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魔王様は引きこもりたい  作者: 黒駒
21/45

第21話

合言葉はファンタジーだから。


※無断転載禁止

※改変投稿禁止


誤字脱字はそっと直します。







どんどんグエンツ王国の情勢が悪くなるのを横目に、やはり戦争の前にルルティエ国に弁明はしておこう、となったのは、セバスチャンさんの助言が元だ。

久しぶりに感じるルルティエ国特有の結界を国境際に感じ後にする。目指すはとりあえずギルド支部である。一番話を聞いてくれそう、という理由だ。なんて言ったって本籍がある場所なのだから。登録以来のギルド支部に足を運ぶと気づかれないようそっと受付嬢に話しかける。


「すまない、アポは取ってないんだが緊急でギルドマスターに話がある」


「どう言った内容でしょうか」


「グエンツ王国との戦争の火種について、とだけ」


「……かしこまりました。少々お待ち下さい」


ローブでしっかりと顔を隠しているからか、少し不審に思われたようだが、戦争の火種について、と言った途端真面目に聞いてくれた。多分情報と引き換えに亡命かなにかかと思われたのだろう。少しして、お会いになるそうです、と奥へ案内してくれた。少しだけ豪華な扉を開かれ、机越しに険しい顔で書類を書き留めていたギルドマスターに一礼すると、受付嬢は戻って行った。それを確認してからギルドマスターから口を開いた。


「……戦争の火種について、と聞いたが、何用だ?」


「……その前に、挨拶させていただきます。」


フードを取り、顔を見せることで敵意はないことを示す。驚きに声を失いながら次の言葉を待つギルドマスターに苦笑しながら伝える。


「……Sランクのヒデキ=シノダです。こっちは『黒猫』のマオ=スズキ。今回はグエンツ王国から逃げてまいりました。」


「……逃げて、とは」


「オレは勇者を自称したことは一切ありません。勿論他人からもそういった事は一切言われたことがないことも断言致します。そして、オレもマオも派遣要員でグエンツ支部に登録していたので、本籍はこちらにある、ということを伝えに参りました。」


「……確かに、本籍登録はされていたが……」


「今回の戦争の原因はグエンツ国王の独断です。自分らは一切関係ありません。それどころか、問答無用で突然徴収されそうな所を逃げておりました。自分らはルルティエ国と戦うことと、グエンツ王国と戦うこと、両方を放棄します」


「……なるほど、ありがたい情報だ。貴殿らはこの後は?」


「引き続き、戦争が終わるまでは身を隠させていただきます。」


「……わかった。上へは私が報告しよう。貴重な情報提供に感謝する」


「こちらこそ、理解頂きありがとうございます」


再び一礼して、部屋を後にする。フード被り、来た道を真っ直ぐ戻りホールへ出る。ギルドマスターの部屋には念の為監視カメラのようなものが存在する。今回の映像音声を証拠に上へ掛け合ってくれるだろう。受付嬢にも一礼して、用は済んだのでギルドから出て裏手に周り尾行がないことを確認してから城へ飛ぶ。出迎えてくれたセバスチャンさんに、フードを外しながら笑顔で駆け寄る。


「セバスチャンさん!ありがとうございました、無事に終わりましたよ!」


「それはそれは、良かったです。私は、これからもギルドに身を置くとして動くにはやはりこのままがよろしいのでは、と愚考した迄ですが。」


「それがありがたかったんだよ、オレたちじゃ考えられなかったからなぁ。ギルドマスターも納得してくれたし、これでルルティエ側は大丈夫だろ」


問題があるとすれば、グエンツ王国側だろう。弁明に向かえば捕まること間違いなしなのでルルティエ国側だけに伝えたのだ。

いつものティーテーブルに着くと用意された紅茶に口にして一安心する。それから、これからの事を考えた。


「……さて、引き篭ることは確定だが、なんかしてないと落ち着かねーよな。なにかする事あるか?マオ」


「そうですね……。あ、アスティオ国のべルーラ洞窟!」


「アスティオ国の……ああ、火竜が封印されてるっつーとこか。確かにグエンツともルルティエとも離れてるからちょうどいいな」


「あそこなら要請もSランク以上なので鉢合わせもないでしょうし、レアアイテム収集とレベル上げにはもってこいですよ」


「確かに、いい考えだな!」


それじゃあ準備して向かうか、と紅茶を飲み干す。そばに居たセバスチャンさんに、夕飯までには帰りますと告げて、ササッと持ち物確認をしてそのまま出かける用意をする。地図を取りだしアスティオ国のべルーラ洞窟を位置確認して腕を組み、マオの転移で飛ぶことに。


「行ってらっしゃいませ、どうぞお気をつけて」


「はい、行ってきます」


「おう、何かあったらすぐ逃げてくるからな!」


ヒュン、と一瞬で飛び、瞬きの間に現在地が変わる。久しぶりの外の気配に胸の向上が止まらない。目の前の大きな古めかしい扉を開けて、洞窟へと足を踏み入れた。あかりも何も無いので扉がしまった途端に暗くなり、照明魔術で明かりを灯す。思っていたより広い洞窟に感嘆が漏れる。

所々に散りばめられた魔鉱石や貴重な薬草の群生地にもなっている様で2人して目を輝かせた。それだけ人が足を踏み入れない証拠でもある。


「うわぁ!貴重なもんいっぱいだな!」


「えぇ!ここなら狩り放題ですよ!全部持ち帰りましょう!」


「いーのか?!オレ、一度魔鉱石で剣作ってみたかったんだよ!」


「ここなら自然発生するでしょう!誰にもバレないうちに採っちゃいましょ!」


バレなきゃセーフ。学生時代と変わらないのだ。二人は片っ端から採取していき、途中で大型の魔物に出会っても目を輝かせたまま狩り続けた。魔物討伐は久しぶりなので肩慣らしも含め素材をどんどん集めて行った。


「今ならオレ、火竜も倒せそう!」


「まぁレベル的には大丈夫でしょう、多分ラスボス的な感じだと思うので、そのうち倒すとしてまずは素材確保です!」


「あー!これ魔絋塊じゃね?!マオ、鑑定!」


「確かに、魔絋塊です!これで剣作りましょ!剣!」


「やったー!魔絋塊の剣なんて教科書レベルだぞ?!実物が手に入るなんて、やべぇな!」


「やばいですね!ここ最高じゃないですか!」


火竜さまさまですね!と言葉を続けながら採取と討伐をし続けた。時間が空き次第小物から加工にチャレンジしては失敗を繰り返して成功したものの中でもより良いものを選んで、また素材集めに討伐をと繰り返し、外の日が落ちる頃に設定していたアラームが鳴り響くまでここぞとばかりに縮小魔法をかけていた荷物に満足しながら帰城する。出迎えてくれたセバスチャンさんに大興奮でアレが凄かったコレが凄かったと報告しながら中へと入る。いつもの如く荷物を置いて真っ先にお風呂へ。お互い汗を流してようやく一息つく。やはりお風呂は偉大だ。


「いや〜、狩り尽くしましたね」


「狩り尽くしたなぁ。」


「明日はもう少し奥から始めますか。」


「そうだなぁ、魔絋塊の剣、どうする?」


「先輩に合わせて、贅沢に大剣にしましょ」


「いいな、頑丈さも軽さも一味違うんだろうな」


「余ったら防具にするのもいいですね」


「マオ、天才か?」


「フフフ、魔王ですから、相応の武器防具は揃えておきたいです」


「やべー。魔王軍入ってほんとよかったわ。あ、レベルどうなった?」


「えーと、おお!先輩、182に上がってます!」


「まじか!今日だけで30近く上がったのか?!マオ、マオは?!300超えたか?!」


「私は……328!やりましたね!」


「頑張りましたなぁ」


「頑張りましたねぇ」


身も心もホクホクしながら満足気にお風呂をあがり、セバスチャンさんの夕飯を頂く前に。大量の素材が手に入ったので、いつものお礼にと、魔絋塊で作った銀時計をプレゼントした。シンプルなデザインに、針は魔鉱石で作り角度によって色が変わる仕組み。セバスチャンさんは大変喜んでくれた。


「ありがとうございます、この身に余るほどの光栄でございます。我が生涯の宝と致します」


「いいえ!いつものお礼なんですから」


「そりゃ、大切にしてくれるのは有難いけど、沢山使ってくれる方が嬉しいよな!」


「他にも、ネクタイピンにデザインが同じ燕尾ジャケット、スラックス、靴に手袋もありますよ!」


「服や手袋はオレが縫ったんだぜ、今より丈夫で軽い素材が手に入ってすぐやったんだ。あしらいはマオだ!」


「なんと、申し上げたら良いのか、大変嬉しく思います」


いつも世話になってるし、これからもよろしく!と声を揃えて一式を手渡す。セバスチャンさんは涙目で受け取り何度もお礼を言ってくれた。

日頃の恩返しができて私たちも満足だ。しっかり食事を摂ったあとベッドで横になりながら明日からのことを思いながら少し話し合う。


「それにしても、喜んでくれてよかったなぁ」


「ええ、この調子なら武器などもプレゼントできるでしょうし、何がいいですかねぇ」


「やっぱナイフとか?」


「レイピアもいいと思うんですがね、前のは折れてしまいましたから」


「あー、確かに前の手合わせで折れてからは有り合わせの武器使ってるもんなぁ」


「じゃあレイピアとナイフで、ナイフは量産してみましょう」


「いいな!あの漫画みたくトレイとかで戦うセバスチャンさん見たいな!」


「さすがに銀食器のナイフはダメでしょう。用途が違います、怒らないだろうけど困らせてはいけませんよ」


「あ、じゃあ十得ナイフみたいに折りたたみにしたらどうだ?」


「良いですね!それなら持ち運びも楽ですし」


決まりだな!と笑いあって今日はこの辺で、と寝る体勢に入る。翌日も朝から出かけて夕方に帰り、またセバスチャンさんにプレゼントをした。連日のプレゼントにとうとう泣き出したセバスチャンさんにしてやったり、と笑いあった。

それからは連日洞窟通いを続けて、ほとんどの素材を持ち帰り、火竜が封じられているという最奥手前まで狩り尽くした後、今度は城に引き篭もり前から言っていた大剣作りに励み、片手剣、双剣、短剣、仕込み刀に防具まで着手した。お互い全身フル装備になってから再び手合わせを重ねる生活を満喫している。

素材を集める途中で火竜の討伐はしない事に決めておいたのだ。さすがにギルドの依頼書に載っていることを無断でするのは、とギリギリで思い留まり、それ以外は魔物も狩り尽くしたので世論を確認しつつ気ままに過ごしていた。



そして、宣言から実に4ヶ月。とうとう戦争が始まった。



「……始まりましたね」


「……始まったなぁ」


平和しか知らない時の国の出としては、戦争は少し遠い話に聞こえるが、今、起こっていることなのだと再確認した。

ルルティエ国はブランを筆頭にBランク以上の少数精鋭が一万弱。対してグエンツ王国は雑踏とも言える烏合の衆が9000強。数も質も、余程のことがない限りグエンツ王国の負けは確定と思える。


思っていた通りわずか3日で、グエンツ王国の敗北という形で終戦となった。


その二週間後国王の極刑が王都で行われたと報告が上がり、少ししてグエンツ王国は共和国へと移行した。


そこから更に2ヶ月の時間を置いて、ようやく私たちは動いた。まずはルルティエ国に足を運び、ギルドマスターに挨拶をする。今度はちゃんとアポイントは取ってから行った。無傷の私たちに息をついて、無事で何より、と言葉を頂いたあと、正式にルルティエ支部のギルドメンバーとして働くことに。ただ、以前同様不定期でクエストを受けることを条件にしつつ、会合を終えた。

そのあとは待ちに待ったララニエル国の来訪。予め集めておいた情報を元に漁師の元へと足を向けた。


「おじさーん!お魚あります?」


「あぁ?魚ならそこに並んでるの、で、ぼ、坊主共!」


「久しぶりおっさん!元気だったか?!」


「元気も何も、なんともねぇよ!それより、坊主共は?元気そうだな、戦争は大丈夫だったのか?!」


「ああ、安心してください。私たち避難していたので参加してないんですよ」


「なんだぁ、俺の早とちりか、この前宮仕えのとある魔術師が極刑になったって聞いてよ、坊主共のことかと思っちまって……ああ、そうか、避難していたなら問題ねぇな、よかった」


「おっさんも元気そうでなにより。それより、子供が産まれたって聞いたぞ?」


「なんでぇ、どこで聞いたんだか知らねぇが、その通りだ。可愛い男の子だよ。」


「そりゃあよかった!これ、御祝儀な!」


「またこんなに!けど、俺達が国境越えられたのも、坊主共に助けられたようなものだ。あんな大金、なかったら今頃戦争に巻き込まれてたかもしれねぇ。これは有難く頂くぜ」


「おじさん達の無事の知らせが、唯一の救いでしたからお互い様です。」


「そうそう、そうだ、魚もおすすめのやつくれよ!さすがにナナカガイはねーけど、それ以外も美味そうだしな!」


「ちゃんとカゴも持ってきましたよ!」


「へっ、嬉しいことばかりだな!おし、魚のことなら任せな!こっちは採れたてで生でもうめぇし、こっちは煮付けにすると段違いだ!」


「やったぁ!久しぶりの海鮮づくしにする予定だからじゃんじゃんカゴに入れてくれ!」


「ちゃんとメモ取ってますから、おすすめの食べ方もありがたいです!」


「おうよ!たくさん食って、大きくなれよ!あ、金はちゃんと正規の値段でなら受けるからな!」


「大丈夫ですよ!正規の値段にお気持ちを添えるだけです」


「まぁた金遣い荒いんだから!ちゃんと他にも使えよ!」


「安心してください、高給取りなので!」


どちらともなく笑い合い、ポンポンと魚をカゴに入れその都度何にすると美味い、ここに気をつけろ、と話を聞いてはメモに書いてく。カゴの半分くらいで止めとき、他はお客さんが来るだろうからと遠慮した。最後に今日一番に採れた大きい魚を譲ってもらい帰路に着く。またしばらく通うことにしながらセバスチャンさんにメモと一緒にカゴを渡して夕食と一緒に保存食も作ってもらう。無くなりそうになったらまた来いよ!と笑うおじさんの不器用な笑顔を思い出しながらシノダ先輩と湯に入る。今夜は久しぶりの海鮮づくし。いい夢も見られそうだと再び笑いあった。









ここまでお読み頂きありがとうございます。

病気のためしばらくお休み致します、次回は8月入ってからになると思います。

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