谷の奥の方にカラスが群がっていた。
「レンシア。確認してきてくれ」
レンシアは頷くと、狼に変化して谷底に駆けていった。
俺達は山の斜面の方へ待避して、待つ事にした。イスタの町から、キサの駐屯地、キサの駐屯地からエルンシアへの道は山を切り開いた一本道で、大人数の兵を動かしにくい。俺達がこの駐屯地を任されているのもその辺の理由だろう。1対1なら人間の兵士より人狼の兵士の方が強いのは当たり前だからな。
しばらく待っているとレンシアが戻ってきて変化を解いた。
「狼の姿でイザベラが死んでいました。致命傷は喉への銀の矢。体に5、6本刺さっていました」
イザベラはスウィフトの隊と一緒に行動していた。伝令に出た途中に殺されたようだ。銀の矢、か。エルンシア側は俺達を攻める気らしい。
「レンシア、駐屯地に戻って警戒態勢に入るように伝えろ」
レンシアは頷いてもう一度狼に変化し、駐屯地の方向へ駆けていった。
俺達もすぐに引き返した。スウィフトの隊の安否は気にかかるが、エルンシアからの攻撃への備えをしなければ。