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第27話 絡みつくやっかみと柵

ブックマーク追加、★評価、感想等誠にありがとうございます!

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今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!


「サーレン殿! 今日も指導お疲れさまだな!」


ユーリたち3人が訓練場でへたばっているのを背に先に外へ出てきた俺を捕まえて声をかけてきたのは、昨日に続きクレイリア王女殿下であった。


「昨日はお茶の誘いを袖にされてしまったが、今日はぜひ・・・」


今日もお茶の誘いのようだ。

いや、マジでありがたいような、すっごく迷惑なような。

何せお約束の如くやっかみが多いったらない。すごくない。

何せ全然他の人の誘いはもとより、夜会やお茶会といった催し物にも参加しないクレイリア王女殿下が、個人的に俺をお茶に誘っているというのが、どうにも許せない人たちがいるようだ。

 だったら俺に視線向けないでほしい。のらりくらりと断ってるんだから。


「クレイリア王女殿下様、ちょっとこちらへ・・・」


見ればどこかのメイドが王女を呼んでいた。


「何用か?」


俺以外に話すときは、ホント王女殿下らしくキリッとした雰囲気を纏うんだよな。

なぜに俺の時だげ顔を赤くしてモジモジするのか。

そのギャップがかわいいと噂が広まってさらにやっかみが増えたというに。


何用かよくはわからないがクレイリア王女殿下を呼びたいどこかのメイドと、俺のそばを片時も離れたくないといった感じのクレイリア王女殿下の意味不明な呼び合いが続く。


というか、王女殿下を呼ぶメイドってのも、どうなんだろう? 用があれば王女殿下の前に来るのが普通だろうに。


「王女殿下。何やら用があるようなので、一度ご確認されては?」


埒が明かないのでクレイリア王女殿下にそう声をかける。


「むぅ・・・」


いや、クレイリア王女殿下。やたらと不満です、みたいな感じでほっぺを膨らませても、かわいいだけですから。


「いったい何用なのだ?」


クレイリア王女殿下がメイドの方へ近づくと、「こっちです」みたいな感じでさらに俺から距離を取っていく。


そしてずらりと10人ほどの騎士が俺を取り囲んだ。王女殿下は囲んだ騎士たちの外側にいる。

ま、これがやりたくて王女殿下を俺から無理に引き離したのだろう。


「貴様! よくも昨日は卑怯な真似をしてくれたな!!」


なんか激おこな騎士風の男が剣を掲げて騒ぎ出した。


「ん~~~、どこかで見覚えが」


俺は顎を指ですりすりしながら、首を傾げる。


「貴様ッ! ブルレッド侯爵家長子であるこのドリステン・フォン・ブルレットを卑怯な不意打ちで倒しておきながら、その反応、許せぬ!」


「卑怯な不意打ちって・・・俺はただお宅の正面から杖で殴っただけですが?」


「勝負の掛け声もかけずに不意打ちを食らわせておいて、何を言うか!!」


「いや、お宅が剣を振り下ろしてきたんでしょうに? クレイリア王女殿下に当たったらどうするつもりだったんです?」


俺が疑問を呈すると、


「馬鹿か貴様! 俺がそのようなミスをするわけがないだろう!」


おお、全く持って根拠のない自信を宣いますなぁ。


昨日の振り下ろしを見る限り、こいつがまともな剣の使い手である可能性はほとんどない。ほぼ素人のような構えからのただただ力任せの袈裟切り。

ミスも何も、こいつには技術も経験も何もないと言っていいだろう。


ブルレッド侯爵は息子を推薦って言っていたけど、間違ってもコイツじゃないよな?

せめて次男とか三男にまともに剣が使える奴がいてくれよな、ホント。


「で、周りの連中はなんです?」


「貴様のような卑怯者を討つのに、手段は選ばん!」


ものすごいドヤ顔で卑怯な手を使います宣言。

王国騎士団、こんなのばっかりだったらもう王国を捨てて旅に出たい。


「よくはわかりませんが、お宅の騎士としての矜持とやらはその程度で?」


「ふざけるなっ! 貴様をボコボコにしてこの俺を馬鹿にしたことを後悔させてやる!」


「いや、俺がいつお宅を馬鹿にしたと・・・」


「あ――――っ! 貴様ら! サーレン殿を取り囲んで何をしているか!!」


後ろでクレイリア王女殿下の怒声が聞こえる。

どうやらメイドが連れ去りに失敗したか、何か変だと戻って来てくれたのか。


「お前ら! 早くやれ!」


何某君の号令で俺を取り囲む騎士10名が一斉に襲い掛かって来る。


だが、



 ボコボコボコボコッ!!



どしゃり。

10名の騎士たちがまるで糸を切られた操り人形のようにその場に崩れ落ちる。


「な、な、な・・・」


「次、俺の前に姿を見せたら、杖ではすみませんよ?」


一応丁寧に説明してから、殴る。


ボグッ!


おっと、昨日より強めに殴ってしまったか。

俺もちょっとばかりイラついていたらしい。


「おい、誰かこの不埒者たちを片付けておいてくれ。それよりサーレン殿。今日のお茶は隣国から取り寄せたそれは貴重な茶葉でな・・・」


嬉しそうに語るクレイリア王女殿下のお誘いからどうやって逃げるか、俺は試案を頭の中で巡らせるのだった。






その翌日。


無事ユーリたち3人をシゴキ終わった俺は先に訓練場を出た。


キョロキョロ。


辺りを見回すがクレイリア王女殿下の姿はない。

昨日なんとか適当な言い訳をしてお茶会(しかも二人っきりでメイドすら帯同させずにその手ずからお茶を入れてくれるつもりだったらしい)を断った俺。


「明日こそは、絶対にお茶の時間が欲しいのだ!」


無駄に力強いクレイリア王女殿下の宣言に困ったなぁと思っていたのだが、なんと今日はそのお姿が見えない。


「ならばさっさと王城から帰りましょうかね~」


いつもの腰が痛いだのなんだのと言った仕草をすることなく、魔導士の杖をステッキのように軽快に振り回しながら俺は帰途についた。


「おろ?」


目の前には『作業中、回り道はあちら』の看板が。


いつもの王城の正門へ向かう道が封鎖され、細い道へ誘導する案内が。

とりあえずおとなしく矢印通りに狭い通路の方へ足を進める。


案内通りに建物と建物の間を通る狭い通を進んでいると、


「貴様の所業もここまでだ」


前方、通路の先から鉄のパイプのような棒を持った騎士が2人現れ、俺の行く手を塞ぐ。


「観念するんだな」


そして後方、狭い通路は大人二人が並べば通り抜ける隙間もないような廊下をやはり鉄の棒を持った騎士2名が塞いだ。


「所業とか、観念とか・・・一体お宅らは何がしたいんですかねぇ?」


俺はあまりにも面倒臭くなって溜息をついた。


「クレイリア王女殿下の目を覚まさせねばならん!」

「王国の安寧を晴らさねばならん!」


顔を隠して鉄パイプを構える騎士たちが吠える。


「王女殿下の目を覚まさせることや王国の安寧を払う事と、この細い通路に俺をおびき出して襲撃することとなんの関係があるので?」


俺は素直に疑問を口にしたのだが、顔を隠した騎士たちは気に入らなかったようだ。


「貴様が王女殿下を誑かしているのはわかっている!」

「王国に取り入ろうとする平民風情がッ!」


「じゃあアンタらが魔王を倒せばいーじゃん。なんで俺に喧嘩を売る?」


こーいう奴らって、自分たちでは何もしないくせに、文句ばっかいうんだよな。

というか、妨害は実行するのか。


「黙れッ!この卑怯者が!」

「天討!」


そう言って前後を挟み撃ちにするように距離を詰め寄ると、鉄パイプを俺の脳天に同時に振り下ろす。


ガガキィン!


「ぐわっ!」

「ぎゃあっ!」


4人の騎士たちは

お互いがお互いを打ちのめすような格好でダメージを受けている。

俺がギリギリまで躱さなかったので、呆気に取られて動けないのだろうと完全に油断して全力で俺を叩きに来ていたからな。壁に沿うように瞬間的に真上に飛び上がった俺を捕えることはできず、同時撃ちと相成ったわけだ。


ボコボコボコボコッ!


狭い廊下とはいえ、俺の足で壁を踏みつけるように空中にとどまるのは難しい。

・・・短くはないよ?短くは。


そんなわけで、飛び上がったのなら、落ちる前に処理しておこうと思うわけで、4人の頭を杖で殴っておいた。


「おっと、サーレン無事だったか・・・って愚問だったよな。もう終わっちまってたか」


通路に姿を見せたのは『王宮騎士団(ロイヤルガーデン)』第三軍団長のミランダだった。


「もうってのは?」


「ああ、なんだかこそこそこいつらが話しているのを見てさ。後で何を企んでいるのか確認しようかとでも思ったんだけど、まさか、速攻でアンタを襲いに行っていたとはね・・・」


そう言ってミランダは気絶している男たちの顔を隠していた仮面を引っぺがす。


「ああ、『王宮騎士団(ロイヤルガーデン)』に所属している騎士たちじゃないねぇ。こいつらは軍属だな」


「軍属?」


俺が首を傾げると、ミランダが説明してくれた。


「カストル軍務卿がトップを務める、国防のための『王国騎士団(キングダムナイツ)』の事さ。アタイら『王宮騎士団(ロイヤルガーデン)』はクレイリア王女殿下をトップに王宮を守護する役目を追っているんだけどさ。それとは違って『王国騎士団(キングダムナイツ)』はまさしく戦争に駆り出される国直属の軍兵の役割だな」


「・・・その王国を守るべき騎士団がなんで俺を狙う?」


俺はミランダに胡乱な目を向けながら問いかける。


「さあ、詳しくはアタイも知らないけど、門閥貴族の連中がクレイリア王女殿下に近づくアンタを気に入らないのもあるだろうし、魔王討伐の任を平民であるアンタが請け負ったのも気に入らないのかもね」


キシシシシ・・・と笑いながら俺を見るミランダ。


「やだねぇ、貴族って輩は」


心底嫌そうに俺は肩を落とした。


「そうそう、貴族ってヤツは面倒なのさ・・・もちろん王族もな!」


何かを言いたそうにウインクするミランダ。


「そんなわけでアタイと酒でも飲みにいこーじゃないの! どこかのウブなお姫さんはお茶のお誘いかもしれないけど、アタイとはこっちでね!」


そう言って手でお猪口を口に運ぶ仕草をするミランダ。

こうも面倒なことが続くと、酒でも飲みたくなるよな、実際。


・・・もう鬱陶しいな。王様に直談判しよう。





今後とも「おっさん魔術師」応援よろしくお願いします!

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