狼とドライアード 9(ヒルダの話)
ヒルダの話:
イオが目を覚ましたんで、私も目が覚めてしまったよ。イオの邪魔はしたくなかったんで寝た振りをしていたけれどね。身支度をして外にでると、シルバーバックが隊舎に戻って来る所だった。
「ファングは行ったのかい?」
「行った。何でもなければいいがな」
レンシアから少人数でエルンシアに哨戒にでる事は聞いていた。私も、スウィフトが心配だね。
「ところで、イオは何か事情を話したか?」
「昨日は話が盛り上がってねえ。メインのイオの話まで聞けなかったよ」
シルバーバックはあまりわかっていない顔をしていたから、少し説明をする事にした。
「珍しい話が聞けると思ったら、それだけで盛り上がってしまってさ。自己紹介を兼ねて、まず私らがお互いの話を始めたら、それだけで話が終わってしまってね」
「・・・そうか」
「まあ、今日辺りは聞けると思うけれど。イオもお喋りの仲間に入りたそうにしていたからね」
「何かわかったら、教えてくれ。イオが家を離れてキサの駐屯地をうろうろしている理由が思いつかない」
「わかったよ。心配性だねえ、シルバーバック」
「よう、ヒルダ、シルバーバック」
オッドアイが隊舎から出てきた。
「あのイオっていう嬢ちゃんの素性はわかったのか?」
「やっぱり、あんたらは気が合ってるねえ。シルバーバックも同じ事を聞いたよ」
「変な事を言うんじゃないぜ、ヒルダ。あの嬢ちゃんの事はみんな知りたがっている」
「じゃあ、後の楽しみにとっておくんだね。まだ何も聞いていないよ」
「ヒルダが聞き出せないとなれば、あの嬢ちゃん、よっぽど後ろ暗い所があるんだな」
オッドアイはそう言って、シルバーバックも賛成するように頷いている。本当の所、私はあまりいい気はしなかった。何となく奴らの言う事が正しいような感じがしてしまってね。