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第35話 テンプレは、木っ端微塵に


サーレンは騒動をいったん無視すると、若い受付嬢の前にいる3人組の冒険者を避けて、その隣にいるベテランと思われる男性の受付員に声をかけた。


「・・・すまない、あの3人の冒険者登録を頼みたい」


そう言ってサーレンはギルドの1階で受け取った木札を提出する。


「えーと・・・ああ、フォレストウルフ3匹の持ち込みですね・・・。それではEランクスタートとなりますが・・・大丈夫ですか?」


カウンターに書類を3枚出しながら、ベテランの受付員がサーレンの後ろ側を指さす。

しかしてそこには、飲んだくれのオッサン3人に馬鹿にされてキレて騒いでいるヤリスと、それを羽交い絞めで押しとどめるユーリ、なんとかなだめようとしているヨナがいた。


「はぁ・・・、おーい、君たち。いつまでそこにいるんだい? さっさとギルドに登録しないと日が暮れてしまうよ?」


サーレンは大きくため息を吐くと、3人を呼んだ。


「はぁ!? こんなお子ちゃまたちがEランクスタートだってのかよ? ギルドはどうかしちまったんじゃねーのかよ?」


飲んだくれの3人のうちの1人が木でできたジョッキを振り上げて叫ぶ。


「Dランク以上の冒険者の推薦があって、1人1匹の魔物討伐があれば、Eランクスタートできるって、冒険者のコーザさんなら知ってるでしょう?」


「でもよぉ! そいつらが1人1匹倒したとはかぎらねーじゃねーかよ!」


ベテラン受付員の呆れるような指摘にもコーザと呼ばれた冒険者は納得がいかないのか、文句を続ける。


「だから、Dランク以上の冒険者の推薦が必要になっているんじゃないですか」


「・・・ひょっとして、その薄汚れたローブのオッサンがDランクの推薦者かよ?」


「だから、なんです?」


これ以上文句があるのかとベテラン受付員の反応が剣呑になって行く。


「ギャハハハハッ! この年でまだDランクって、相当うだつの上がんねーオッサンだなぁ!」


3人の冒険者たちが大笑いする。


「なんだと!」


その反応に激怒したのは、ヤリスを羽交い絞めしていたユーリだった。


「ああそうか! このオッサンは金を取ってお子ちゃまたちのEランクスタートを不正に斡旋しているんだろーぜ!」

「ちげえねえや!」

「討伐したって証明はDランク冒険者の説明だけだもんなぁ! こんなショボくれたうだつの上がらねーオッサンでもDランクはDランクだもんなぁ!」


そう言って大笑いする3人。



ドンッ!!



ついにユーリが羽交い絞めしていたヤリスを横にポイッと捨てると、3人が飲んだくれているテーブルに拳を落とした。


「サーレン師匠を侮辱することはこのボクが許さない!」


「なんだぁ! やんのかこのガキ!!」

「上等だぁ!」

「表に出やがれ!!」


コーザ率いる飲んだくれ3人衆が激怒してその場に立ち上がる。


だが、


「はいはい、先にコッチで手続き済ませてからにしましょーねぇ」


テンションが上がっているユーリの襟首をひっつかむと、サーレンはずるずるとカウンターまで引きずっていく。


「はい、3人ともこの書類にサインしてね」


丁寧なベテラン受付員の説明を受けながら3人は記入を済ませると、受付員さんは一度書類をもったままカウンターの奥へ姿を消した。


「サーレン師匠、これで冒険者の登録は終了ですか?」


「そうだね、問題なければギルド証を発行してもらえるよ。ギルド証は今後どこに行っても君たちの身分を証明するものになるから、絶対に無くさないようにね」


「「はいっ!」」


元気に返事をしたのはユーリとヨナだけ。ヤリスは横を向いていた。


「お待たせいたしました。こちらが3人のギルドカードになります」


「「「おお~~~!」」」


説明にはそっぽを向いていたヤリスでさえ、新しくできたギルドカードに目を輝かせた。


「Eランクのギルドカードはアイアンで出来ているから、毎日手入れしないとすぐサビますよ。寝る前に磨いて汚れを落としておく癖をつけてくださいね」


サーレンは3人に丁寧に説明した。


「あの・・・サーレンさんのギルドカードは・・・?」


おずおずとユーリがサーレンのギルドカードについて尋ねた。


「私のは君たちの一つ上のDランクなので、カッパーで出来ています。まあ、磨かないと光沢が無くなるのは君たちのカードと一緒ですねぇ」


そう言って懐からギルドカードを出そうとしたサーレンだったが、手元に出す寸前、光り輝くミスリルのカードをつかんでいることに気づき、大慌てで懐を探りなおすふりをする。


(ヤバイヤバイ・・・灰色の魔術師(グレーウィザード)で登録しているSランクのギルドカードを間違えて出そうとしちゃったよ)


<空間収納>スキルで物をしまっているサーレンは取り出すものを頭に浮かべるだけで自由に取り出せるのだが、曖昧にギルドカードを思い浮かべたため、Sランクのプラチナカードが出てきてしまったのだった。


「サーレン師匠・・・?」


ユーリが首を傾げるが、サーレンはナハハと笑いながらDランクのギルドカードを出した。


「わあ・・・これがサーレン師匠のギルドカードなんですね!」


なぜかサーレンが取り出したギルドカードを手に取り、スリスリするユーリ。


「よお。ギルドに登録したからにゃ、素人じゃねーよなぁ?」

「不正して登録したお子ちゃまたちには先輩からキツーイオシオキをしてやらねーとなぁ?」

「ギャハハッ! そのとーりそのとーり!」


ユーリ達3人の冒険者登録が終わるのを待ち構えていたコーザ達飲んだくれ3人組がカウンターまでやって来た。


「このギルドの地下にゃ、訓練場があるんだ。ちとツラ貸せや」

「先輩たちから初心者冒険者の心得ってやつを教えてやるぜぇ!」

「ギャハハハハッ!」


「いい加減に・・・」


ベテラン受付員が3人を止めようとカウンターから乗り出したのをサーレンが手で制した。


「・・・?」


サーレンが指示しなくとも、ユーリが完全にキレている。

サーレンは「はあ・・・」と1つ溜息を吐いた。





地下のギルド訓練場。


コーザ率いる3人の飲んだくれどもが笑いながらユーリの前に立つ。


「サーレン師匠に謝ってください」


ユーリの目がすわっている。

サーレンは首を上に向けて、右手を両目に当てた。


「ギャハハハハッ!」

「シショーに謝れってさ!」

「俺たちに勝てたら謝ってやるぜぇ?」


「言質は取りましたよ・・・?」


「ナメ腐ってんじゃねーよこの小僧がぁ!」

「スカしてんじゃねーよこの小僧がぁ!」

「ブッ飛ばしてやんよこの小僧がぁ!」


ユーリに3人が襲い掛かった。



ドンッ!!



「身体強化・・・しかも本気とは・・・容赦ないねぇ」


サーレンは肩を竦めた。


ドゴッ!!

バギッ!!

ズガンッ!!


あっという間に3人が伸されて山積みになる。


「コーザさんたちも万年Dクラスでしょうに・・・サーレンさんの事をどの面下げてバカにしているのか・・・」


サーレンの後ろでベテラン受付員が溜息を吐いていた。


「それにしても・・・万年Dクラスの酔っ払い3人とはいえ、Eクラスに登録したてで瞬殺ですか・・・将来有望ですね」


にこやかな笑みを向けて来たベテラン受付員にサーレンは答えた。


「ユーリの将来は相当楽しみですよ・・・まあ半年くらいで魔王討伐しちゃうくらいに期待してますよ」


「ええっ!?」


サーレンの言葉にベテラン受付員は目をパチクリさせていた。

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