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第8話 思いがけない邂逅

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何の担当だか知らんが、多くの職員が王城通路に立っていた。

何でも姫騎士クレイリア王女が帰ってきたら、拍手で出迎えるという仕事らしい。

まあ拍手して給料もらえるならば是非もなし。楽なものだ。

そんなわけで、自分の所属する部署のメンバーが立っている場所へとやって来たのだが・・・。


「よう空前絶後の落ちこぼれ」


こんな面倒な呼び名で呼ぶのはあの男しかいない。


「お前ごときがクレイリア王女を出迎えるなど100年早いわ」


後ろを振り向けばニヤニヤしながら腕組みしたコンロンがいた。

魔法省トップの宮廷魔術師長を補佐する立場にいる、宮廷魔術師長補佐筆頭の肩書を持つのがこのコンロンだ。長い茶髪を油でなでつけ、オールバック?のような髪形をしている。ゴツイ体つきの割にネチコイ性格て厭味ったらしい。


「お前ごときと言われても、俺の部署はここに並んでクレイリア王女の出迎えを行うと決められているのだが」


一応部署で決まっている説明をしては見る。聞きゃしないだろうけどな。


「そんな事は関係ねぇよ。俺は宮廷魔術師長補佐筆頭だからな。お前らのような木っ端役人を指示する役目を担ってるんだからな」


偉そうに腕組みしながら堂々と言い放つコンロン。

いや、だから指示を受けてここにいるって言ってんのに。


「そんなわけでお前は便所掃除だ」


ニヤニヤと笑いながら俺に便所掃除を告げるコンロン。


「いいのか?俺たちの部署は直属の上司から言われてこの場所にいるのだが・・・」


一応再度説明してみるが、


「バカか貴様? お前の直属の上司なんぞよりもずっと俺の方が偉いんだから俺のいう事を聞くのが当たり前だろう? そんなこともわからんからお前はずっと落ちこぼれなんだよ」


偉いからって下の組織の指示を自分の都合で勝手に変えていいわけないだろうに。

どこのバカがコイツを出世させたんだろう? 平和な国だね。


「クレイリア王女のお目汚しになる前にさっさと消えろ」


俺だけを列から離れさすとシッシッと手を払い俺を追い払う。


「消えろというよりは、便所掃除なんだろ?」


「ああ。そのまま汚物と一緒に流れて行ってくれ」


コンロンが笑いながら言う。周りの同僚もクスクス笑ったりしている。若い連中なら、クソ!覚えてろよ!みたいな気持ちになるのだろうが、45にもなるおっさんの俺にはそんな気概や反発心は湧いてこない。だいたい、反発するほど価値もない人間だしな。人の状況を笑うヤツは大抵しょうもない奴と相場が決まっている。前世の時から生きてきて、この異世界でもほぼ同じ時を過ごしてきた俺にとっては経験則の一つだな。


「じゃあ頑張ってくるとするかね」


「ああ、王城中の便所を掃除し終わるまで帰ってくるなよ」


笑いながらさらに俺に追い打ちをかけるコンロン。

おいおい、王城中の便所ってどれだけあると思っているんだ、アイツ。

王様専用の便所とかも掃除するんですかね~。怒られたら『コンロン宮廷魔術師長補佐筆頭からの直接指示であります!』とか言えばいいか。そう言う時に限ってああいう輩は偉そうにしているくせにそれよりも上の権力には掌を高速で返してヘコヘコするからな。

俺は便所掃除の道具を取りに行くことにした。





モップにバケツを引っ掛けてまずは王城1Fの便所へやってくる。

クレイリア王女のお出迎えと言うことで、王城も人の流れが規制されている。そんなわけで、この便所にも人の姿はない。


便所の中に立つ。

通常ならさて、何から手を付けようか、などと清掃手順を検討せねばらならいところだろう。

だが、さすがにそれは面倒くさい。

いかに俺がうだつの上がらないノー出世の魔術師だとしても、ゴシゴシとブラシで便所のタイルをこするのはしんどい。

「そんなわけで、誰も見ていないなら魔法で片付けるよね~」


そう言って俺は入り口の扉を閉めると魔力を練る。


「<清掃浄化(ピュリフィケーション)>」


浄化魔法、<清掃浄化(ピュリフィケーション)>。

水の精霊の力を借りて、汚れなどを浄化し、きれいにする魔法だ。

よく、<清掃(クリーン)>の魔法などは市井の冒険者たちも使える人間がいる。自分の体や装備の清掃をするために覚えている人もいるようだ。

だが、この<清掃浄化(ピュリフィケーション)>は水の精霊+女神の力が必要な魔法だ。教会の連中が神聖魔法、などと呼んでいる部類のものなのだが、水の精霊の力も必要なこの魔法を使える神官はほとんどいない。

そんな珍しい魔法を俺が使えるなどとバレてしまえば面倒な事になること請け合いだ。

そのため、使用には最新の注意を払う・・・まあ、魔法の行使なぞ一瞬だけどな。


「さて、ピカピカにしたのはいいのだが・・・」


通常の便所掃除だと、この規模の便所一つにどれだけ時間をかけるのだろうか?


「わからん・・・」


30分程度だろうか?

しかし、わからんからと言って実際便所掃除をしてみるというのは本末転倒だな。何せ疲れてしまう。45のおっさんからしたら、肉体労働なぞするもんではない。


「それにしても、便所掃除とはラッキーだったな」


俺は一人ほくそ笑む。

コンロンの野郎は俺に屈辱を与えるつもりで俺だけ便所掃除という作業を押し付けたのだろうが、俺からしてみれば実に楽な仕事だ。

清掃浄化(ピュリフィケーション)>の魔法が使えるからという理由ではない。

ただただ便所掃除と言う単純作業を繰り返すだけで給料がもらえるのだ。何も考えず作業するだけで給料がもらえるのは決して悪いことではない。


まあ、もちろん長時間同じ仕事をするというのは辛い部分もあるし、便所掃除と言えば汚い作業もつきものでそれも辛いという感覚もあるだろう。

だが、それでも魔獣を狩るという命の危険がある仕事だったり、警備に着く騎士の仕事だったり、その訓練で打ち合ったりするより、ずっと楽な仕事だと思える。また、新しい魔法を作り上げろといった研究も結果が求められる。そんな仕事に比べればどうすれば終わるかが明確に見える便所掃除なぞもはやご褒美の域とも言えるかもしれない。


ちなみに、なぜ俺が便所掃除なんかしなくちゃいけないんだ、という変なプライドは持ち合わせていない。プライドだけでメシが食えないのは前世でも今世でも十分に肌で感じている。


そんなわけで俺は鼻歌交じりに便所を浄化してはのんびり休憩することを繰り返した。






「貴殿は・・・どこかで会ったことがあったか?」


それは王城の高層階。正直王城の間取りなぞ全く頭に入っていない俺は最下層から順に便所を浄化していった。

適当に便所を探しては浄化していけば、どこかでぬけが出ていい感じで怒られるだろう、と言うのが俺の狙いどころだ。

そんなわけで、上がってきたこのフロアは結構きれいな絨毯が敷かれた高級そうなイメージだった。まあ俺には関係ない、便所を掃除すればいいのだ、と適当に浄化してのんびりしようと廊下に出てきたところでばったりと会ってしまったのだ。


“姫騎士”クレイリア・デュラン・ガーレン第一王女殿下に・・・。


どうしよう?


今後とも「おっさん魔術師」応援よろしくお願いします!

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