表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放騎士メアの交響詩  作者: 白木 はる
40/42

クルシャの過去2

ベルゼが私にボロボロの鎧を渡して、修理をしてみろと言う。


「できるかな····」

「やってみな」

「·····」


私は目の前の鎧を見つめ、どこから手をつけるか考える。


「(鎧の損傷が激しい····こんなのどうしたら·····!!)」


考えていると鎧から不思議な音が聞こえる。

私が手を動かすとその音が高くなる、鎧の破損部位を調べると、音が柔らかく、暖かい音に変化する。


「(もしかして、この音···アナタが出してるの?)」


頭の中でそう問い掛けると、柔らかな音が連続で鳴る。

肯定····という事だろうか?私は、もしかすると····と思い、再び鎧に問い掛ける。


「(私にどこをどう治せば良いか、教えてくれる?)」


すると鎧から再び、柔らかな音が連続で鳴る。


「(!!)」


すると目の前に光の玉のような物が現れた、その光の玉は鎧の破損部位に近くと、その形を一枚の紙のような物に変え、そこに修理の工程等が詳細に描かれていく。


「(この通りにしたら、治せるのかな?)」


私は記されている通りに手を動かし、鎧を修理する。

気付くと鎧は完璧に修復され、新品同様の状態になっていた。


「···本当に··出来ちゃった···」


ベルゼの方を見てみると、呆然としていた。


「(教えてくれてありがと、でもこの音や、光は他人に見られたらマズそうだけど、これって他人に認識されてるの?)」


そう頭の中で呟くと、低い音が連続で鳴る。

否定····って事か?。


「おい、クルシャちゃん·····」

「は、はい?」


ベルゼが私に話し掛ける。


「うちで働く気は無いか?」

「え?」




ー10年後ー


10年後····私はあの日ベルゼに雇われ、ベルゼの鍛治屋ギルドで働き始めた、親はそれを喜び、街の知り合い達もその事を喜んでいた。

当時のも夢の一つの鍛治屋になれたのだから、喜んでいた。


「·····」


でも少し時が経ったある日に私は思い出す、私が本当になりたかったモノ、したかった事を。


「(私が····本当にしたかった事は、冒険者になってこの広い世界を旅する事だったじゃないか····それなのに私はこんな薄暗い工房で装備の修理ばかり····)」


私はその日、決意する。

❬鬼族❭の里を出て行き、別な環境へ身を移して冒険者になる事を。


ー翌日ー


「おいクルシャ、どこに行くんだ?そろそろ仕事に行く時間じゃないか?」


親に声を掛けられる。


「大丈夫、少し散歩するだけだから」


こうして私は生まれ故郷を出て、どこか別な環境を求めて旅に出るのであった。


「さて、どこに向かおうかな」


私は地図を広げ、行き先を考える。


「❬ミラト❭とか、行ったら楽しそうだな!」


私は地図をしまい、多種族混合の国❬ミラト❭へ向かった。

1日近く馬車に揺られていると、遠くに❬ミラト❭の街が見えて来た。


「····やっと、私の夢が叶うんだな····」









ー1年後ー


私は冒険者にはなれなかった。

理由は、冒険者登録試験当日に集まっていた冒険者志願者の一人に絡まれ、揉め事になり···結果、私が相手にケガを負わせてしまったからだ。

その後、私は国の牢獄に投獄され約半年を牢の中で過ごした。

本来であれば一年は牢で過ごすのだが、この街の薬師が高額の金を払い、私の牢獄生活の期間を縮めてくれたらしい。


それから半年の時が経ち、私は牢獄から解放される。

私は牢獄から出てから、すぐに冒険者ギルドへ向かった······しかし、冒険者ギルドにいる門番に止められた。

理由を訪ねると「お前は以前、冒険者登録試験で事件を起こした者だ、お前のような危険な者を冒険者ギルドに入れるワケにはいかない、これはギルド長の命令だ」だそうだ。

だが「お前が、我々が信用できる者と共にここへ来た時だけは、ここを通そう」と言っていた。


だが私の下には、そう見える人物すら来なかった。

それどころか、私を殺人鬼呼ばわりしに来る輩ばかりが私の下に来る。

そんな日が続いていく内に、私の口や性格は悪くなっていた。


それから少しの時間が流れた。


私はもう冒険者の夢を捨て、この街で鍛治屋を始めた。

しかし私は装備の修理は得意だったが、装備を作る事がほとんど出来なかった。

さらに、この街での私の信用は無いに等しい。

そのせいで店の売上もほとんど無い状態が続いた。


しかし·····❬その瞬間❭は突然訪れる。


「店主、ここは鍛治屋で間違い無いだろうか?」


一人の騎士のような人物が私の下へ来た。

どうせまた私の悪口を言いに来た奴だ。


「はぁ?、見りゃわかんだろ」

「すまないな、鍛治屋に詳しくなくてな」


しかし、その人物からはそういう雰囲気が一切無かった。

私はその人物を少しだけ信じてみた。


「別に良いけどよー、アンタの防具ボロボロじゃねーか」

「む?そうか?」

「着けてる防具、一旦全部外しやがれ!」

「こ、ここでか!?」

「恥ずかしかったら、そこの部屋にでも入ってろ!」

「わ、分かった」


私はその人物のボロボロになった装備を修理する。

その間も、その人物は大人しくしていた。


「(そうか·····こいつは私の噂を知らないのか····)」


修理が終わり、その人物と少し会話をしている時

···近くを通りかかった奴が私の悪口を、その人物に聞こえるようにはっきりとした口調で言って行った。


確かにその悪口はその人物の耳に届いたはずだ、しかし···。


その人物はその事をまるで聞かなかったかのように会話を続けた。

この時、僅かに····私の心に光が差して来た。









その後、この人物と共に世界を救う大冒険へ出る事になるとは、その時の私はまだ知らなかった。

これで、クルシャの過去は終わりです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ