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魔王様は引きこもりたい  作者: 黒駒
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第2話

合言葉はファンタジーだから。


※無断転載禁止

※改変投稿禁止


誤字脱字はそっと直します。












てな事で、魔王ライフ、初めました。

とりあえず服は着た。クローゼットにあった制服と下着(男性用)だが。大丈夫かなコレ、使っていいんだよなコレ?

それは置いといて一旦落ち着こう。そうしよう。

百歩譲って異世界転生ファンタジーで男になったのは許そう。まだ許せる。うん。認めたくはないけどな。そうじゃなくて。

職業:魔王ってなに???え??遠回しに死ねと???嘘だろ???私が何したって言うんだよ。強制的に異世界転生して???魔王ブッコロの魔法ファンタジーで???肝心の魔王がwatasi???

え、お断りしたい。何この地獄。クソゲーじゃねぇか。


乾いた半笑いしか出てこねぇよ。


もうヤダお布団に引き篭る。私の味方はお布団くんだけだ!なんて思いながらベッドでゴロゴロしてたら突然のノック音。

ガチャりと難なく空いたドアに視線を廻らせれば、赤髪短髪の同世代くらいの男が居た。


「おっ、起きたか!よっす、オレはヒデキ=シノダ!あんた名は?」


「……マオ、スズキ」


「おお〜!同じ日本生まれっぽいな!これからよろしくな!マオ!」


明るく話しかけてくるシノダ君とやらは、笑顔で続けた。曰く、召喚から間もなく魔法で周りを火の海にしかけた天才と見られる魔術師の私を見に来たのだと。見てもなんもないぞ、と真顔で黙り続ける私に気にもかけずその瞳を輝かせた。


「マオはすっげーよな!オレなんて魔法とか全然ダメで仕組みとかもサッパリなのに、無詠唱でブワッてさ!それに見た目も黒髪黒目で、日本人って感じだし良いよなぁ。オレはこっちに呼ばれてからもう3年居るけど、黒髪黒目は見た事無いくらいだし、改めて見るとやっぱ良いよな!なんか落ち着くわ!」


おっと、シノダ君はシノダ先輩だったようだ。その後もあれが凄いここがいいオレはこうだと聞いてもいないのにニコニコ話す。終始無言を貫く私に違和感とか覚えないのかな、この人ある意味すごいな。と遠い目になりつつ、人との会話ってどうやるんだっけ、と思いながら時間がすぎてく。

ようやく気づいたのか、慌てて腕時計を確認して教室に行こうぜ!と誘ってくれる。だがしかし私は教室なんて知らないし行きたくない。シノダ先輩もやっと空気を読んでくれたのか、「もしかして、行きたくないのか?」と声を抑えて伺ってきた。

コクリと小さく頷くと、そっかぁ。と一言。


「じゃあ、オレが先生達にマオはまだ体調不良って言っとくから、ゆっくり寝てな。昼飯の時間になったらまた来るから、じゃ!」


優しいじゃないかシノダ先輩!!ていうかまだってなんぞ。まだって。もしかして私、あれから意識飛ばしてたりしたのかな。寝てたしな、私。全裸で。まぁいいか、全裸で寝てたことは一先ず忘れよう。

再び布団に包まるようにもそもそと動き、安心できそうな体勢で一息つく。

考えたくはないが考えねば、私のこれからについてを。


うんうん唸り悩んで無い頭をフルに使って絞り出した答えがコレ。

とにかく、魔王である事は隠そう。だった。

シノダ先輩曰く魔術師として召喚されたらしいからそれで行こうと思う。本当は元の世界に帰る方法を探すとか色々考えてみたけど、今の私じゃ何も出来そうにない。そのうち探してる人とかに会えるかも、と自身を勇気づけて無理やり気分を上げてみる。そうしないと本当にやってられない。なんくるないさー。

その後はそのまま安眠して、やっと気が抜けた感じがした。


カチャカチャと何かがぶつかり合う音に目を覚ますと、今朝のシノダ先輩が部屋にいた。焦点がなかなか合わず、あれ?と思っているとズキズキと鈍い痛みが頭によぎる。痛みに小さく唸るとシノダ先輩がこっちを見て慌てたように頭を抑えられる。ひんやりとした感触に、ゆっくりそのまま寝かしつけられた。


「マオ、まだ起きるなよ。熱があるんだ、きっと気が抜けて安心したからだろうな。大丈夫、さっきドクターが注射してくれたからすぐ良くなる。食欲はあるか?」


フルりと小さく横に振るとそうか、と何かを机に置いた。湯気がたっている事からスープか何かだろうと当たりをつけているとシノダ先輩は優しく微笑んだ。


「ゆっくり休め」


そう言う姿が母と重なり少し泣きそうになる。母も私が風邪を拗らせたりすると仕事を休んで必ず付き添ってくれた。グレープ味のゼリーと、熱冷ましと、風邪薬。暖かい母と同じ愛情のようなものを見て、やはり帰りたいと思う気持ちが一層強くなる。


「……先輩、」


「お、オレの事か?どうした?」


「家に、帰りたいです……先輩は?」


「……そうだな、帰れるなら、いや、どうかな。オレ、元の世界では死んでるし」


「フフっ。私もです」


「へっ?そうなのか?!あっ、今の声は大きかったな、すまん」


変なとこ似てんな、と笑い合えることが何かくすぐったくて、しばらく静かに笑い合った。友達って、こんな感じなのかな。そうゆっくりと瞼が落ちながら思った。





先輩がいるなら、部屋に引きこもりたい。






ここまでお読み頂きありがとうございます。

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