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魔王様は引きこもりたい  作者: 黒駒
40/45

第40話

合言葉はファンタジーだから。


※無断転載禁止

※改変投稿禁止


誤字脱字はそっと直します。



あれから、黒猫に関わると凍らせられる、細切れにされると言う噂がルルティエ支部に広まり、ちゃんと回復薬もみんな正規の店で購入してくれていた。物騒な噂が走る中、ギルドマスターが伺うように話しかけてくること数回。ある日突然話があると執務室に通された。この時点で嫌な予感しかしなかったので、お茶を出された瞬間にお断りしますとシノダ先輩が言い放つ。


「……まだ何も言ってねーが」


「嫌な予感しかしないのでお断りします」


「……せめて話を聞いてからにしてくれねーか」


「お断りします、では」


「ちょ、待ってくれ!せめて話!聞けっておい!」


「だが断る!帰るぞマオ!」


「あーもう!黒猫、あんたからも何か言ってくれ!」


「お断りします、それじゃ、帰りましょうか」


「うし、帰るぞー」


「そういう事じゃねーって!なぁ頼むから話聞いてから帰ってくれって!黒猫の婚約者の話なんだよ!」


「えっオレのことか?」


「先輩がどうかしたんですか?」


「やっちがっ、え?お前らそういう仲?」


「ご想像にお任せします」


「あーもう!そう言うならそうするさ!でも俺は説明しなきゃなんねーの、とりあえず座れ!」


今度は大人しく座りまず否定から入る。私に婚約者など前世含めいた事などないのだが?


「……で、黒猫に婚約者なんて居ないはずだが?」


「そう自称してる奴がいるって事だよ!で、今度王城で開かれるパーティは知ってるか?ルルティエ国の祭典の」


「……ああ、即位記念のやつか。それで?」


「そこにグエンツ共和国からの来賓でとある侯爵一家が来るんだが、そこの坊ちゃんがウチの黒猫を婚約者呼ばわりしててな、心当たりがあるかの確認だ。勿論、お前らの事だからそんな話は聞いたことないで貫いてんだがしつこくてよ。なんか知らねーか?」


「…………侯爵……グエンツ……?」


「……あ、もしかしてあいつじゃないか?」


「えっ、先輩知り合い?」


「いや、まだグエンツ王国だった頃に絡まれた……ほら、金髪の」


「……あー!ブランみたいなやつ!」


「……知り合いか?」


「「不審者です」」


「不審者ぁ?」


「黒猫を女と間違えた上しつこくナンパしてきた野郎です」


「前にグエンツとルルティエの合同依頼あったじゃないですか。護衛の、ブランが派遣されたやつ。護衛という名のデートとかほざいてて、命があるだけマシな結果だったんですよ」


「……あの時のか。ちょっとまて、資料が確かここに……ああ、これだ、『アルドバル家嫡男の護衛』だな」


そんな名前だったんだ、と思いながら渡された資料を見る。『グエンツ支部からの派遣である二名脱退により一人で遂行、嫡男の性格に難あり、以後依頼を反故することを強く勧める。』……ブラン、あいつちゃんと仕事したんだ……と先輩と顔を見合わせる。綴られた紙をめくるとアルドバル家の調査評が書き連ねていた。何々、『曾祖父から伝わる侯爵家で、現当主であるジル=アルドバルの手腕は確かなもので王家からも見初められている。近々王家から婚約を元に公爵へとなる日が近いと噂されており、その教育も厳しくしているとの話だ。だが、嫡男であるジェン=アルドバルは性格に難あり。妄想が激しく猪突猛進、浅慮で間違いなく今のままでは教育も無駄で終わるだろう。グエンツ支部の黒猫に執着しており、護衛と称した不適切な依頼を権力に物を言わせたため、再教育を密かに提案、受領。詳しくは別紙にて。』……ブラン、めちゃくちゃ良い奴じゃん。見直したわ。ブランみたいなやつとか言ってごめん。昔のブランみたいなやつと訂正するね。


「……で、ジェンとかいうコイツがまた黒猫を婚約者だとほざいてると?」


「そうなんだよ。お前らからそういう報告は無かったから、ソイツが勝手に言いふらしてるだけだろうって思ってよ、けど相手が相手だし確認はしなきゃなんねーから呼んだだけだ。」


「お断りしてすみません……」


「……いや、前科あるしな。仕方ねぇよ。とにかく、違うんだな?」


「はい。寧ろ次顔見たらその首跳ね飛ばしそうです」


「オレ一回殴ってるからなぁ……次も殴るかもしれねぇ……」


「頼むから暴力で解決しようとするなよ!絡まれたら逃げるか報告しろ!」


「……絡まれる?パーティに呼ばれてるんですか、私」


「聞いてねーのか?護衛としてお前ら二人とも呼ばれてるはずだぞ。」


「聞いてないな」


「あー、どっかで情報が絡まってんのか?とにかく、前日から空けとけよ。あと正装だな、ローブは無しだ」


「……目元だけの仮面は?」


「あまり華美じゃなければ大丈夫だ。後で再確認してやるが、そのうち招待状が鳥で送られてくるはずだから無くすなよ」


はい、と声を揃えて返事をし、出されたお茶を飲みきってから退室する。ギルドマスターが最近何か聞きたそうにしてたのはこれかと思いながら帰城する。翌日、見たことない鳥が飛んできて腕に止めると国家の蝋印された封筒が2枚渡される。受け止めるとそのまま飛んでいき、昨日の件かと実験用具を片付けているシノダ先輩を呼びに行く。


「先輩、手紙が来ましたよ。多分昨日の件かと」


「お、まじか。ちょっと待ってな……おし、どれだ?」


コレですと紅獅子殿へと書かれた封筒を渡す。庭先に出るとセバスチャンさんがすかさず紅茶を用意してくれ、一息着きながら開封する。


『ギルドルルティエ支部所属Jランク黒猫殿

此度、貴殿には祝祭典の護衛隊隊長を配属する。主に来賓の護衛、見回り、法を犯す者の確保の振り分けを組み分け、当日に挑んで欲しい。会議の日時は下記にて。また服装に関しては正装が好ましく、あまり華美ではない物を持参または着用して来ること。本人確認のため招待状を別府するので紛失しないように。また、付き添い人は一人までなら可とする。


会場 王城広場

日付け ××月××日

時間 14:00~ ( 入場は13:30から )


ルルティエ国国防総省代表×××××

ルルティエ国魔法防衛省代表××××××

ルルティエ国ルルティエ学園学園長××××× 』


「ふーん……」


「先輩はどんな内容でした?私、なんか隊長に任命されたんですけど」


「オレはマオの部下その1としてマオを補佐しろってさ」


「やっぱり私がトップなのか……指示は任せました!」


「よし任された!正装はこの間のでいいだろ、仮面も大丈夫だってギルドマスターが言ってたし、アレで行こう」


「はい。……パーティに行けば、アイツが居るんですよね……嫌だなぁ」


「なるべく関わらないように配属しちゃえば良いんじゃね?」


先輩、天才!と言いながらセバスチャンさんの紅茶を頂く。そうだ、とセバスチャンさんに向かって先程思いついたことを口にする。


「セバスチャンさん、付き添いで一緒に来ませんか?」


「私が、ですか?」


「はい。一人までなら可と書いてありますし、セバスチャンさんが居れば心強いです!」


「おっ!いーな!オレは付き添いNGだからなぁ」


「本当に、宜しいのでしょうか……」


「大丈夫ですって、何かあれば守りますし!」


「セバスチャンさんならそこら辺の奴は敵わねーけどその血は貴重だからな、一緒に居れば安心だろ」


「貴重……この私が……」


「? 貴重だろ?」


「貴重ですね。唯一無二ですもん。魔の手からは私たちが守るので、たまには羽を伸ばしてください。祭典なんて滅多に参加出来ないですよ!思いっきり楽しんじゃいましょう!」


「そうそう、オレたち住所不定だからな。見回りと称して食べ歩きとかさ、セバスチャンさんともやろうぜ!」


「……ありがとうございます、是非、参加させていただきます」


セバスチャンさん泣くなよー!と言いながら、その涙は嬉し泣きなのを理解しているのでハンカチを差し出すだけでシノダ先輩も落ち着いている。きっと、私たちが誘うまで出られるはずも無いと思っていたのだろう。その資格が無いと言うほどに。何年生きているのか知らないがその長い時の中できっと人として接することを忘れてしまう何かがあったのかもしれないが、今の主は私たちだ。家族同然のセバスチャンさんに文句など言わせない。


「あ、せっかくだしセバスチャンさんの服をお揃いにしましょう!あと仮面も!」


「良いなそれ!よし、早速作るか、生地はマオが黒で俺がネイビーだから、その中間色はどうだ?」


「良いですね!仮面は何色を使いましょうか?」


「白地に黒と赤の縁どりは?」


「良いですね、スーツと併せて金も散りばめましょう!」


「あー!絶対似合う!タイピンも金に緋石な!」


「セバスチャンさんの目の色ですね!外せません!」


トントン拍子に話は進み、当日つけるアクセサリーも作ろうと言う話まで行き、ポカンと眺めていたセバスチャンさんが慌てて止めに入るが、お揃いは嫌ですか?と聞いて黙らせた。早速製作に入り、何パターンか作ってはその度に試着を強請り、日が落ちるまで着せ替え人形の如く作りまくった。コーディネートとエンチャントが完成した時には月が登り始めていて、セバスチャンさんは慌てて料理を作りますと言い残して部屋を後にしたので私たちは笑いあって片付けてからお風呂を頂いた。上がる頃にはいい香りが立ち込めていて、流石セバスチャンさんと賛辞を送る。恥ずかしそうに、でも嬉しそうにするセバスチャンさんに紅茶ではあるが軽く乾杯して、祭典の日まで静かにカウントダウンした。


そうして迎えた祭典の前日の朝、と言っても昼前だが、シノダ先輩と共に起きてスーツを着込み、アクセサリーをつけていく。スタンドミラーの前でくるくる回りシノダ先輩に変な所はないか聞いて、お互いチェックしあい仮面を持って庭先に出てセバスチャンさんを待つ。いつもとは違う装いのセバスチャンさんが紅茶を入れてくれ、絶賛する。


「やっぱりこの色で正解ですね!とても似合ってますよ!」


「差し色の金と赤がいい味出してる!」


「ありがとうございます、マオ様、ヒデキ様」


「あー……紅茶が美味しい、落ち着く」


「今日のスコーンも美味いぜ、流石セバスチャンさん」


「あまり食べすぎないでくださいよ、先輩」


「おう!セバスチャンさんと食べ歩きする分は空けとくぜ!」


「ほほ、ほほほ」


祭典の前日、当日、後日の三日間はお祭り騒ぎなのだ。出店も複数出て大通りなんかは観光客で賑わうくらいで、セバスチャンさんの味には負けるがそこでも美味しいものを食べ比べする予定で、祭りからは久しいと情報を掴んでいるのでセバスチャンさんの反応も楽しみである。あとリリアンナさんがサオリを連れて参加するようなので、後日会うのが楽しみだ。


「さて、そろそろ時間ですね。行きますか」


「おう、セバスチャンさん、離れるなよ〜」


「はい、黒猫様、紅獅子様」


「そう呼ばれると何かセバスチャンさんらしいのも考えたくなりますね」


「銀……白金……蝙蝠?」


「蝙蝠は安直では?」


「セバスチャンが良いです。今の私はセバスチャンなので」


「そっか。セバスチャンさんはセバスチャンか」


「そうですね。私たちのセバスチャンさんですものね。それじゃあ、飛びますよー」


パッと転移し、瞬く間に景色が変わり、セバスチャンさんも早速大通りに目をやる。右手を私が、左手をシノダ先輩が掴んで歩き出し、少し引っ張るように表へ出て、眩しいくらいの太陽が照らすそこは人が詰まっていた。体が踊り出しそうなリズムが何処かから流れ、ガヤガヤとした人の流れに沿って祭り独特の空気を堪能する。


「セバスチャンさん!ほら、あそこに屋台がありますよ、後で行きましょうね!」


「セバスチャンさん!あそこの雑貨屋後で行こーな、一度連れて行ってみたかったんだよ!」


「ほほ、ほほほ。はい。凄いですね、順番に行きましょう。」


辺りを見回しては感嘆符が零れ、仮面の奥で瞳を輝かせていたセバスチャンさんの手をゆっくり引いて王城広場まで進む。王門に着くと横に受付が有り、そのテントへと足を運ぶ。


「すまない、招待状はここで出せばいいか?」


「はい。こちらで受付けしております。確認のため登録名をどうぞ。」


「紅獅子だ。こっちが黒猫で、黒猫の付き添い一人だ。」


「はい、確かに。紅獅子様と黒猫様はこちらの、付き添いの方はこちらの造花を各自お付け下さい。」


手渡された造花のピンを使って胸ポケットに飾り入れ固定する。シノダ先輩は赤、私は黒、セバスチャンさんも黒だ。イメージカラー的なことなのかな?と少し不思議に思いながらちゃんと着けたことを確認してもらう。


「ありがとうございます、では、中へどうぞ」


門を通り抜け、ゆっくり閉められるのを背に前へ進む。広場はすぐ目の前で、ここにいるならある程度離れていても大丈夫だろうと少し端による。日本人、目立つの好きくない。そっとシノダ先輩の後ろにセバスチャンさんを挟んで隠れ、開演まで待つ。しばらく待っていると時間になり、屈強そうないかついおじさんが出てきて何やらスピーチを始める。多分形式的なものだろうと見つめてセバスチャンさんの様子を伺いながら上の空で聞く。5分程でやっと説明に入り、気を引き締めて集中する。


「……によって、隊長はギルドルルティエ支部Jランクの黒猫殿に一任し、補佐に同所属SSSランクの紅獅子殿、ギザニア支部Aランクのリオドール殿を任命する。各三名は後ほど集まるように。続いて……」


「……セバスチャンさん連れてっても大丈夫でしょうか?」


「いんじゃね?連れてくるなとは言ってねーし、何か言われたら少しだけ離れるとかすればいいだろ。」


「セバスチャンさん、万が一のため、少しだけ我慢してくださいね」


「私は大丈夫ですよ、黒猫様。」


「オレたちの家族に手を出すようなバカはいないと思いたいが、何があるか分からねーしな。絶対傍から離れちゃダメだぞ、セバスチャンさん」


「家族……かしこまりました、紅獅子様」


「? 家族だろ?」


「家族ですね。」


「ありがとうございます、御二方様。」


「それより、リオドールってどいつだ?」


「えーっと、あ、あの前の方にいる緑のポニーテールの人ですね」


「白い服装の?」


はい、と返事をすると近づきたくねぇと言われた。確かに白に金の装飾はちょっと目立ちすぎではと思うが、この世界の色彩に関しては無茶苦茶なので諦めることにする。シノダ先輩の髪色然り、リオドールとかいう人の髪色然り。中にはピンクゴールドの巻きツインテールの少女も居るくらいだ、仕方ない。二度見は免れないが許して欲しい。黒髪黒目国家育ちなものですの。あ、解散となったから前に行かなくては。嫌だなぁと思いながらシノダ先輩を盾にセバスチャンさんを挟んでしっかりついて行く。途端に奇異な目線が刺さるが無表情を貫き通す。知らないフリを続けていれば、リオドールが話しかけてきた。


「……貴殿が紅獅子殿かな?」


「ああ、オレが紅獅子だ、で、こっちが黒猫」


ペコりと頭を下げておくのは忘れないが、なんだその目はと言いたくなる。あと敵意も隠せてないぞと。


「……まぁいい。其方の初老の方は?」


「黒猫の連れだ。気にするな」


「なぜこの場に連れてきたのか聞いても?」


「オレたちは少し過保護で、万が一の為一人にする訳にも行かないからな。重要な話し合いなら少し下げさせるから安心してくれ」


「……フン、そうか」


なんか生意気だが今回限りの出会いだから仕方ねぇな許してやるよと上から目線で心を落ち着かせる。平常時ならキレかかっていた。命拾いしたな、と思いながら待っていると先程のいかついおじさんがこちらに歩いて来た。


「無事集まったようだな、俺はリンゼル、防衛部隊隊長を任されてる。今回は黒猫殿に従い、城内の警備に務めさせて貰う。黒猫殿は?」


ハイ、と声を出さずにスっと手を上げるとすかさずシノダ先輩が代弁してくれる。


「黒猫は彼です。人見知りが激しいので会話などは自分が代弁させていただきます」


「君は?」


「紅獅子と呼ばれております」


「君がか。噂はかねがね、それでは会議を始めたいと思う。一応、通年の警備配置の図面を用意してきたが……」


セバスチャンさんの手を引いてシノダ先輩から少し離れ、花壇の縁へと腰を下ろす。持ってきていた水筒を取りだし、セバスチャンさんと一緒に紅茶を頂く。手作りの紙コップは後片付けに燃やすため重宝しており、紅茶自体はセバスチャンさんが入れたものなので美味しくない訳が無い。リオドールとリンゼルとシノダ先輩が何やら話し合い図面に書き込んでゆくのを遠目に見ながら一息つく。これでも念話である程度状況を説明されているので聞くまでもないが、念の為聞いてますよと言うていで居なくてはダメなのでリラックスしすぎないように気をつける。


「……なら、黒猫殿はどう思いで?」


「C地点を「紅獅子殿は黙ってくれないか?」は?」


「僕は今、黒猫殿に話を聞きたいんだ。で、どう思いなのかな?」


「……C地点を強化、F地点の5人から2人引き抜いて増やしてF地点を無くしそこはB地点が管理、残り3人はD地点に移動、A地点はそのままでE地点はリオドール殿が見張れば良いかと」


「……貴殿と紅獅子殿はどう動くのかね?」


「見回りながら全体を見ます。無詠唱長距離転移が使えますし、国を渡ることも簡単に出来ますので城ひとつくらいなら余裕です」


「……そうか」


何やら不満そうだが無視だ無視。隣でシノダ先輩が静かに怒っている方が重要だ。紙コップをもうひとつ取り出し、紅茶を注いでシノダ先輩に渡す。無言で一息つく私たちをリオドールは睨んでくるが無視。小物を相手取る暇があるならさっさと街に行きたいのだ。なんでこうもプライドが高いというか性格に難ありなやつばかりなんだと愚痴りたくなるのを押えてセバスチャンさんの手をそっと握る。


「……では、黒猫殿の言う通りに配置し、明日は警護にあたる。今日は楽しんでもいいが、ハメを外しすぎないようにな」


水筒をしまい空になった紙コップを灰も残らず燃やして立ち上がる。空いた手をシノダ先輩と繋ぎさっさと後にした。リオドールは何に驚いてたか知らないが、もう関わらないだろうと思いさっさと祭りに出かけて行く。セバスチャンさんと初のお出かけを邪魔しないでいただきたい。まずはシノダ先輩オススメの雑貨屋だと少し足早に城を出て笑顔で振り返る。


「先輩オススメの雑貨屋に行きましょう!それとも露店が先がいいですか?」


「セバスチャンさんどっちがいい?」


「おや、私が決めて良いので?」


「はい!どこから回りたいですか?」


「では、雑貨屋からで。食べ歩きはその後に致しましょう」


「おし、じゃあ行くか!今日のオレたちは財布の紐が緩いから気をつけろよ〜」


「隙あらば貢ぎますからね、気をつけてくださいよセバスチャンさん」


「ほほほ、かしこまりました。それにしても祭りは何十年ぶりでしょうか、楽しみです」


「精一杯楽しんじゃいましょう!」


「そうそう、こういうのは楽しんだもん勝ちだぜ!」


嫌なことは全部忘れて全力で楽しむ。早速雑貨屋に入ると小物からお菓子作りの器具まで多岐にわたっていてとてもキラキラしていた。シノダ先輩オススメなだけはある、品揃えが完璧だ。


「これはこれは、中々良いものが揃ってらっしゃいますね」


「だろぉ?セバスチャンさんの作る焼き菓子も美味いが、他のも食べてみたくなってな!」


「こっちのは型ですよ!このタイプは剥がすのが楽ですし、色んな形があります!」


「この泡立て器は中にボールが入ってるから微調整が効いてオススメの一品だぜ!」


「どれも目移りしてしまいますね」


和気あいあいとはしゃぎながらあれこれカゴに入れていく。器具だけではなく奥の方に材料も少しあったのでドライフルーツの量り売りを数種類購入し、ハイカカオのチョコチップやアラザン、チップシュガーもカゴへ放り込む。レジではお姉さんもにっこにこでありがとうございますと元気よく挨拶された。店を出てから荷物は全て縮小魔法で小さくし、内ポケットにしまい込む。次は屋台だと手を引いて小走りになる。目に付いた虹色のチョコバナナ風のデザートや出来たての焼きそばモドキなど、デザートや主食問わずにあちこち食べ歩く。いつもより口元が緩く大声で笑いながら楽しむ。珍しいことにセバスチャンさんもいつもの上品な笑い方ではなく思いっきり笑ってくれて一層テンションが上がる。

日が傾くまでめいいっぱい楽しみ、夜は酒だ!と近くの酒場に行って飲み比べをしていく。セバスチャンさんは割と酒豪だった。味はやはりセバスチャンさんの方がダントツに美味しいので私は頼んだビールをちまちま飲み、シノダ先輩は豪快にハイボールを飲んで、セバスチャンさんはグラスを次々開けていったのでどこまで飲めるのか気になりボトルを頼む。あちこちから口笛を吹かれセバスチャンさんもにっこにこ。満足いくまで飲み、食べ、気分よく店を後にする。そのまま帰城して三人で水を多めに飲んだあと少しだけお風呂に入った。アルコールが入った日は危ないので真似しないように。さっぱり汗も流し、あとは寝るだけとセバスチャンさんに手を振って寝室へと向かう。めんどくさいので魔術で着替えポスりとベッドに横になる。もそもそと入ってきたシノダ先輩にくっついて、念の為アラームを設定してすぐ夢の中へと旅だった。



今日は色んなセバスチャンさんを見れたな。こんな楽しい日が続けばいい。



ここまでお読み頂きありがとうございます

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