第37話
合言葉はファンタジーだから。
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誤字脱字はそっと直します。
「それでは、授業を始める前に名前を呼ばれた者は立ちなさい。レグノア=マルテーゼ……」
点呼を取るようにシノダ先輩が順番に呼びあげていく。午前の授業をしっかりと受けていた者たちだが、本人たちは不思議そうに恐る恐る返事をしながら立ち上がる。
「……以上7名はこれから実技訓練をする。着いてきなさい。また、名前を呼ばれなかった者たちはテストを受けてもらう。では、各自持ち物を持って中庭に移動しなさい」
「!? ちょ、なんで俺たちはテストなんですか?!」
「オレたちがそう判断したからだ。」
「はぁ?!納得いかないっすよ!俺は何もしてないのに!」
「何もしていないからこそテストだと言っている。実技の者たちはちゃんと真面目に授業を受けて居たので問題ないと判断したが、君たちはそれすらしなかった、或いは出来ないと見た。だからテストで赤点を取り続けた場合クラスダウンも考慮されているのでしっかり受けること。以上だ、行動に移しなさい」
何も言い返せない生徒をよそに軽く手を叩いて促す。教室をでるシノダ先輩に慌てて準備をして後を追う7名の生徒たちを見送り、残った生徒に向き合う。
「……それでは、テストを配ります。……時間は30分、名前の書き忘れなどに注意をしてください。……それでは、始め!」
嫌々だが、皆ちゃんとテストを始める人に流されて文句を言った生徒もちゃんと受け始めた。カンニングなどを注意しながら見つめ30分が経過し、答案用紙を回収する。答え合わせも同時に行い、すぐに返却する。Aクラスとあって平均は70点越えだった。
「……はい、それでは、皆さんの平均は72.4点と高得点ではありますが、応用が引っかかっていたので応用をしっかりと学び直して頂きます。教科書の62ページを開いてください」
まずは応用の公式から学び直す。基礎は出来ているので応用さえ覚えてしまえば実技でも実力以上を発揮できるだろう。私の声が響く中、皆が今度はちゃんと真面目に授業を聞いて板書もしているので落第者は今の所いなさそうだ。鐘が鳴り響くと同時に纏め終わり、実技の子達が帰ってきたので授業を終える。
「……居残り組も平気そうだな、よし、では授業を終える。各自復習を忘れずにな。」
シノダ先輩が締めくくり、私も一礼して外へ出て職員室までついて行く。交代で何人かの先生と入れ替わり、私たちも報告書を作りながら作戦会議とする。
(そっちは問題なかったか?)
(はい、良い子ばかりでしたね。先輩はどうでしたか?)
(こっちも問題なし、意欲があるだけ吸収も早かったな)
(では、問題は聖女ですね)
(ああ、つか、本当に聖女だったのか?)
(職業は一応。ですが、能力が低すぎなのにレベルは高いのが異様でしたね。)
(なんだそりゃ。どうしたらそんな歪なもんになるんだ?)
(禁忌を犯したのかと。)
(……禁忌、不審死、レベル……ああ、美容系のやつか?若さとか美しさとかの)
(流石先輩、正解です。歳があれで32歳でしたからね、すぐ分かりました)
(うげ、年上かよ。そんであんなぶりっ子してんのか?引くわー)
(多分、イケメンにチヤホヤされたいとかそういうやつでしょう)
(うわー。苦手なタイプじゃねーか。関わりたくねぇ)
(仮面付けてきて正解でしたね。魅了も弾いてくれましたし)
(うわ、付けてきて良かった!)
「……よし、そっちはどうだ?」
「準備万端です」
「なら行くか」
残ってる先生たちに一礼してから午後の巡回へと向かう。午前のは西棟から時計回りだったが今度は東棟から反時計回りに見て回る。ついでに午前中では見きれなかった屋上や体育館なども見て周り、問題がないか逐一チェックしていく。最後に教諭棟を軽く見て周り、先生方の安全も確かめ、何も無いことを確認してそっと防御壁を強めて頷き合う。これで何かをするのは生徒たちの寮以外無いと確信した。早ければ今夜にでも動くだろう。職員室に戻る頃には放課後となり、生徒も各々散らばって過ごしている。職員室には何故か学園長も居て、何やら会議のようにざわめきたっていた。
「? どうかしたんですか?学園長」
「紅獅子、黒猫、実は……君らにBクラスの授業も持ち掛けて欲しくてな……」
「Bクラスですか……Aクラスだけの話ではなかったんですか?」
「……それが、Bクラス担当の先生が意識不明でな」
「それを先に仰ってください。すぐに診ましょう。医務室ですか?保健室ですか?」
「あ、ああ。すまない、医務室だ。それと……」
「まだ何か?」
「……ハルナという女子生徒が関わって居るらしく、監視を頼みたい……のだが……」
「……まずは先生の診察、次に監視。Bクラスの担当は診察が終わり次第で決めさせてください。黒猫、行こう」
一礼だけしてすぐ奥の医務室へと向かう。なんで学園長はあんなに報告が下手なのだろうかとイラつきながらドアを開ける。一番奥に眠っているような先生のそばに寄り、シノダ先輩が一歩下がって周りを警戒してくれた。これで私は安全安心に治療に専念できる。まずは寝ている先生に軽く触れて原因を探ってみるが、病気では無いことは解ったので、外的要因だと判断し、記憶を漁ってみる。なるほど、ハルナが元のBクラスに戻れるよう進言する催眠をかけられたのか、それに抗うために精神を閉ざして昏倒、ということがわかった。まずは先生の意識を和らげ呪詛返しをする。これでハルナに何かしらの不調が訪れるだろうし、先生も次第に目を覚ますでしょう。触診を終えてシノダ先輩に合図を送り厳戒態勢を解除してもらい、先生に点滴を軽く打って部屋を後にする。奥から出てきた私たちに一斉に視線が来て驚くが、シノダ先輩が前に一歩出て視線を途絶えさせてくれてひと安心する。
「……先生は次第に目を覚ますでしょう。原因はハルナという女子生徒でした。」
「なっ、そ、それで本当に大丈夫なのかね?!」
「はい。黒猫が呪詛返しをしていたので何らかの不調は訪れるでしょうが、自業自得というものです」
「しかし、なぜ彼女が」
「……どうやらBクラスに戻りたかったようですよ」
「……こう言ってはなんですが、それだけで?」
「そうです。たまたま、先生の方が精神を守る術を持っていたからよかったものの、ほかの先生だったら精神汚染されていたでしょう。学園長、厳罰処分を希望します」
「う、うぬ。師となるものを害するは生徒でも許せぬ。厳罰処分を許可する。して、内容は」
「学園追放を希望します」
途端にざわつく職員室に、私も黙ってられないとそっとシノダ先輩の手を後ろ手に取って前を見すえる。頑張れ私。
「……今回、臨時教師を受け入れたのには要請以外にもうひとつ、情報が入ったからです。内容は、臨時教師となったBランクの元クラスメイト達が不審死を遂げているというもの。短い間でしたが、共にすごした彼らがなぜと、徹底的に調べ今回の要請に答えたのです。失礼ながら彼女を鑑定させてもらいましたが、彼女は若さや美しさを手に入れるため禁忌を犯しています。」
「なんと、禁忌だと?!」
「そんなバカな、いやしかし、なら納得がいく……」
「彼らは犠牲だったのですね……」
だが、方法は?と言う話題になり、色々な禁忌や禁術をあげるがすぐに当てはまるものは出てこなかった。
「……恐らくですが、魅了をしかけ言う通りの人形にし、贄にすることで美貌を手に入れているのかと。」
シノダ先輩のその一言で、まさに絶句、という状態になってしまった。こちらの禁術或いは禁忌というものは基本自己責任で、たまに周りに影響が出ても複数で行った場合のみに限られる。つまり、これは向こう(転生前)の方法である為、そもそもの発想がない。故に絶句。そんな非道なことがあるのかと。
「……なぜ、」
「朝一番に会った時、魅了の術をかけられました。勿論弾いてますが、向こう(転生前)にいた時は生贄が必須なことが9割、という具合でしたので」
「……そんな、危険思考が」
「もちろん、ただの噂程度で、実際に魔術や呪いが無い世界でこれなのです。彼女がそういう世界から来たのなら、真っ先に思いつくのは贄になります」
またざわめきたつ空気に、学園長がゆっくりとその口を開いた。
「……静まれ。例の少女を尋問する。黒猫、紅獅子、頼まれてくれるか?」
「オレはやめときます。手が出そうなので」
「私も辞退します。命を落とす前提の拷問ならまだしも尋問はちょっと……」
「なら、教師陣で数人、希望者を募ろう。」
「念の為希望者には護衛術を重ねさせて頂きます。あとは自白剤を用意することもおすすめします。」
出られない代わりにやれることは何でもしましょう、と声をかけると、なら私がと数名手を挙げてくれて少しだけ安心する。あと他に、昏睡中の先生に一人付いてて欲しいことも述べ、そちらもすんなり決まったところで学園長は今夜にでも行うと言い残してどこかへ去っていった。私は残った先生たちの中で先程尋問に挙手した先生たちに護衛術を重ねる。ほかの先生たちにも念の為軽くかけさせてもらい、各自動き出した。私たちは一度寮に戻ると伝えそのまま職員室後にする。見えないように握りしめた手は、少し軋む音がしていた。
寮室に戻り、盗聴などのチェックをしてからやっと息をつく。
「……まさか、生贄が必要な呪いがあるとは思わなかったって感じだな」
「こちらではそうでしょうね。魔法が存在してますし、贄など無くても代用品がありますもの」
「オレたちからしたら真っ先に思いつくけどなー。だから召喚なんてやめときゃいいのに」
「今回を期にリスクを考えてから行うべきでしょうね。名前と年齢性別だけで呪う方法もあるくらいなのに」
「呪詛と降霊術は子供でも知ってるくらい有名だよなー。まぁ、成功例とかほとんど知らねーけどよ」
「ネットから生まれたのもありますしね。コトリバコとか八尺様とか」
「あ、それネットからなんだ。ハコは中国からだと思ってた」
「中国からは蠱毒ですよ。ハコは日本生まれです」
へぇ、と私が淹れた紅茶を飲んでくれるシノダ先輩と一息着いていたらドアをノックされた。シノダ先輩と顔を見合わせて、すぐに私は壁に張り付きシノダ先輩が扉を開ける死角に私が控えながら誰が来たのかとチェックする。が、声を聞いただけでわかってしまったので意味がなかったかなと思い直す。
「先生ぇ〜!会いたかったぁ!酷いんですぅ〜、今日、突然クラスダウンとか言われてぇ」
「……そうか、それで?」
「それでぇ、勉強もわからなくってぇ。先生なら教えてくれるかなぁって思ってぇ」
「……仕方ないな、少しだけだぞ。」
「やったぁ!やっぱり先生は頼りになりますねぇ!」
キンキンとうるさい声を堪えながら、ステルス機能の着いたマントを羽織り、姿を消すと先輩が彼女を中に入れる。お一人だったんですかぁ!なんてわざとらしく騒いでるのに適当に返しながらそっと紅茶をこちらに寄越して来るので私の分だけ音もなく片付ける。これで完全に一人でいた事となり、机に教材を開いてどこが分からないんだ?と丁寧に聞きに入る。一応勉強を盾に入ったかららしいが胸を寄せあげくっつくかのように見せつけてきたり本人は魅了が効いてるとでも思ってるのか、変な行動ばかり取る。
「……この場合は熱したBをCに足したものを……」
「なるほどぉ」
こっそり移動してシノダ先輩が飲んでいたカップに睡眠薬を混ぜ、シノダ先輩の肩をそっと2回叩く。それに気づいた先輩が紅茶を入れ直す振りをしてハルナに渡す。ハルナはありがとうございますぅ!と喜んで口にした。その後も何とか引き止めつつぐっすり眠るまで見守った。熟睡したのを確認してからマントを剥ぎ、彼女に近づき仕方ないので姫抱きにする。予想以上に重くて「重っ!」と声に出してしまいシノダ先輩に笑われた。少しだけ震えながら部屋を出て職員室へと向かう。何とか職員室まで運び終わるとシノダ先輩が扉を開けてくれ、これから会議だからか全員が揃ってるところに椅子をひとつ持ってきてくれそこに彼女を置いて先生方に向き直る。
「……オレたちの部屋に来たから睡眠薬で眠らせた。何か動きがあると困るからな」
「……な、るほど。いえ、いいんです。ありがとうございます」
「……学園長も時期に来るでしょう。お二人とも、お疲れ様でした」
「今のうちに縛ってしまいましょうか。起きてからは何かと不便でしょう」
「その前に自白剤を打っておこう。あと誰か禁術の札を」
テキパキと動き出す先生方に私はセバスチャンさんに教えて貰った疲労回復と精神安定のブレンドカモミールティーを振る舞う。先生方、いつもお疲れ様です。そうしているうちに学園長も現れて、現状を伝えてから会議は中止としそのまま隣の備品室で尋問となった。私たちは職員室で待機、他の先生もお茶でまったりとしている。
「おや、爽やかな花の香りがしますね。とても美味しいです。」
「なるほど、確かにいい香りです。ブレンドティーにしては色もいいし、苦味も殆どない」
「そう言って頂けると嬉しいです。このお茶にはリラックス効果があるんですよ。」
「へぇ、そういったものは苦いというイメージでしたが、これなら生徒でも飲めますね」
「本当に。これも黒猫くんが特許を?」
「いえ、それは黒猫とオレの故郷の味をモデルにしたものの簡易版なんで、人に出すのは初めてなんですよ。だから感想とかあったらバンバンください」
「本当かい?すごく飲みやすくて美味しいよ。商品化したら是非買わせていただくね」
「来賓用にも常備したいですね。ミルクとも相性が良さそうだし、これは売れますよ」
そっとお茶請け用の甘さ控えめクッキーもお出ししてちょっとしたお茶会みたいな雰囲気でワイワイと楽しむ。様々な苦労話からちょっとした愚痴や思い出話まで。学生の頃は考えられなかったが、先生も色々苦労しているんだなぁ。そんなふうに過ごしているとガラリと扉が開き、学園長が入ってきた。一瞬で仕事モードに切り替えられる先生たちは流石で、私たちも少しだけ背筋を伸ばしキリッとしておく。
「……。自白が取れた。彼女を追放処分とする。また、記憶の改竄も行い能力も一部のみに制限をかけた」
「……学園長、今言うのもなんですが、オレたちの故郷では名前、年齢、性別だけで呪う方法が山ほどあります。あと無差別でも。今回を機に召喚時に気をつけてはいかがでしょうか」
「……紅獅子、助言感謝する。召喚時、気をつけるとしよう。引き続きAクラスのみ臨時教師を頼みたいのだが、大丈夫か?」
「大丈夫です。何人かクラスダウンするかもしれませんが、その時は必ず事前に報告や相談をします」
「うむ。それと黒猫、学園をより良くするには何か案は無いかね?」
「……そうですね、合同授業やレクリエーションを増やすべきかと」
「れく……?」
「レクリエーション。仕事、勉学などの肉体的、精神的疲労を癒し、元気を回復するために休養をとったり娯楽を行ったりすることを指します。例えば全生徒対教師で鬼ごっことか、読書の時間とか地域交流とか。」
「……なるほど。そういう時間も大切ではあるな。では、次の月から隔週に一度レクリエーションを入れよう。そして月に一度は全校生徒及び教師も含めたレクリエーションを行う、隔週ではクラス毎に、各月は会議で内容を決めるように。」
「ありがとうございます、学園長」
それから先生達ともよく話し合い、2週間に1度の隔週、金曜日の最後にレクリエーションを1枠必ず入るよう時間割を改めて、早速来月は何をするかで盛り上がり、私たちが居るからこそ、箒球(箒に乗ったドッヂボールのようなスポーツ)や魔法薬実験など様々な例が挙げられて、しれっと何も言わずに調理実習と書き足しておいた。先輩は読書と書いていたし誰も気付かないふりをしていたのでこっちも黙ったままだ。結局決まらずに明日の会議で決める事になり、今日はこの話は一旦終わりとなりいつもやっている会議へと話題を移し各方面から報告を上げていく。とは言っても、私たちはハルナ関連以外は特に特筆したことはしていないので、聞く側に徹していた。あ、でも強いて言えば教師の寮も防御壁を強化したな。でもまぁ言わなくてもいいか、気づく人は気づくだろうし、強化しておいて不備は無いだろう。会議も問題なく終わり、各自寮へ戻ったり巡回に出かけたり、仕事の続きをするものもいれば学園長のようにフラッと消えるものも居たが、私たちも部屋へと戻ることにし廊下を歩いていると何人かの生徒が声をかけてきたりした。
「あのっ、紅獅子様、黒猫様、自分、勉強がなかなか身につかなくて……おすすめの勉強法とかありませんか?!」
(槍使い、レベル8。棒術の本で強化)
「そうだな、君は槍使いだから、棒術の本なんかは勉強になると思うぞ。図書室にあるから読んでみなって黒猫が。あとは無理しすぎないこと。勉強にも息抜きは必要だぜ」
「あのあの、私は、どうしたら」
(魔物使い、レベル4。使役術を覚えてマイペースに)
「君は魔物使いだから使役術を覚えることからだな。周りのことを気にせず、君のペースでゆっくり覚えれば必ず身になるって黒猫が。動物は好きか?……なら良かったな!」
「ねぇねぇオレは?!職業とかわかんねーんだけど!」
(雷使い、レベル6。雨天時以外はファイターがいいでしょう。)
「珍しいな!雷使いだぞ、使い方に気をつけろよ?大きすぎる力は時に毒だからな。体育の先生が居るだろ?あの人を頼りな。平常時はファイターとして戦うのがオススメだって黒猫が。」
「……あの、どうして何も言わない黒猫様の事がわかるんですか?」
「ん?黒猫はちょっと人見知りなだけでな、テレパシー送ってくれてるから普通に会話してるぞ」
「……テレパシー……どうやったら覚えれますか」
「うーんと強くなったら?かな。覚える人と覚えられない人が居るから人それぞれって感じかなぁ」
「……うーんと……か。」
(内密に。その子教師になりますし覚えられません)
(了解)
「さ、他に聞きたいことある奴いねーか?オレたち帰っちまうぞ〜!」
ちらほら視線をやりつつ寮へと歩きながら受け答えしていく。和気あいあいとした帰り道になりAクラスの寮室まで順番に回って送っていって、最後にSクラスの寮室へと入り、やっと一息ついてベッドにダイブする。
「あーーー疲れましたぁ!シノダ先輩!癒してください!」
「おっ、珍しいな、よし、撫でてやろう。よーしよしよし」
「……癒し……ふわぁ」
「お手軽だな……眠いなら先にシャワー浴びてこいよ」
「うう、しゃわー……」
めんどくさいがシノダ先輩の言うことだ、頑張れ私。のそのそと起き上がり少しふらつきながらもシャワーを浴びに行く。お風呂入りたい……一瞬帰るか、いやダメだ、仕方ない。シャワーで我慢だ。呻きながら何とかシャワーを浴び終わり、浴室から出てくると先輩が紅茶を入れてくれてた。暖かいそれをゆっくり味わいながらベッドに腰掛ける。入れ違いでシャワーを浴びに行く先輩を見送り明日の予定を書き出しながらお茶をちびちび飲んでいると、飲み終わる頃に先輩が上がってきて紙を覗き込んでペンを取り出し半分に線を引いて先輩の分を書き足し始めた。書き終わる頃には明日の流れが決まって、カップをソーサー毎テーブルに置いてベッドに倒れ込む。先輩も寝るのか横になって布団を引き上げてくれたのでいつも通り腕の中へと収まる。
明日からは平凡な学園生活を送れますように。
ここまでお読み頂きありがとうございます