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追放騎士メアの交響詩  作者: 白木 はる
23/42

そこでは転生者とそのパーティーが❬光の神❭と会話していた。


『何用ですか?転生者よ』

「この先にある❬聖水の滝❭に俺達を入れてくれないか?」

『見た所···アナタ方の中に酷い傷を負っている者はいないようですが?』

「そうなんだけど···俺達、長旅で疲れてるんだ···ダメか?」

『えぇ、ダメです。ここに入る権利のある者は、通常では治ることの無い病や傷を負っている者だけです』


すると、転生者のパーティーメンバーの一人の女が前に出て❬光の神❭に話し掛ける。


「私達はこれまでに、沢山の国や村を救って来たわ!···なのに何で?···」

『···だから何だと言うのです、その程度の事で何が出来るのです?』


すると、転生者が大声で叫ぶ。


「俺達はこれまで、沢山の人々を救い導いて来た!悪を討ち、弱き者を助けた!その途中で大切な人も沢山失った!!それでも諦めずに、世界を救うために今、魔王を倒す旅に出た!たとえお前が神だとしても、これを否定することは絶対に許さない!」


転生者がこれまでの、辛い出来事や偉業を神に語る。


『····そんなに言うのであれば、❬魔界❭の主である❬魔王ミティス❭にでも挑めば良いのですよ···それで世界を救えると思うならですがね』

「···分かった···そいつを倒せば良いのか」

『自分で考えなさい』


そう言われると転生者一行は、どこかへ走り去ってしまった。


『そこで見ている人間、こっちへ来なさい』

「あ、あぁ」


私達は❬光の神❭に呼ばれ、その場へ行く。


『アナタ方はどこかに傷があるのですか?』

「あぁ、私の顔に治らない傷が出来てな···」

『ふむ···ではそちらの仲間の方は?』

「あぁ、実は私も昔から治らない傷があってな」

『良いでしょう、アナタ達には立ち入りを許可しましょう』

「!···感謝する」

「ありがとよ」


ここで私は、魔王から言われていた特殊な魔法の事を❬光の神❭に言う。


『ほぅ···あの❬魔王ミティス❭が···』

「それで、試練も受けに来たんだ」

『試練を与えるのは構いません···ですが、生きて帰って来れるかは分かりませんよ?』

「···一応、覚悟はしてきたつもりだ」

「私もだ」


❬光の神❭が何故か少し笑う。


『フフ···いいでしょうでは早速、試練を与えましよう····』

「試練の内容を聞いても良いか?」

『内容は、あまり話せませんが❬脱出❭ができれば達成です』

「❬脱出❭····?」

『では始めます!』


目の前が白い光に、包まれる。


「!?」

「!!」


気がつくと、目の前には真っ白な世界があった。

辺りを確認するも、クルシャの姿は無い。


「!?···まさか、この世界から脱出するのか!?」


私は一旦落ち着き、辺りをを歩く。

周りには、どこにでもありそうな街並みがあった。

だが、その街には誰も居なかった。

それどころか、生き物すら居なかった。


「❬脱出❭の手がかりが無さすぎる····」


絶望するにはまだ早いので、私はひたすらに走り続けた。


「何も手がかりが無い、どうすれば」


この白い世界に響く音は私が歩く音だけ。

この世界は不思議なことにお腹が空くことも無いし、疲れも無ければ眠気も来ない。


「不思議だ」


私はまたひたすらに走る、何か手がかりになる物を求めて。


「···今、何時間くらい経っただろうか···いや、分かるはずもないか···」


ずっと私の走る音が響く。

何も無い。

かなり遠くまで走った。

何も無い。

新しい街を見つけた。

何も無い。

高い山がある。

何も無い。

山の頂上まで来た。

何も無い。

下を見下ろす。

ただ白いだけ。

違うルートで下山する。

何も無い。

洞窟を見つけた。

何も無い。

洞窟の最深部へ来た。

何も無い。

地上への抜け穴があった。

何も無い。

地上へ出た。

何も無い。

湖があった。

何も無い。

潜ってみた。

何も無い。

向こう岸へ行った。

何も無い。

大森林があった。

何も無い。

一際大きな木を見つけた。

何も無い。

一番上まで登った。

何も無い。

大森林を抜けた。

何も無い。

国の防壁が見えた。

何も無い。

国の中へ入った。

何も無い。

街を散策する。

何も無い。


「············································」


城へ入った。

何も無い。

全ての部屋を見て回った。

何も無い。

国を出た。

何も無い。

村があった。

何も無い。











私は、感情を忘れた。

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