魔王ミティス
-夜-
「お、おいメア···私はもう··」
「クルシャ!?···お、おい?しっかりしろ!·····ク、クルシャーーー!!!」
とうとうクルシャが眠気との闘いに敗れ、その場で眠りについてしまった。
全滅は時間の問題だ、早急に宿を見つけなくてはいけない。
「く、クソ···視界がぼやけてきた···」
私は眠りについたクルシャを担いで、フラフラになりながら夜の街を歩く、辺りはまだ国の住民達で賑わっていた。
「も、もう人気が無さそうな場所で寝ても良いか···む?あれは··」
街の一角に小さな薬屋があった。
だが、明らかにただの薬屋の雰囲気では無かった。
「あれは、ナウディアか?···」
私はその怪しい薬屋に立ち寄る。
「あら····あなた達じゃない··試験はどうだったかしら?」
そこにいたのは、やはりナウディアだった。
「試験は問題無かったぞ·····」
「それは良かったわね···それにしてもアナタ···随分と眠そうね」
「あ、あぁ···今にも倒れそうだ···」
「そうねぇ···今の時間帯はどこの宿屋も満室でしょうね···」
すると、ナウディアが何か思いついたような顔をして私に話し掛ける。
「そんなに眠いなら···今晩、私の家に泊めてあげるわ」
「!ほ、本当か?助かる」
「構わないわ··じゃあ、着いてらっしゃい···」
「あぁ、頼んだ」
私はナウディアに着いて行き、何やら怪しい道に入った。
「ほ、本当にこの先なのか···?」
「えぇ、そうよ」
怪しい道を真っ直ぐ歩いて行くと、正面に木製のドアが見える。
「ここよ···」
ナウディアがドアを開くと、そこには❬ゲート❭があった。
「こ、この先に家があるのか?」
「そうよ···じゃあ私に掴まって頂戴··」
「む?···分かった」
私がナウディアの着ている着物の袖を握る、
私が袖に掴まったことを確認すると、ナウディアが❬ゲート❭に入る。
「な、なんだこの空間は!?」
❬ゲート❭の中には、いくつもの時空の割れ目や、巨大な遺跡が浮遊していた。
中には、凍てついたモンスターの大群や、❬ニホン❭と記されている❬ゲート❭や❬天界❭、❬魔王城❭などと記されている❬ゲート❭があった。
「こ、この空間は本当に何なんだ!?」
「ふふふ···そのうち教えてあげるわ···そんな事より、もう家に着くわよ」
そう言うとナウディアは❬魔王城❭と記された、ゲートに入った。
ゲートの先は何と一つの広い部屋だった。
「ここが私の家···というより部屋よ」
「?···誰かと住んでいるのか?」
「えぇ、それはもう沢山ね···」
「そうか、というよりも···もう···限界··だ···」
「あら··寝ちゃったわ·····おやすみなさい」
-次の日-
「う··もう朝か?」
「そうだよ、早く起きろよ」
「二人とも、おはよう··」
私が目覚める頃には、クルシャが起きていた。
すると、ナウディアが私達に声を掛ける。
「二人とも、今日は二人に挨拶をして貰うわ··」
「む、そうだな昨日は挨拶もせずに寝てしまったからな」
「で、誰に挨拶したら良いんだよ?」
「ここ、魔界の主の❬魔王ミティス❭によ」
「!?」
「!?」
私達は魔王という言葉に驚き、剣を握ろうとする。
「大丈夫よ、ミティスは悪い人じゃないから」
「で、でも魔王だろう···」
「ていうか、呼び捨てなんかして大丈夫かよ?」
「あの人は、そんな事は気にしないわ··ほら、もう行くわよ」
「急に緊張してきたな」
「あ、あぁ···」
私達は緊張しながらナウディアに着いて行く。
部屋を出るとそこは長い廊下だった。
廊下を歩いていると、他の部屋の住人達も出てきた。
魔王城と言うだけあって、ミラトとは比べ物にならない程の種族がいた。
廊下を抜け複雑な道を歩いていると、巨大な扉が
目の前に現れる。
この先に魔王がいるのだろうか、明らかに異質な雰囲気が扉からでも伝わってきた、私達に更なる緊張が走る。
「じゃあ入るわよ···」
「ふぅ、緊張するな」
「皆、最初はそうなるわ···」
そう言うと、ナウディアがその巨大な扉を開く。
「魔王ミティス、昨日私が泊めてた人間を連れてきたわ···」
「うん知ってるよ、君達それぞれ自己紹介してくれるかな?」
魔界の主が私の予想と真逆の明るい雰囲気で話し掛けてきた。
(これが最強と謳われる魔王ミティスか···)