第28話 何度目かの決闘か
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「本日はこれで終了。お疲れさん」
サーレンはそう言うと訓練場の壁に木製の槍を戻し、その場を後にした。
「・・・えへへ、今日もサーレンさんに一撃も当てられなかったよ・・・」
「・・・あのおっさん、一度だって魔法使ったことないじゃない! 絶対魔法使いなんて嘘よ! 実は棒術使いとか格闘家よ、きっと・・・」
「・・・サーレンさんの姿が全然見えないの・・・」
王城の訓練場に大の字になって倒れているのは勇者たち3人。
勇者ユーリ、賢者ヤリス、聖女ヨナである。
3人は一週間の基礎訓練をみっちりと受け、自信満々でサーレンとの特訓に臨んだのだが、まるで相手にならず叩きのめされることさらに一週間。
いまだにサーレンに一撃すら入れることすらかなわない。
戦えば戦うほどにサーレンという男の底知れぬ懐の深さを感じる3人であった。
「・・・んんっ?」
毎度毎度の通行止め看板を指示通りに進むと、やけに広いエリアに出た。
広場の中央に魔法陣が描かれ、その四隅にクリスタルが設置されていた。
明らかに魔法陣に踏み込めば発動する罠である。
そして魔法陣の右側に不自然に広くとられた空間。
サーレンは魔法結界の存在を感知していた。
つまり、姿が見えないがここには人が隠れているという事であった。
「はあ・・・どうしてこう面倒な事が続くのかねぇ・・・」
サーレンは大きくため息を吐く。
王様に直言がすぐ行えるわけでもなく、現状を報告することも対策を相談することもできず訓練の日々が繰り返されていた。
サーレンがそのまま歩みを止めずに魔法陣の中に入ると、四隅のクリスタルが反応し、輝きだす。
ブンッ!
「<絶対魔法封印結界>か・・・」
<絶対魔法封印結界>
そのエリア内では魔法を使用することができなくなる魔法である。
<絶対魔法防御結界>と違い、結界内で魔法を防御するのではなく、結界内の魔法を封印する。
つまり、防御魔法ではなく、結界内の魔法を封じる攻撃補佐魔法と言える。
問題なのは、<絶対魔法防御結界>なら自分も魔法を遮断される代わりに結界の外からの魔法も遮断できるため、防御結界として成り立つのだが、<絶対魔法封印結界>は結界内の人物の魔法を封じるだけで、外からの魔法を防ぐ効果はない。
外からは魔法を打ち放題なのである。
「サーレン。貴様に決闘を申しつける!」
サーレンが胡乱な表情で目線を向ければ、偉そうに腕を組んでふんぞり返る男が2人。
そしてその後ろに大柄な戦士が2名控えていた。
「我が名はロクデナ子爵家長子、バガードアホゥ!」
「我が名はタヨリナー子爵家長子、ボンボーン!」
「「我らが貴様の化けの皮を剥がしてくれるわ!」」
「勝手にやってくれる? 私は疲れてるんでしつれいしますね~」
しれっと決闘をお断りしてその場を去ろうとしたサーレンだが、そうは問屋が卸さぬと後ろの戦士をけしかける2人。
「貴族の命令を断るなど不敬な輩めが!」
「かまわん! やってしまえ! 王女様の目を覚まさせるのだ!」
勝手な御託を並べながら、結局のところ自分では戦わず後ろの戦士に戦わせる2人。
その後ろではドリステンも姿を見せ、殺せ殺せと騒いでいた。
「我が名はブリトー。破城槌の異名を持つ」
「我が名は双剣のカシム。貴様の息の根を止める者だ」
巨大なこん棒を振り下ろしてくるブリトーと双剣を構えて突っ込んで来るカシム。
<絶対魔法封印結界>内にいるサーレンには身体強化魔法を使う事はできない。誰しもが強力な戦士に太刀打ちできないと思うだろう。
だが、先に攻撃が届いたこん棒を素早く左に避けると、その伸びきった右腕を肘打ちでへし折るサーレン。そのままでかい図体のブリトーをうまく目隠しにしながらカシムの死角に回ると、カシムの右側頭部に回し蹴りを叩き込む。
意識を失い倒れていくカシムを横目に、右腕を折られ叫び声を上げるブリトーの後頭部に手刀を落とし、その意識をあっさりと刈り取った。
「「ばかなっ!?」」
バガードアホゥとボンボーンが同時に声を上げた。
自分たちの代理として連れてきた戦士が負けるなど、想定もしていなかったことが起きたことに理解が追い付いていない。
ただただあり得ないと腰を抜かしていた。
「それで、決闘だったか? お前たちが最後まで相手をするのかね?」
ボキボキと拳を鳴らしながら1歩踏み出すだけで小便を漏らしながら後ずさりしていくバガードアホゥとボンボーン。
その後ろに控えていたドリステンも腰を抜かしてその場にへたり込んでいた。
「・・・なるほど、あながち魔族が紛れ込んでいるというのもウソではなさそうだな・・・」
女性にしては些か低い声がその場に響く。
サーレンの視線の先には豪華な杖を持ったローブ姿の女性と仮面をかぶった大柄なローブの男が歩いて来ていた。
「そうなのですよ! 奴は人間に化けた魔族に違いありません! でなければ魔法封印領域内で身体強化魔法も使えないのに、あんな大男に素手で勝てるはずがありませんぞ!」
大柄な仮面のローブ男は間違いなく元宮廷魔術師長補佐筆頭のコンロンであるとすぐにわかった。
(なるほど・・・、俺の力が本物らしいとわかったら、魔族が俺に化けてなり代わってるとたきつけて排除しようとはね)
あまりにもばかばかしいとサーレンは頭を振る。
確固たる証拠もないのに人を魔族と決めつけて、処断でもしようというのか。
極めてずさんな対応が許されている、いや、見逃されているこの状況。
貴族だから? それともサーレン自身が平民だから?
それともあるいは、その両方か。
思わずサーレンは自分が置かれている状況に舌打ちをするのだった。
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