第41話
合言葉はファンタジーだから。
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誤字脱字はそっと直します。
アラームが鳴り響きのそりと起き上がりスイッチを押して止める。大きな欠伸をして身体を伸ばして居るとシノダ先輩も起きて伸びをし、おはようと笑い合う。昨日脱いだあと洗浄魔法で選択しておいたスーツを着込み、アクセサリーをつけてチェックしあい、今日もバッチリ決まってることを確認し合い仮面を持って寝室を後にする。いつもの庭先には既に着替えたセバスチャンさんが居て、昨日の材料を使ったのかキラキラとしたマカロンやドライフルーツ入りのプチカップケーキが積み重なっていてよだれが溢れそうなった。
「セバスチャンさん!おはようございます、凄いですね!」
「おはよーセバスチャンさん!いつもに増してすっげぇ美味そう」
「おはようございます、マオ様、ヒデキ様」
さぁどうぞ、と椅子を引かれ有難く座り紅茶をいただく。やっぱりこの味だ、安心すると一息ついて早速お菓子をいただく。マカロンはサクサクでクリームも滑らか、ピエもしっかり出来ていてセバスチャンさんの腕前が底知れない。プチカップケーキの方も刻まれたドライフルーツのオレンジがよく生地に練り込まれていていくつでも食べられちゃいそうで、そして何より紅茶に合う。
「今日も美味しいですセバスチャンさん!」
「オレこれ好きだわー!めっちゃ美味い!」
「紅茶と合うのが凄い、また腕を上げましたねぇ」
「これ昨日買ったオレンジピールだろ?リピートするかなぁ」
「ほほほ、ありがとうございます。素材が良くて私も作っていて楽しかったですよ」
それからも食べるては止まらず、満足いくまで紅茶も楽しみセバスチャンさんがふと時計を取り出して昨日言われた集合時間を思い出す。そうだ、そのために早起きしたんだった、と急いで歯を磨いて片付けを手伝い、仮面をつけて手を取り合う。準備を確認し合い、昨日飛んだ場所へ転移する。昨日と同じテントまで歩き、胸の花を確認してもらいながら登録名を名乗り三人で城へ入る。
無事に間に合ったことに息をつきながら早速ダンスホールのある1階ではなく2階へあがり全体を確認して昨日の見張りや巡回を思い出しながら抜け穴が無いか確認していく。少ししてから貴族が順次入ってきてカーテシーを行なっていき、拍手をしながら脳内でマーキングしていき不審な人物が居ないか集中する。ざわりと少しざわついたのでどんな人物が来たかと思えば、リリアンナさんがサオリを引き連れて見事なカーテシーを披露していた。シノダ先輩に目線で合図し、下へそっと降り、王や貴族へ挨拶をし終わるタイミングを見計らい、リリアンナさんへ声をかける。
「こんにちは、リリアンナさん」
「! 黒猫殿、紅獅子殿、こんにちは」
「……大丈夫そうか、緊張してないか?」
「ああ、貴殿らが居てくれるからな。ほら、サオリ、挨拶の仕方は練習したであろう」
「! こ、こんにちは、黒猫様、紅獅子様」
「はい、こんにちは。良くマナーがなっていて素敵ですよ」
「サオリ、男前だぞ。」
「ありがとうございます!」
「それではリリアンナさん、良い一日を」
「陰ながら見てるからな、何かあればすぐ来るから安心して楽しんでいってくれ」
それじゃあ、と小さく二人だけにわかるよう手を振って壁際に立っていたセバスチャンさんの元へ戻ると、横からリオドールが声をかけてきた。
「……まさか、あの妖精王と知り合いなのか?」
「……ああ、それが何か?」
「……冗談にしては笑えないな」
「別に冗談でもなんでもねーよ。つか、持ち場離れてまで言いたいのはそんな事か?」
「なっ?! ……フン!」
なんだアイツ、と思っているとシノダ先輩が何かに反応する。漏れ出る殺意を抑えるのに必死なようでそっと手を握り、骨の軋む音に無視をして目線を追うと例の侯爵家嫡男が。名前、なんだっけ、と思いながらスっとシノダ先輩の影に隠れる。ああ、そうだ、ジェン=アルドバルだったと鑑定して思い出す。気づかれないようセバスチャンさんも空気を読んで壁になってくださり、そっと隠れながら2階へ戻り柱の影に隠れられたところで息をつく。
「……大丈夫か、マオ」
「こっちのセリフです。大丈夫ですか先輩」
「悪ぃ、ちょっとダメかも」
「しばらくここで様子見しましょう。流石にここで馬鹿なことは「黒猫は何処だ!」……しましたね。」
「……やっぱ殺してきていいかアイツ」
「ダメですよ!せめて見つからないところに行ってからにしてください!」
「……あの、黒猫様、紅獅子様、あの方は?」
「「不審者です」」
「不審者、ですか。つまみ出してきましょうか?」
「いや、一応まだ騒ぎたてだし、まだ。このまま騒ぐなら追い出そう。」
「アイツ、私のことを女性と勘違いした上しつこくナンパしてきた迷惑野郎です。未だに私のことを婚約者だとか宣っているので、セバスチャンさんも気をつけてくださいね」
「それはそれは、聞き捨てなりませんね。」
あ、私たちが行くまでもなくリンゼルにつまみ出されて行った。仕方なくシノダ先輩と1階に降りて説明に向かう。なんて面倒臭いんだ、来なければよかったのにと思いながら外に出ると何人かの護衛兵に囲まれてさらに騒ぎ立てていた。リンゼル達にわかりやすいよう仮面を外し声をかける。
「……は、黒猫の婚約者だぞ!」
「だーから、そんな話は聞いてない。騒ぐなみっともない」
「リンゼルさん、お疲れ様です」
「ああ!紅獅子殿、丁度良かった、彼が黒猫殿の婚約者だと騒いで仕方なくてな」
「迷惑かけた、ソイツはグエンツ王国だった頃からの不審者でな。」
「誰が不審者だ!僕は侯爵家の、って、お前!あの時の!」
「……リンゼルさん、こいつそのままつまみ出した方が良いっすよ。現実が見えない奴なので」
「ええい、離せ!黒猫はどこだ!この間男め!僕の婚約者は渡さないぞ!」
「……そうみたいだな、おい!お引き取り願え!」
「何をする!?離せ!」
もがきながらも無事運ばれていくジェンに見つからなくてよかったと安心しているとリンゼルがこちらを見てきた。何か用でもあるのだろうかと首を傾げるとゆっくりと口を開いた。
「……その、実の所、どうなんだ?黒猫殿は、女か?」
「全部あいつの妄想っすよ。婚約者じゃないし女でもない。オレも間男でもなんでもない」
「……そうか、すまんな、込み入ったことを聞いて」
「いや、平気です。それを言いに来たようなものだし。じゃあオレたちは中に戻るんで、引き続きよろしくお願いします。」
私も一礼してシノダ先輩と中へ戻る。まったく、問題しか起こさないなら来るんじゃねーよと呟く先輩に同意しながらセバスチャンさんの元へ駆け寄ると、隣でサオリくんとリリアンナさんが朗らかに笑っていて少し癒される。こういうのを求めていたんだと通りすがりのウェイターから飲み物をもらい話しかける
「セバスチャンさん、お待たせしました。リリアンナさん、お飲み物をどうぞ。こちらノンアルコールなので安心してください」
「おお!黒猫殿、ありがたい。どれが何やら分からないものばかりでな、戸惑っていたところじゃ」
「サオリにはこっちな、オレンジがベースのジュースだ、美味いぞ」
「ありがとうございます、紅獅子様!」
「ほほほ、私も料理に目を回していたところです。お声がけ頂き助かりました。」
「こちらこそ、話し相手になってくれて礼を言う。」
「リリアンナさん、紹介が遅れてすみません、こちら私たちの居住を管理して頂いてるセバスチャンさんです。セバスチャンさん、こちらエルフォンド国族長のリリアンナさんです。」
「これはこれは、エルフの方でしたら菜食派でしょうか。でしたらあの辺りがオススメですよ」
「! そうか、以前おにぎりを作っていただいた方か。あの時はとても助かった、重ねて礼を申し上げる」
「? 以前?」
「ああ、少し前にちょっとな、それよりサオリ、あの辺りの料理を取ってきてはくれぬか」
「かしこまりました、族長様!」
「オレも何か取って来るよ、黒猫はここで待っててくれ」
「わかりました」
「……して、先程の騒ぎはまことか?」
「まさか!全て虚言です!」
「なるほど、グエンツとは相容れないことが長かったが、まだ続きそうじゃな」
「そちらの方が国は近いのでご注意を。何かあれば笛を」
「……わかった、大事に使わせてもらう」
「族長様、お持ちしました!」
「ようやったサオリ、ありがとう」
ニコニコと笑顔で皿を差し出すサオリの頭を撫でて受け取るリリアンナさんに、平和、と呟いてしまう。私もシノダ先輩が取ってきた料理を受け取り、セバスチャンさんといただく。何個か好みのものがあったのでセバスチャンさんと再現可能かひっそり話し合いながらその場を楽しむ。その後もパーティは粛々と続き、リリアンナさん達をセバスチャンさんに任せシノダ先輩と巡回に戻ったが何も無く終わりを告げた。貴族が順番に馬車へ乗り込み帰っていくのを見守りながら、他を点検して貰っていたリンゼル達と合流して情報を交換する。問題のジェンはあの後両親に引っ張られ無理やり帰宅、その他は不審な点は何も無かったという。リリアンナさんが無事に馬車に乗り込むところを見届け、一安心したところでまた巡回に戻る。最終チェックをして広間に戻り、何も無かったことをリンゼルに報告して解散となった。さて、私達も帰るか、という所で突然後ろから手を引かれ驚く。何事かと振り返ればリオドールが真剣な顔で手を掴んでいた。何をすると仮面越しに睨んで、少しだけ殺気を漏らすと口篭りながら何かを聞いてきた。
「……そ、その、貴殿は、いや、あ、貴女?は、婚約をされて……?」
「……ああ、その事か。全部あいつの妄想だからさっさと黒猫の手を離してくれねーか?」
「……もうそう?いや、しかし、」
「いいから手ぇ離せ殴られてぇのか」
「は、何、を……いや!すまない!とんだ勘違いをした!」
途端にバッと両手を上げ降参するかのように後ずさるリオドールになんなんだと思いながらシノダ先輩の手を掴んで帰城を促す。こんな奴構うより早く帰ろう。セバスチャンさんもつまらなそうにしてるし、帰って風呂入って寝ようと念話で伝えればそうだなと返事がくるが、それでも最後までリオドールに威嚇しながら会場を後にした。本当になんなんだ。何かシノダ先輩の癪に触ったのか?と不思議に思いながら脇道へ反れて帰城する。やっぱり我が家が一番、と仮面を外し振り返って両手を伸ばす。
「ただいまです!そしておかえりなさい!セバスチャンさん、シノダ先輩!」
「! おう、ただいま、おかえり、マオ」
「ほほほ、ただいま戻りました、お帰りなさいませ、マオ様」
ギュッと抱き締めてくれる二人に満足感が溢れてきて笑顔になる。さぁお風呂入りましょ!と中へ急ぐと転けるなよ!と声がかかり、すれ違い様に早い者勝ちだと言われ笑い合いながらお風呂へ向かった。流石に風呂場では走らないが重心は前のめりで、しっかりシャワーを浴びた後恒例の湯に浸かり、しっかり温めつつストレッチをしてゆく。お風呂を上がるとセバスチャンさんがシャーベットを作ってくれていて、風呂上がりのアイス最高だなとシノダ先輩と笑い合う。シャーベットも食べ終わり、時間もそこそこいい時間だったのでもう休むことに。セバスチャンさんにおやすみなさいと告げて寝室へと向かう。ベッドにダイブしてふかふかな枕を抱き寄せ、シノダ先輩とくっついて布団を引き上げた。色々問題もあったが、パーティ自体は楽しめたので良しとする。次第に眠気に襲われ、そのまま瞼を閉じてゆく。今日もいい夢が見られそうだ。
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