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悪戯神の協力者

お待たせいたしました。

あらすじ:作楽がキレて、黒幕(ロキ)が落ちてきました。

「安藤、誰、この人?」


 恋歌が目を回しているロキを見て、恐る恐ると尋ねた。


「え、ロキだけど?」

「はぁ?!」

「ロキ、この人が?!」


 恋歌が素っ頓狂な声を上げ、千夜は驚きを隠さずにロキを食い入るように見た。


 黒髪の、見惚れるような美しい顔立ちの男。

 それがロキという、巨人族でアース神族の容姿だ。

 だが、その性格は気まぐれで悪戯好きで、ねじ曲がっているとでも言うべきか、非常に困った神族である。


 ラグナロクの予言が出てから、神々があの手この手でラグナロクを遅らせるか、回避するべく動いていたのだが、ロキは悉く予言の当たる方へと行動していた。

 そも、ラグナロクはロキが原因で起きる予定だったようなもので、ニースももう少しおとなしくしていてほしい、と強く思っていたほどである。

 何せニースが生まれる以前から大暴れしているのだ。先輩ヴァルキリーたちが、「巨人に脅迫されていたとはいえど、ロキ様のせいでイズン様がさらわれた時は大変だった」と昔話を聞かせてくれたものである。


 昔、どうしてロキがそんなにラグナロクへ傾くように動いているのだろうかと疑問に思い、ロキの親友トールの妻シヴと会うことがあり、彼女に聞いてみたところ、本人しかわからない、と答えられてしまった。


 しかし、サクラによってラグナロクが破壊された後、行動を監視されているはずの彼が、どうしてここにいるのか。


「それも起こせばわかる」


 サクラは笑っているが、目が全くにこりともしていない。

 これから起きる拷問まがいの尋問を予想しながら、ニースは止めようとは思わなかった。

 さて、サクラがロキに手をかけようとした時、


「避けろっ!」


 突然、彼は声を上げながらニースの腕を掴み、後方へ跳んだ。


 直後、先ほどまで二人がいた場所に、一人の青年が居座っていた。

 まだ若い。十代半ばから後半に見える青年は、倒れているロキを手早く担ぐと、その場で大きく跳躍。

 そのまま、以前にサクラが飛び降りた建物の屋上に消えてしまった。


「今のは……!」

「後だニース!」


 サクラの注意喚起と、接近する敵意に気が付いたのは同時だった。

 振り返ると、巨大な包丁を持った、二十代前後の青年が、風の如き速さで近づいてきていた。


「よっ!」


 新たな乱入者が軽い掛け声と共に、包丁の刃の位置を変え、峰打ちをしてきた。

 サクラはそれを危なげなく避けた上で、リースもちゃんと守るように移動してみせる。


「やるねぇ」


 青年が片眉を上げて言うと、その体は空気に溶けるようにして消えた。


「……逃げられたか」


 ボーガンを構えていた恋歌は、周囲を見渡し、他に敵影がないことを確かめると、手を降ろした。


「今の人たちは一体……?」

「わからないけど、確かなことは、ロキに協力者がいるってことだな」


 サクラはそう言って、踵を返した。


「追わないの?」

「残念なことに、ロキの反応が消えた。無理やり探してもいいんだけど、藪蛇になったら嫌だし」


 慎重な言葉がサクラから聞けるとは思っていなかったニースは、あまりの衝撃に勢いよく振りかえった。


「おいサクラ、どうしたんだ」

「何が?」

「お前ならこういう場合、闇雲に突っ込んで行って、罠があっても無視してロキ様を縛り上げるだろう?」

「ニース落ち着いて。俺の事をどういう風に見てるんだ?」

「ムスッペルヘイムとニヴルヘイムへ着の身着のままで単独で向かい、強大な力を持つ巨人や魔物どもを一ひねりにし、ロキ様をタコ殴りにする、神をも畏れぬ男だと見ている」

「流石に自分から神様に進んで喧嘩を売るようなことはしないし、したくないよ?」


 苦笑し、サクラは訝しむ恋歌と千夜へ振り返る。


「二人とも、今日のところは解散しても大丈夫だと思う。赤羽君、連絡先を交換しても大丈夫かな?」

「問題ありませんけど、これからどうするんですか?」

「さぁね。もしロキやさっきの連中と会ったら、連絡を寄越してほしい。すぐに駆けつけるから」

「わかりました」


 その後、サクラは千夜と恋歌をそれぞれの門前まで送り、自らも帰宅した。


「ニース、神界と連絡を取ってもらえないか?」

「あぁ。私も、丁度聞きたいことが山のようにある」


 静かに、状況が動き出そうとしていた。



お読みいただき、ありがとうございます。

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