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魔王様は引きこもりたい  作者: 黒駒
4/45

第4話

合言葉はファンタジーだから。


※無断転載禁止

※改変投稿禁止


誤字脱字はそっと直します。












ざわざわ……ヒソヒソ……


そんな擬音がひしめき合う教室の最前列にシノダ先輩と並んで座る。が、座ったがいいが教材とか何も無いけど良いのか、とソワついてしまいつい手遊びを始めてしまう。お、落ち着かない。


「……あー、そっか。はいこれ、ペンと紙、足りなくなったら言ってね」


シノダ様!ありがとうございます!神よ!と憧れの目線で伝える。多分伝わってる。と思いたい。ごめんね口下手で!来世は頑張るから!

わざわざノートを破り分けてくれるなんて神の所業かな?ありがたや。ペンは万年筆みたいで、インクもこれね、と私とシノダ先輩の間に置かれた。感涙で震えそうになってたら聞き慣れた学校のチャイムが鳴り、先生が入ってきた。号令とかはなく、出席簿に名前を書くよう名簿を回すことが最初にすることらしく、回してる間にホームルームのような、簡単に説明会をし出した。


「……昨日は水と氷の魔法分別について座学をやったが、今日は別のことをする。水、または氷魔法の実践訓練だ。剣技志望者は魔剣の柄を、魔術志望者は各自魔導書やタクトを忘れずに中庭に集合しなさい。15分後に始めます。遅れないように、以上。質問がなければ移動を開始しなさい」


マオ=スズキ、と小さく書いて後ろの人に渡したら早速と言わんばかりにシノダ先輩が立ち上がったので急いで紙を折りたたみペンと一緒にポケットへ入れて着いていく。先輩は剣士志望者らしく柄を一つ取って行った。私は……適正が分からなかったので素手でついて行く事にした。


「あれ、マオは良いのか?」


コクリと頷けばそっか!と眩しい笑顔で返される。その距離感が良き。もう一生ついて行きたい、そう思いながら中庭への行き方も知らないので本当についていくが。

だいたい2〜3人に固まって話をしてる中、やはり目立ってしまった私はシノダ先輩に隠れるようにくっつきながら先生の指導をよく聞いた。先輩は苦笑しながらも許してくれたので問題は無い。


「……遅れた者は居ないようだな。それじゃあ始める。各々魔力を込めこのデコイに攻撃しなさい。繰り返し言うが水、または氷魔法のみの実践訓練だ。危険がないように一人ずつ行うこと。さて、最初は誰だ?」


「はい!ナオヤ=アライ行きます!」


「よし、やってみろ。」


「てぇやっ!」


「ふん、まあまあだな。集中力が足りん!もう一度!」


「はいっ!でりゃあ!」


「よし、及第点だ。次!」


・・・

・・


「……次!」


「はーっい!ヒデキ=シノダ、行きまーす!」


お、やっと先輩の番か。先輩は一呼吸着いて顔つきが変わる。デコイを睨みつけ、柄からはパキパキと音がする。次の瞬間、氷の刃が飛び出たと思ったら、同時にデコイに飛びかかり、うっすらとだが切り傷をつける。


「素晴らしい!だが集中に少し時間がかかりすぎだ!復習をするように!次!」


「……は、はい!マオ=スズキ、行きます」


ここで乗り遅れたら最後まで残ってしまう。それだけは避けねばと普段滅多に出さない声量で頑張ってみた。が、ここでふと問題が。皆、各自で魔導書なり杖なり剣なりで攻撃していたが、私は手ぶら。適正の物がわからなかったから何とかなれ精神で来てしまったのでやるしかないが……。お、怒られないことを祈ろう。初の授業だから!大目に見てね先生!と念じておく。

たしか、前世でこういう時は想像力が大事だとかが設定上書かれることが多かった。想像力、想像力。さっきのシノダ先輩みたく、氷の刃を作り出して、ぶつける。手を上にあげ集中して、魔力を練り上げるイメージで。


「アイスメテオ!」


幾数もの尖った氷の塊を作りデコイに思いっきりぶつけまくる。しばらくして土煙が収まり、デコイを見ると粉々になっていた。粉々に。

え?威力強すぎた?と恐る恐る先生を見ると先生も先輩もポカンとしている。


「……ぁ、あの……せ、せんせ……?」


「……ハッ!素晴らしい!!威力、スピード、精密な操作、どれをとっても素晴らしい!マオ=スズキ、合格!」


「……へ?」


「やったなマオ!合格ってのはクラスアップに必要な制度だ!5回合格したらテスト無しでクラスアップだ!」


そういうの早く言って?!めっちゃ嬉しそうに頭撫でとる場合ではないぞ?!クラスメイト(?)全員放心してるよ?!あっ、いき吹き返した。おおお!とかうるさいけどとりあえず先輩の後ろに隠れる!ここが安置と学んだからね!

先生が残りの生徒のためにデコイの予備を持ってくる間、やはりと言うべきか囲まれた。質問攻めに合うが無心で先輩の裾を掴み無言を貫いた。コミュ障、陽キャ、無理。まぁまぁといなすシノダ先輩には心の中で五体没地で感謝した。足向けて寝れん。

その後、デコイを新しく持ってきた先生の一声により解散され、実践訓練もつつがなく終わった。破壊した私以外だとシノダ先輩ともう一人くらいしか傷をつけることが出来なかった。そこで再び聞き慣れたチャイムが響き、授業が終わった。次はなんだろうと思いながらシノダ先輩について行った私は後ろからの視線を無視した事をこの後後悔することになる。


次は座学で、政治関係の授業だった。要るのか、コレ?と思わなくもないが、授業でやるということは頭に入れておくべきことなんだろうと必死に食らいつく。特に法律関係。日本とは似てるところもあるがそうじゃない事の方が多いくらいだから、先輩に貰った紙にびっしりと書き写しておく。特に先生が言ってた本の題名を走り書きして、後で図書室にでも行って借りてこなければ。場所知らないけど。卒業後に大変な目にあうのはごめんだからね。

授業後、誰かに声をかけられる前に即座に立ち上がり先輩を廊下に引っ張って行き、図書室まで案内をしてもらう。ごめんよシノダ先輩、ありがとうシノダ先輩。無事に図書室まで着くと丁寧に本の貸出方のポスターがありそれを何回か読み直してしっかり頭に叩き込む。ちなみに文字は引きこもり週間の間にマスターした。元文系を舐めるなよという意地でやった。


先生が言ってた本2冊と関連のある本を2冊、計4冊を借りて一度部屋まで戻り、机に置いてシノダ先輩の所へ戻る。次はなんだろうと思っていたら昼食の時間らしく、食堂に行こうぜ!と輝かしい笑顔で誘われたので秒で頷いた。頷いた後ですぐ後悔した。私めっちゃ目立つじゃん……。まぁ先輩がいいならいいか、と少しだけ投げやりに着いていく。場所知らないからね!ちゃんと脳内マッピングはしてるが今日部屋から初めて出たばかりだから!明日からは多分大丈夫だから!多分!図書室と自室は覚えたけどね!


お昼ご飯は基本ブッフェ形式だった。いつもは先輩がバランスよく盛り付けて部屋まで持ってきてくれるから知らなかった。今日は自分で!と思ったけど、どれにしたらいいのかわからなくて10分程彷徨いてたら見兼ねた先輩がひょいひょいとあれこれ盛り付けてくれた。もう先輩なしじゃ生きてけないかも……。

空いてるスペースに並んで座り、小さく手を合わせていただきますと呟いてから箸でご飯を摘んでく。今日もご飯が美味しい。けど前世の因果か、あまり量は食べられない。先輩がもっと食えるようになれ!倒れるぞ!と食育までしてくれているのでいつも腹9部目で完食となる。地味に増やされてることにちゃんと気づいてるからな。


食後は時間が余ったので次の授業まで読書タイム。こっちに来て初めての単独行動だ。甘えまくっている先輩にはすごく申し訳ないが読書は一人でしたいのだ。わがままですまん的なことを言ったら気にするな、時間になったら呼びに行くな!とサンシャインスマイルで返された。もう崇めようかな。


いそいそと部屋へ戻る途中、廊下で突然3人の男に囲まれた。え?何いじめか?と瞬時に警戒すると真ん中の偉そうにしてる男が突っかかってきた。


「よぉノワール様」


「……返事くらい出来ねぇのかよ。それとも怖くて声が出ないんですか〜?」


「ほらほらー、泣いてみなよ黒猫ちゃーん」


ゲラゲラと下品に笑う3人に無言無表情を貫き、ただひたすら耐える。大丈夫、私なら耐えれる。こういうのは相手にしたら思うつぼだから相手にしないのが一番、そう思って耐えていると遠くに先生が見えた。今だ。迷ってる暇はない。


「……っ先生!!先程の授業で分からないとこが!!」


「なっ?!」


先生も勘づいて急ぎ足でこちらへ向かってくる。3人は慌ててどこかへ走り去っていき、一安心したところで先生に声をかけられる。


「……大丈夫ですか?」


「はぃ、なん、とか」


「次、また同じようなことがあったら言いなさい。生徒を守るのが私達教師の務めです。今回はとても良き判断でしたよ。」


「はい……ありがとうございます」


「いえ、それでは。」


つかつかと戻っていく先生を見送り、また絡まれないよう小走りで自室に向かう。その後は何事もなく部屋へたどり着き、ゆっくり息を吐きながらベッドに腰かける。怖かったぁと小さく呟いて、机の上から一冊手に取る。さぁ、気分転換!と読み始める。題名は「ルルティエ国法律百科」。法律の成り立ちからどんな刑罰かまでの辞書のようなもの。しっかりと脳に焼き付けるように読み、複数形の場合や再犯の場合など細かくチェックしていく。貸出の書物なので書き込みが出来ないがその分しっかりと読みふけっていた。

そして、何より誰にも邪魔されず、引きこもって本に集中ができるという環境に無意識下でも溜まっていたストレスが解消されるのが自分でもわかった。やっぱり読書最高!となりながら途中でちゃんと呼びに来てくれたシノダ先輩に慌てて着いていく。また紙を一枚貰い、教室へと向かう。



ああ、早く授業を終えて本の世界へ引きこもりたい!




ここまでお読み頂きありがとうございます

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