狼とドライアード 13(ヒルダの話)
ヒルダの話:
ディックが片づけてくれた礼にってアップルティーを出してくれたから、私とイオは座って一息ついていた。
「よう、ヒルダ、イオ。邪魔するぜ」
オッドアイとシルバーバックがやってきた。
「構わないよ。アップルティーはあげられないけどね」
「いらん」
そう言ってオッドアイは座った。シルバーバックも黙って座った。これは、事情を聞かれるね。本当はイオが自分から話しやすい相手に話してくれるとよかったんだけどね。
「あのな、ドライアードってのは木に宿る樹精だって聞いてるが、あんたは木を離れて何でこんな所をうろついてるんだ?」
そう聞いたのはオッドアイだった。
「私の母はドライアードで、父は人間でした。私は父の親戚の所に預けられて育てられました。私は他のドライアードを知りません。木に宿る魔族と言われますが、木への宿り方も知らないのです」
私がそうだったのかい、と言ったらオッドアイに昨日お前らは何を喋っていたんだ、と言われた。余計なお世話だよ。
「母はエルンシアのドライアードだったと聞いています。そちらの縁を頼ったらどうかと言われて。それでエルンシアに」
「俺とヒルダが最初に会った時、山の上の方で何をしていんだ?」と、今度はシルバーバックが聞いた。
「私は来る途中でその、木に宿れるかどうか試しに歌ってみたんです」
ちょっとイオは顔を赤くした。
「そういう方法で木に宿れるかどうかも私にはわからないのですが」
「周りに同族がいなければ、わからなくって当たり前さ」
私が言うと、イオはほっとしたように話を続けた。
「それで、国境が封鎖されていると聞いて、山の上の方で木に宿れないかどうかもう一度試してみたんです。・・・駄目でした。私、疲れていてヒルダさんの言葉に甘えてしまって。申し訳ありません」
イオはそう言って頭を下げた。
私は、気にしなくっていいんだよ、と言った。女同士、魔族同士助けあわないとね。