第26話 やっぱり出るよね、こーいうおバカ
お久しぶりの「おっさん魔術師」です!
週末は連続投稿しますのでぜひご期待ください!
「あたたたた・・・若い連中の相手を務めると腰に響きますな」
「何を言うか。サーレン殿は全く危なげなく対応していたではないか」
俺がぼろい杖を突きながら腰をトントンと叩くマネをすると、なぜか横にいるクレイリア王女殿下が困ったヤツだ、みたいな表情で俺を見てくる。なぜだ。
とりあえず勇者たちの家庭教師?というかお守りを受けて数日。
一週間の基礎訓練が終わったユーリたち3人の状態を確認するために午後から俺自身で成果を確認するために模擬戦を行った。
基礎の基礎からみっちり叩き込めと指示した通り、わずか一週間ではあるものの基礎訓練の反復により3人とも初動が早くなって動きにもキレが見られるようになった。
新しいスキルや技などは後回しでいい。まずは身体能力の底上げとそれぞれのジョブの特性に沿った能力の底上げが急務なのだ。
みっちりと夕方までシゴいた3人に本日の訓練終了を告げ、明日からも数日同じことを続けると告げると、3人とも青い顔をしていた。
基礎訓練を一週間叩き込まれてある程度動きが変わって意味不明な自信を持っていたようだったからな。そのあたりの伸びた鼻をボッキボキに容赦なくへし折っておいた。
特にヤリスは最後の方涙目と言うよりは泣いていた。
打ち出す魔法を悉く手で払ってやったからな。プライドはズタズタだろう。
まあ、そんな程度でへこまれても困るがな。
何せこれから魔王討伐に出かけなければならないのだ。
「それで、サーレン殿。本日の訓練が終了したのであれば、もう今日の仕事は終わりという事だな・・・?」
なぜかクレイリア王女殿下が両手の人差し指をツンツンしながら問いかけてくる。
ありがたいことに今の俺の立場は、魔法省の最下級木っ端役人ではなく、王室付きの特別任務官という立場に変わっている。
おかげで勇者たちの育成以外の仕事は基本やらなくてもよくなった。
昔のデスクに座りに行く必要もないのだ。
その上給金も10倍に上がってしまった。
まあ、この給金はこの城を出発するまで出会って、勇者たちとパーティを組んで旅に出る場合は給金を見直したうえで、別途国からのサポート費用と危険手当が別に支給されるようになるらしい。
随分と破格な待遇だが、聞けば魔王に対抗するためには当然の事らしい。
魔王討伐を依頼しておきながら、残る者たちがぬくぬくしているなどあり得ぬだろう、という国王様のお言葉までもらってしまった。
まったく、最下級の木っ端役人には過ぎた言葉だよ。
「ええ、まあこの後仕事はありませんが・・・」
これの言葉にパアアッと笑顔を浮かべるクレイリア王女殿下。どした?
「ではサーレン殿、ぜひこの後私の部屋でお茶でもゆっくり・・・」
「貴様ッ! 王女殿下を誑かすのはやめてもらおうか!」
「え?」
思わず言葉に出てしまう。
隣のクレイリア王女殿下もなんだと正面を向いた。
「ドリステン・フォン・ブルレットである。クレイリア王女殿下の目を覚まし、王国の安寧を払うものである!」
そう言って銀色のピカピカした鎧を着た小綺麗な騎士風の男はいきなり剣を抜いた。
「いざ、尋常に勝負せよっ!」
「よさないかっ! 彼の実力は本物なのだ!」
「クレイリア王女殿下、おかわいそうに、魔術で幻影を見せられておられるのですね! よろしい、このドリステン。見事にこのオッサンの魔法を打ち破ってクレイリア王女殿下をお救い差し上げますとも」
一片の曇りもなく、すがすがしい笑顔で語るドリステンとやら。
やっぱでるんだね、こーいうヤツ。
「大体勝負とはなんだ! ここは王城内だぞ! 抜剣の許可は定められた手順や決闘時でもなければ・・・」
「いえいえ、クレイリア王女殿下。平民には貴族の命を受ける義務があります。私が勝負と言えば、平民であるこの男は断れないのです」
なにそれ、貴族特権の意識も甚だしいな。
こういうことがあるから、貴族と付き合いたくないんだよなぁ。
「そんなバカなことがあるか! 貴族だからと言って平民に何を命令しても良いものではない! 平民だからと言って貴族の命を断れないわけでもない!」
おおう、クレイリア王女殿下が激おこだ。
やっぱ、王家として建前上はそうやって貴族と平民の間の差異をある程度は取り払っているつもりではあるのだろう。貴族たちがどう受け止めているかは別だが。
「はっはっは、クレイリア王女殿下は現実をもっと見つめた方がよろしい。すぐに目を覚まさせて差し上げましょう!」
そう言っていきなり右手で構えていた剣を振り上げる。
そしてそのままけさぎりに俺に振り下ろそうとした。
おいおい、俺の右隣りにはクレイリア王女殿下がいるんだぞ?
俺が後ろにお前の剣を避けたら、クレイリア王女殿下に当たってしまうじゃないか。
そこまで考えて、俺が避けるはずないと踏んで攻撃してきたのか・・・いや、何も考えてないな。
ゴンッ!!
俺は剣を振り下ろそうという男より早く、ぼろい魔術師の杖で頭をぶっ叩いた。
そのまま白目を剥いて仰向けに倒れる男。
「おい、誰かこの不埒者を片付けておいてくれ。それよりサーレン殿、いい茶葉が手に入ってだな・・・」
クレイリア王女殿下は倒れた男に興味が無いようだった。
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