光の神の試練
私達は魔王城を後にし、今❬精霊王の聖大森林❭の入り口の前に来ている。
「クルシャ···ここの辺りの魔力、濃ゆすぎないか?」
「あぁ、なにせこの森があるんだからな···」
❬光の聖大森林❭には通常の精霊とその上位の精霊や精霊の王、さらに光を司る神までもがここで生活している、その膨大かつ上質な魔力の前に大抵の生物は吐き気がしたり、魔力酔いをする。
「うぅ···」
「魔力酔いか···私は吐き気が··ウッ」
私達はそんな状態で何とか大森林の中を歩いて、
❬光の大山❭を目指す。
すると、大森林の木の下で見覚えのある人物が、キノコを採取していた。
「む?そこでキノコ採取をしているのは、市役所でお世話になった職員殿ではないか?」
「え?アナタはもしかしてあの時の鎧の方ですか?」
やはりあの時の職員で間違い無いようだ。
「そうだ、憶えていてくれたか。ところでここにを何しに来たのだ?」
「ここの木の根元に生えるキノコが好きで、私一人でよく取りに来るんです」
「ほう、魔力酔いは大丈夫なのか?」
するとその職員は、鞄からポーションを取り出す。
「これ魔力酔いを抑制できる薬なんです、良ければ一つずつ上げましょうか?」
「良いのか?助かる」
私達は貰った薬を早速使用した。
前より随分と酔いが良くなった。
「そういえば職員殿は、ここに一人で来れたのか?」
「えぇ、冒険者だった時の知識を活かして···」
「それは凄いな、もういっそ冒険者に戻っても困らないのではないか?」
私がそう言うと、職員は急に立ち上がり私に叫んで来た。
「っ!···何で人がせっかく現実を見て、夢に逃げる行為を止めたのに···なんでそんな事を言うんですか!!!」
「!」
職員の顔は怒りに染まっていた。
私が言った言葉が、この職員を傷つけてしまったのかもしれない。
しかし····。
「一つ言っておく、既に夢とゆう一つの現実から逃げ出した者に現実だとか、逃げるななんていう言葉を発する資格は寸分たりとも無い」
「!?」
これは私が幼い頃より、母に憶えておけと教わった言葉だ。
「この言葉、決して忘れるでないぞ····」
「·····」
私はそう言い残し、クルシャと❬光の大山❭へと向かった。
「なぁメア、ふと思ったんだが」
「なんだ?」
「全然、モンスターが襲って来ないな」
「確かに、言われてみれば···」
周りにはモンスターがそれなりにいるが、どの個体もこちらを襲って来ない。
「なんとも不思議な感覚だ」
「だなぁ」
その後クルシャと雑談をしながら、歩いていると目指していた❬光の大山❭らしき山が見えた。
「おぉ!あれが❬光の大山❭か」
山の裾野に着いた私達は、山頂を目指して歩き始めた。
私は登山中が暇だったので、考え事をする。
「(それにしても私のこの、危険極まりない力はどうにかならないものか···。この山頂にいる❬光の神❭に聞けたら聞いてみるか··)」
しばらく山を歩いていると、背の高い草に囲まれた道に出た。
すると、丁度クルシャの頭鎧の上に小さな蜘蛛が乗った。
「クルシャ、頭鎧の上に蜘蛛が乗ってるぞ」
「キャッッッ!?!?!?!?!」
「!?」
クルシャが驚いて大声を出す。
「フフ····」
「お、おい!笑ってないで早く取ってくれよ!!」
「(意外に乙女な所を見てしまった)」
気を取り直し、山頂を目指す。
下の景色を見ると、前までいた大森林が霞んで見える。
「結構高い所まで来たな···」
「おいメア、あれって❬光の神❭じゃねぇか?」
クルシャが指差す方向を見ると、確かにそれらしき存在がいた。
「む?誰かが❬光の神❭と話していないか?」
「あれは···転生者か??」
山頂では転生者らしき人物とそのパーティーが❬光の神❭と会話していた。