第22話
合言葉はファンタジーだから。
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誤字脱字はそっと直します。
最近になってようやく戦火も落ち着いてきて、私は遥か西の国エルフォンド国へと手紙を出した。内容はシノダ先輩と共に無事であること、ギルドのルルティエ支部に正式に登録したが、以前のグエンツ王国改めグエンツ共和国と同様不定期派遣扱いなので、また手が欲しい時は遠慮なく同封した笛を吹いて欲しいこと。最後にサインをして魔術で作りだした鳥型の魔物の足に括りつけて窓から飛ばす。小さくなる鳥を見つめていると後ろから声がかかる。
「リリアンナへか?」
「はい、そろそろ頃合かと思いまして。笛を同封しました」
「……今度、顔見せに行くか」
「それもいいですね。さて、準備はどうですか?」
「あとは心の準備だけだ」
なら問題ないですね、と笑いかける。シノダ先輩は本日ギルドにて、SSSランク昇格試験が待っていた。
「じゃあ、行きましょうか」
私たちは腕を組んでルルティエ国へと飛んだ。
ルルティエ国ギルドルルティエ支部では、ざわめきが拡がっていた。何せ、SSSランクが史上初の2人在籍になるかもしれないからだ。
「聞いたか?今日はSSSランク昇格試験だってよ」
「どんなことすんのかわかんねーけどやべぇことなのは分かる」
「合格すれば史上初だってよ」
「どんな奴が受けるんだ?」
「最近、巷で噂の『紅獅子』じゃねーかって話だ」
「あの大剣使いか!噂じゃ海を割ったって話しよ」
「遠目に見た事あるが、生き物として段違いってのはわかったぞ」
「現SSSランクの『黒猫』としか組まねーって奴か。やっぱ強ぇー奴は組むやつからして違ぇんだな」
「噂のご本人到着だぜ」
キィ、と軋んだ扉を押して入ってきたのはローブを着込んだ二人組。ヒソヒソと止まらない噂話に片方だけが奥へと案内され、残った片方はそのまま壁際に身を寄せてたっていた。案内されなかったということはこっちが『黒猫』か、と誰かが言う。20分しないうちに奥から相方が戻ってきて朗らかに声をかける。
「お待たせ〜」
「いえ」
「じゃあ、行くか」
「ですね」
誰もが耳を済ませて聞いていた会話はそれだけ。その後は視線に目もくれずさっさと立ち去った。ぽかんとしたギルド内では、奥からヨロヨロと出てきたギルドマスターに受付嬢が慌てて水を頼む。併設している食事処から慌てて給仕された水をギルドマスターは飲み干し、カウンターに腰掛ける。
「ま、マスター!あいつ、『紅獅子』はどうなったんすか?!」
「あかししぃ?ああ、さっきのか……文句なしの合格だ」
その一言でギルドはわっと湧き上がった。史上初、SSSランク二人所属である。しかも互いが互いしか組まない食わせ物の。
私たちはその日英雄として歴史に名を刻んだ。
「まさか、英雄として本当に名を刻むなんて、学生の頃は思いませんでしたね」
「そりゃあ、憧れてはいたが実際できるとは誰も思ってなかったと思うぜ?なんせ、一部を除いて、普通は禁術を犯さないとなれないだなんて、間違ってると思わねーか?」
「教えには反していると思います。それだけSSSランクは規格外という事でしょう。さ、おじさんの所へ行ってセバスチャンさんにご馳走作ってもらいましょ、『紅獅子』さん」
「了解、『黒猫』さん」
・・・
・・
・
ルルティエ国から西の諸国ララニエル国にて、いつもの平穏なやり取りは続いていた。
「おじさーん!お魚くださいな!」
「あいよぉ!いつもあんがとよ!で、今日はなんの気分だ?焼きか?生か?」
「いい事あってお祝いなんだ、両方くれ!」
「なんでぇ!とうとう彼女でも出来たか?」
「残念ながら違いますね、昇格祝いです」
「残念ながら違え。昇格祝いだ」
「かーっ!ほんっとに勿体ねぇな坊主共!その歳で仕事ばっかじゃねーか、ひとつくらい浮いた話でも持ってこい!ほら、オススメの品詰め合わせだ、持ってけ!」
「ありがとうございます!」
「今夜はどんなご馳走になるかな?今から楽しみだ!」
「おじさんのところの魚は国が変わっても美味しいですからね」
「へんっ!腕が違ぇのよ、腕が!そこら辺の漁師にゃ負けねーぞ!」
「はい、これお代。いつもあんがとなおっさん!健康でいろよ!」
「呑んだくれちゃダメですからね〜!」
「……だぁから、金額が多いっつーの!坊主共!」
いつもの元気な怒鳴り声に笑いながら走り去る。途中道をはずれてそのまま城へ飛ぶ。
日はまだ高いので、魚をセバスチャンさんに預けてアスティオ国へ行く。最近は専ら洞窟巡りだ。Sランク以上の洞窟を漁りに漁って、ボスだけを倒さず知らぬ振りで素材だけを頂いてく。禁止事項には引っかからないこの方法で、私たちはレベル上げに勤しんだ。
魔物をキリよく倒しきって辺りを見渡し残党が居ないか確認してから声をかけられる。
「……マオ、俺今いくつ?」
「357ですね」
「だいぶ上がったな。マオは?」
「616です」
「まだ差が縮まんねぇな……てか、マオの上がり方やばくね?やっぱオレも回復薬とか作った方がいいのかな〜?」
「希少性があればあるほどレベルも上がりますからね。先輩もやりますか?」
「うーん、できっかなぁ。学生の頃は爆発してたしなぁ」
「縫い物とかは器用にしてるのに、薬学はダメって何が問題なんでしょうね?一緒にやる時はそんなミスしないのに……」
「なんでだろうなぁ。あ、レア素材見っけ」
「お、やりましたね。じゃあこの辺で帰りますか。」
そうすっか、と腕を組んで城へ帰る。集めた素材を貨物室代わりの客室に詰め込んで、お風呂へ向かう。一日の疲れと汚れを落として湯に浸かる。さっぱりとした気分に体が温まった。
「あ〜〜〜。生き返るぅ」
「気持ちぃですね〜」
「長湯できるってのは日本人に生まれてよかったって常々思うわ」
「お風呂上がりのご飯も最高ですしね」
「そういや、セバスチャンさんが果実酒を作ったって言ってたろ、マオでも飲めそうなやつ」
「言ってましたねぇ。どうもアルコールが苦手で、度数調整に力を入れてくれてたやつですね」
「さっき、食事と一緒に出すってよ」
「やった、楽しみだったんですよ!セバスチャンさんの作ったものにハズレは無いですからね、期待値大です!」
「わかるわぁ〜。何なら、一度飲んだら他じゃ飲めなくなるからなぁ」
「他所も他所で美味しいところはあるんですが。やっぱり安定感?安心感?実家に帰ってきたようなものがありますよね。」
「あるある。めっちゃある。やっぱコレだな!ってすっげー思う!特に日本料理とか!出汁とか飲むと余計、な!」
同感でしかない。日本で料理修行を詰んだと言われてもだろうなしか思わないほど日本料理が美味いのだ。勿論他の料理も言わずもがなで美味しいが、良く強請るためか夕飯は日本食が多い。
しっかりと湯に浸かり、体をくまなく温めてお風呂をあがる。ここからはひたすらに楽しい時間だ。美味しい料理に美味しいお酒、気分も最高潮。やはりと言うべきか、セバスチャンさんのお酒はとても飲みやすく、他では飲めなくなったのはご愛嬌。とても美味しい葡萄酒でした。お酒に合うよう料理にも工夫がされており、何度もお酒も料理もおかわりをした。酔いつぶれ寸前で食事も終えて、しっかり歯を磨いたあと水分をとって、二人してベッドへダイブ。言わずもがなで熟睡だった。
翌日の昼過ぎまでしっかりと眠りその後は日差しのいい庭先でアフタヌーンティー。すっかりアルコールも抜け、ぽかぽか陽気に少しだけ眠気を誘われてまったりとした時間を楽しんだ。
ここまでお読み頂きありがとうございます
567ではなくただの喉風邪でした。一安心です。




