アンリの過去
これは私、❬アンリ❭が騎士団に入る前の物語
「こらっ!アンリ、学園が休みだからってこんな時間まで寝てちゃダメよ!」
「ん?···お母さん、今何時?」
「もう10時よ··ほら!早く起きなさい!」
「うわわっ!?」
お母さんが、私の布団をひっくり返す、私は床に顔面をぶつけて目を覚ます。
今日は休日、私の通っている❬魔導学園❭は週に二回、生徒に休日が与えられる。
休日とはいえ、流石に寝すぎたみたい。
今日は私一人で街に買い物に行くんだ、早く支度を整えなくてはいけない。
「お母さん!私のお気に入りの服は?」
「あの服なら洗濯してアンタのタンスに入れといたわよ」
私のお気に入りの服とは、昔ジブラルタルで買った白のワンピースのことだ。
「あったあった、これが無いと気分が上がらないんだよね♪」
私が出かける時にはこのワンピースが必須なのだ。
「あと、あの帽子は~?」
「あの白い帽子?それなら外に干してあるわよ」
「分かった~」
外に行くと、私の白い帽子が干してあった。
その白い帽子に青いリボンを結び付ける。
これで準備が完了した。
「じゃあお母さん、行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい、気を付けて行くんだよ」
こうして私は家を出て、街へ向かう。
道の途中、❬大狼❭に出くわす。
「わぁ、最近は狼が増えてるねぇ」
私は手下げから、護身用の大振りのナイフを取り出し❬大狼❭に私から襲いかかる。
「❬フラッシュ❭」
そう唱えると、私の手のひらが一瞬だけ眩しく光る。
❬大狼❭はその光を直視していたので、いっとき目が見えなくなった。
「残念でした」
そう言って私はナイフで❬大狼❭の喉を斬り、❬大狼❭を倒す。
その後片付けは近隣の見回り兵に任せて、私は街へ向かう。
十五分程歩くと街の喧騒が聞こえて来た。
そろそろ街だ。
「さて、色々なお店にいってみよっ!」
街に着いて一番最初に向かったのは、❬服屋❭だ。
「おっ?服、欲しいかも···店員さーん」
「はい、何でしょうか?」
「この服っていくらですか?」
「そちらの服は大変良い素材を使っていますので、12万ゴールドです」
「(た、高い!!!!)」
その後、ひと通り服を見終わって次の店向かう。
次の店は❬加治屋❭だ。
私は珍しく、装備を見るのが好きなのだ。
「おう!アンリちゃんじゃねぇか、今日は何が見たいんだい?」
「何と今日はですね、買いに来ました!」
「なんだい、アンリちゃんは冒険者にでも成りたいのかい?」
「ん~、冒険者も悪く無いんですけど···私、誰かを守れる❬盾使い❭になりたいんだ♪」
「ほう、立派な志しじゃねぇか···じゃあおじさん、ちょっとその夢手伝っちゃおうかな」
「え?もしかして何か教えてくれるの?」
「いや、これをやるよ」
「···おじさん、これは」
加治屋のおじさんが私に渡したのは、❬大盾❭だった。
「だって、誰かを守れる奴になりたいんだろ?」
「も、貰って良いの?」
「おう勿論だ、それに···最近の若い冒険者には人気がねぇみたいだからな、その盾もアンリちゃんみたいな奴に使って欲しいだろうよ」
「ありがとうおじさん!大事にするよ」
私は貰った大盾を背負って街を歩く、すると
街の入り口方面から悲鳴が聞こえて来た。
「キャァァー!❬魔狼❭の群れが入って来たわ!誰か早く帝国騎士団を呼んで!」
すると街にいた人々は全員がパニック状態となり
、街の避難所へ走って行く。
だが、この❬魔狼❭は普通の狼とは違っ魔法を使ってくる、この街の避難所ではその攻撃には耐えきれ無いだろう。
そして帝国騎士団が来るのにもある程度の時間がかかる。
「わ、私がここで帝国騎士団が来る時間を稼がないと、···街の人が死んでしまう」
だが相手は、Aランク相当のモンスターの群れだ
私みたに、戦闘技術をかじっただけの素人では歯が立たないだろう。
魔導学園の先生が少し教えてくれたスキル、❬護兵結界❭を上手く使えれば、少しは時間稼ぎになるだろう。
『グルルルルッ』
気付くと目の前に❬魔狼❭の群れが迫っていた。
私は覚悟を決め、盾を装備してスキルを叫ぶ。
「お願い発動して!❬護兵結界❭!!!」
すると、目の前に迫っていた群れが緑に発光する、結界に道を阻まれる。
「やった!上手く出来た!」
そう思ったのも束の間、大量の❬魔狼❭の攻撃の衝撃が、私を襲う。
「くっ····うあぁぁぁ!!」
激しい痛みに耐える、ここで倒れたら街が大変な事になる。
すると、この場に居るべきとある存在がいない事に気付く。
「ぼ、冒険者は何で来ないの?」
それが気になって後ろを振り向くと、何と冒険者はモンスターに背を向けて逃げているではないか。
「っ!···何でアナタ達が逃げるんだ!戦いなよ!その為にいるんでしょ!?」
私の中で何かが切れ、逃げる冒険者に問いかける。
だがその冒険者は私の言う事も聞き入れず、避難所へ走り去った。
「くっ、我が身欲しさに負けてて、何が冒険者なんだ!?冒険が出来て無いじゃないか!?」
そう言っている間に、結界にひびが入る。
「がっ···!まずいこのままじゃ···破られる」
盾を持つ手から血が流れる、足の裏は擦りむけて
血が滲む、魔力もずっとは持たないし、何よりも
体力が持たない。
結界にさらにひびが入る。
「ぜ、全身が痛い、体が潰れそう···息が続かない···」
すると群れの後ろの❬魔狼❭達が魔力を溜める。
「あの攻撃は···まずい!」
だが、すぐに溜めが終わり私にスキルらしきモノを大量に撃って来た。
「ぎっ···!くっ···うあぁぁぁぁぁぁ!!!」
私は結界を破られ、数メートル後ろに吹き飛ぶ。
『グルル』
群れの頭が倒れた私の匂いを嗅ぎ、死んでいるかを確かめる。
私をいっとき嗅いで、避難所に向かい一歩踏み出したその瞬間!
「どこ見てる?私はまだ立てるぞ?···」
私は立ち上り、群れの頭の喉を素手で握り潰して他の❬魔狼❭達を睨んだ。
今回アンリ過去のお話しでした。次の話でアンリの過去パートは、おしまいです。
次は、クルシャかなぁー