転生者への違和感
-メアの戦闘-
アーマーミノタウロスが私のスキルの間合いに入った。
「❬溶剣エタンゼル❭!!」
私の剣が真っ赤に染まる、アーマーミノタウロスの身体を斬ると、その分厚い鎧は紙切れのように簡単に斬れ、その筋肉質な身体を抵抗なく切り裂く。
「この程度か···」
アーマーミノタウロスがその場に崩れ落ち、絶命した。
-戦闘終了-
私達は一体ずつアーマーミノタウロスを倒し、
残りの一体に剣を向ける。
アーマーミノタウロスは私達に怯えることなく、
こちらに向かって来た。
「良い度胸だ」
「せめて痛くないように一瞬で倒してやるぜ!」
私達は同時にスキルを発動させる。
「❬ヘルフレイムソード❭!!」
「❬メテオブレイカー❭!!」
クルシャのスキルがアーマーミノタウロスの身体を粉々にし、そこに私のスキルで斬り込んでアーマーミノタウロスを燃やし尽くす。
この一瞬でアーマーミノタウロスが塵も残らず消えた。
「ふぅ···これで、かなりポイントが稼げたんじゃねぇか?」
「あぁ、これなら合格も容易だろう」
私達は合格に必要なポイントを稼ぎ、ダンジョンから出るために上層を目指す。
「そういえばクルシャは、その格好で暑く無いのか?」
「あ?お前に言われたくねぇよ、お前は頭鎧をずっと被りっぱなしじゃねぇかよ」
「まぁ、少しだけ暑いが···まだ行ける!」
「何が、「行ける!」だよ···」
「でも、クルシャは全身加治服じゃないか···しかも、肌が見えない位の」
「····防具の代わりだよ、悪ぃか?」
「いや、少し気になっただけだ」
二人が服装の話をしながら上層に向かっていると、酷いケガをして倒れている少女を見つける。
「おい!大丈夫か!?」
ケガをしている少女に駆け寄った瞬間!
何者かに突き飛ばされる。
「な、何だ!?」
私を突き飛ばした犯人に目をむけると、その人物は、ミラトに入国する時に話していた、転生者の少年だった。
だが、その少年はケガをしている少女を治していた。
多分ケガをしている少女を見て慌てたのだろう。
···だが、少年が私を突き飛ばした瞬間、その少年からは何か邪な感情を感じ取った···きっと何かの間違いなのだろう。
「おいメア、大丈夫か?」
「あぁ、平気だ」
「おい、そこの転生者!焦って突き飛ばしたのはしょうがねぇと思うが、一言は謝っとけよ!」
「··え?···あぁ、すみません」
「いや、別に気にしないぞ」
「ってアナタは、入国する時の···!」
「あぁそうだ、憶えていたのか」
「········!?」
「?···どうかしたのか?クルシャ」
「い、いや何でもねぇ」
その後、少女の傷は転生者の少年のアイテムにより完治した。
その少女は大喜びし、転生者の少年に着いて行った。
「···でクルシャ、何だったんだ?」
「あぁ···実は私達❬鬼族❭は、相手の真の感情が少し読める能力を、持ってるんだ」
「まさか、あの転生者の少年の心を?」
「あぁそうだ、それでアイツがお前を突き飛ばす瞬間に、どんな感情があったと思う?」
「····焦り···か?」
「いや、違ぇ、········嫉妬と、憎悪だ」
「!?」
私は、これを聞いてある事件の話を思い出した。
ある街に、とても美しい少女がいた。
その少女の性格は、真っ直ぐでとても正義感が強い、まさに完璧な少女だった。
だがある日、その少女は街で大怪我を負ってしまう、それに一速く気付いた一人の街の騎士が少女に駆け寄り治療を始める。
だが、二番目にそれに気付いた若者は騎士が少女を治療しているのを見て、
(こにままあの騎士が治療をしてしまうと、少女が騎士に惚れてしまうかもしれない、それでは彼女が僕の仲間になる事が出来ない!❬あんな❭騎士に取られてしまう!)
少年はそのように考え、何とその治療をしていた騎士を殺してしまった。
その後、その少女が意識が薄れ記憶力が低下していた事を良いことに、その少年は少女を治療し、数日後にその少女に惚れられて幸せにしているという。
その事件が原因で少年は捕まった。
そしてその少年は後で、転生者だった事が分かった。
という事件だった。
この事件の少年が騎士を殺す時に抱いていた感情が、嫉妬と、憎悪だ。
あの転生者の少年も私を突き飛ばす時は、あの事件と同じような事が起きていたのだ。
この出来事により、私達はより転生者達を危険視するのであった。
今回は人間のどろどろを書いてみました。