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魔王様は引きこもりたい  作者: 黒駒
14/45

第14話

合言葉はファンタジーだから。


※無断転載禁止

※改変投稿禁止


誤字脱字はそっと直します。









最近どこかで見たような、こういうのをデジャビュというのだろうか。ふと、そんなことを思いつく。目の前の金髪を眺めながらしばらく唸るように考える。……ダメだ、思い出せない。どこかで見たような気はしてるんだがな。


「……言う訳で、一緒にどうかな?お嬢さん」


「私は男ですが」


「えっ」


「それじゃ、失礼します」


ぺこりと頭を下げてその場を後にする。うーん、どこかで見たような気がしてはいるんだがなぁ。なんだったかなぁ。あ、シノダ先輩。


「先輩!お待たせしました。さ、行きましょう!」


「……うん、良いんだけど、そいつ、誰?」


すっと指を指す方向は真後ろ。え?と振り返って見れば先程の金髪。えっ、誰だろ。首を傾げるが心当たりはない。


「……不審者?」


「「えっ」」


あっ、声が重なった。




私は今、何を見せられているのだろう。



「警備隊さーん!!こっちですー!!」


「やめろっ!僕は不審者じゃない!侯爵家の跡取りなんだぞ!」


「警備隊さーん!!」


警備隊も仲介に入った方がいいのか迷ってオロオロとしている。隣の上司っぽい人はこれ以上の騒ぎになるなら仲介するか、という雰囲気なのでこのまま騒ぎ続ければ手っ取り早いだろう。不審者は御遠慮頂いております。


「ちょ、いい加減にしろ!僕はお嬢さんをお茶に誘っただけだぞ!」


「警備隊さーん!!オラ仕事しろ税金泥棒!」


「ハイハイ君たち落ち着いて、さっきからどうしたの?」


「警備隊さん、こいつ不審者です」


「だからっ!僕は侯爵家の跡取りで!お嬢さんをお茶に誘っただけだ!」


「のくせに断られて後をつけまわすのが上流階級のやり方ですか?」


「なるほど、とにかく一旦落ち着いてください、御二方」


どうどう、と二人を物理的に少し離してどちらからも話を聞くようだ。喉が渇いたな、どこかでお茶でも欲しいところだ。


「先輩、終わりました?喉乾いたんですけど」


「おう、マオ。もう少しで終わるから待っててくれ」


「終わらすな!大体、お茶がしたいのなら僕に着いてくるべきだろう!」


「お前の命をこの場で終わらてもいいんだぞ?」


「落ち着いて!ください!」



なんなんだ。一体何を見せられてるんだ。と思っていたら飛び火が。



「えー、お嬢さん、すみませんがあなたからもお話が伺えると良いのですが、少しいいですか?」


「いや、私男なんですが」


「え、それは、失礼致しました。それで、彼とはお知り合いで?」


彼と指さされたのは金髪の方。いや全く知らん。いや、もしかしたら記憶のどこかにいるのかも……?深く考えてみてもどっかで見たような気はするけど思い出せない。


「…………いえ、記憶にないですね」


「ほら見ろ僕が……って、え?」


「記憶にないです」


「で、では、こちらの男性とは」


「学生時代からの先輩です。寮では同じ部屋で、今も同棲しています」


「なるほど、ありがとうございました」


さっさと終わんないかな、って思ってたらあの金髪を連れてどこかへ消えてった。よかった、これでシノダ先輩とお茶が出来る。


「……あの金髪、前言ってたヤツじゃないか?」


「え?何の話ですか?」


「ほら、前にナンパされたって言ってたろ。ブランみたいな金髪に〜って。アイツじゃないか?」


「……………………あー!そういやそんなこともありましたね!すっかり忘れてました」


「本当に思い出せてる?アイツじゃないの?」


「そこは覚えてません。すみません」


このっ!て言いながら軽くどつかれる。が、覚えてないものは仕方ない。それよりお茶しましょ!とウキウキ気分でカフェを探す。軽食も食べれると尚良、と自然に先輩と腕を組んで歩き出す。「マオがいいんだったらいいけど、やっぱり一発入れときゃ良かったか?」と何やら少し物騒な事が聴こえたが気にしない。しないったらしない。

良さげな古民家カフェ的なのを見つけ、席に着くと同時にお冷が運ばれてくる。それをスルーしながらドリンクメニューを開き、各々飲み物を頼む。今日は珍しくシノダ先輩も紅茶だ。いつもはコーヒーなのにどうしたんだろうと思いながらお冷で口を潤す。

運ばれてきた紅茶に一口つけると先輩は無言でガムシロを入れ、私の分もそっと差し出すと、それも全部入れた。マドラーをカラカラと鳴らし静かに飲むアイスティーはそんなに口に合わなかったのか、と思いながらも私は好きだけどな、とも思っていた。

静かにゆっくりと流れる音楽に耳を寄せながら時の流れを感じてると、騒音が。余程慌てて入ってきたのだろう、乱雑な客だな、と視線をあげると金髪が目に入る。あれ、デジャビュ。


「ほら!やはりまた巡り会えた!僕達は運命の赤い糸で結ばれて「今から殴るから歯ぁ食いしばれ」ガフっ?!」


「先輩?!初対面の人に何を?!」


「いや数分前にあったぞ」


「え?記憶にないです」


「記憶障害か?」


「……………………あ!さっきの不審者!」


「そうだ。さっきの不審者だ。」


なんだそっか、さっきの不審者か。デジャビュの元がわかってスッキリした。あれ、そういえばなんでここにコイツが?


「ガラス越しにマオを見つけたんだろ、どーせ」


「きぃみみひゃいなやあんじん!かのぞにふしゃわしくぁい!」


「なんて?」


「『君みたいな野蛮人、彼女に相応しくない』だそうだ。」


「私、男ですが」


「こいつの中では女なんだろ。もう行こうぜ」


「そうですね。店員さん、お会計を」


何やら喚き続ける男を無視してお会計に進む。少し多めに渡して迷惑代です、とお釣りも受け取らずに店を後にする。それでもまだ追いかけてこようとする金髪に、少々苛立って先輩の腕をとる。いつものやつだ。一瞬アイコンタクトをしてブランの時見たく転移で逃げる。屋根の上からキョロキョロと慌てる男みて、つい先輩に身を寄せた。


「……私ってそんなに女に見えます?」


「見えねぇな。マオはマオだろ。」


「ですよね」



髪、切ろうかなと少しだけ思った。









ここまでお読み頂きありがとうございます

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