第19話 とりあえず自室にお帰り願おう
大変間が開いて申し訳ありません。
サーレン君が暴れた後どうするんだろーと漠然と想像していたら、いつの間にか9月が終わっていました(爆)
また少しずつ更新していきますのでよろしくお願いいたします。
「・・・ッ! こ・・・ここは・・・」
クレイリアが目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは知らない天井ではなく、勝手知ったる自身の寝室の天井であった。
意識がぼんやりしているのを頭を振って無理やり覚醒させる。
ベッドで寝ていたようだが、自分は裸だった。
掛け布団をはねのけ、ベッドから立ち上がる。窓から鮮やかなオレンジ色の夕日が差し込んでいた。
「夕方・・・?」
自分は夕方まで寝ていたというのか。
クレイリアは頭を振っても一向にシャキッと覚醒しない自分の脳にイラついた。
ナイトガウンなどを着ずに裸で寝ることもあるが、通常は寝間着を着ている。
何かがおかしい、違和感がクレイリアにはあったが、それがなんなのかはっきりとわからなかった。
見れば再度チェストの上に自分の鎧が置いてある。
なぜ寝室に鎧が置いてあるのか?クレイリアは思い出せなかった。
だが、椅子に掛けられた真っ白なマントに目を止めると、心が跳ね上がるようにドキドキして息苦しくなった。
「これは・・・?」
見たことのないマントだった。クレイリアにはわかる。とてつもない魔力を持つ魔法具のマントだ。これほどのマントなど自分は持っていなかったのだが、なぜかそれが当たり前に自分に与えられた物のような気もした。
白いマントを手に取る。
ドキン!
自分の心臓が大きくはねた気がした。
「あ・・・」
全てを思い出したわけではない。何かが頭の中にかかった霞の奥に隠れている。だが、それはとても心地よくて愛しいものの様に思えた。
クレイリアは裸身にマントを引き寄せると、胸の前でギュッと抱きしめる。
マントの魔力が自分に流れ込んでくるのか、自身の体の中に心地よい魔力の循環が起こる。
「ああ・・・貴方は・・・」
マントに包まれるような心地よさ。自分をいとおしく抱きしめる様に魔力が満ちていく。
絶体絶命だった自分。自分のすべてが打ち砕かれる直前、それを救った人物がいた。
「サーレン・・・殿・・・」
クレイリアは朧気ながらも何があったのかを思い出したのだった。
時はしばらく遡る―――――
「さて・・・どうしますかねぇ?」
この惨状。どうしたものかサーレンは頭を抱えていた。
溶解した訓練場の地面は土魔法できれいにならしたので派手な戦闘の痕跡がばれることはないだろう。後は気絶して倒れている連中を何とかすれば色々となかったことにできるかもしれない。サーレンは楽観的に考えていた。
サーレンはあたりを見回す。
ほぼ裸のクレイリア王女殿下を筆頭に死屍累々のメンバー。この連中を何とかせねばならない。ダメージはないもののこのまま放置するわけにもいかない。とりあえず先ほどの<眠り誘う世界>の魔法でここにいる全員を眠らせてあるので時間はある程度稼げるが。
この<眠り誘う世界>は対象を眠らせるだけでなく、魔力をさらに込めることにより直前の記憶をあいまいにできる能力があった。
そこでここに集まる前からの記憶をあやふやにするため、気絶している者たちもエリアを拡大して魔法を行使した。
「このままってわけにもねぇ・・・」
ここでこのまま目を覚まされるとたとえ記憶が曖昧でもなぜこんな場所に集まっているか疑問が出てしまう。そこから結局は記憶が掘り起こされてしまうかもしれない。
「仕方がない、自分たちの部屋にお帰り願いますかねぇ」
そう言うとサーレンは呪文を唱える。
「狭間に忍ぶものよ、いでよ!」
「あるじー」
「あるじー」
「よんだー?」
「よんだー?」
「しごとですー?」
「しごとですー?」
わらわらとサーレンの影からゴーストのような幽体が現れる。
「お前たち、ここに倒れている人たちの記憶を探って自分の寝室に連れて行って寝かしてきてあげなさい」
「わかったー」
「わかったー」
ひゅーんと空中を飛んでいくと、倒れている人たちの所に飛んでいくゴーストたち。
「あるじー」
「あるじー」
「ん?」
「食べていい?」
「食べていい?」
見れば突っ伏しているコンロンに向かって食べていいか聞いてくるゴーストたち。
「ダメです、それはバッチイからそのまま捨てておきなさい」
「はーいですー」
「はーいですー」
コンロンは自室に連れて行ってはもらえなかった。
国王や偉い貴族たちもそれぞれの部屋に運んで行った中、一人だけ意識が朦朧としながらも気絶していない者がいた。
(・・・ね、眠らんぞ・・・)
『王宮騎士団』第三軍団長、『赤い閃光』のミランダ・フェルトエンドであった。ミランダ自身はそれほど魔法に精通していないのだが、魔法抵抗力を高めるアイテム、魔法抵抗のタリスマンを持っていた。かなり高価な魔導具ではあるのだが、自身の戦闘力において最も重要な速度を殺されるような状態異常の魔法を受けることは致命的な結果を生みかねない。そのため、ミランダは高価でも魔導具によってその魔法抵抗力を高めていた。
(そ・・・それにしてもアタイとクレイリア王女殿下、ローズクォーツ伯爵の攻撃で傷一つ吐かなかったあの化け物を一撃で屠っちまったよ・・・。サーレン・マグデリア、イイ男じゃないか!アタイはがぜん興味が湧いてきちまったよ!)
薄目を開けながらニヤニヤする
「ん~~~?」
「ん~~~?」
薄目を開ければふわふわと得体のしれない存在が宙に浮いていた。
「!!」
ミランダは思わず悲鳴を上げなかった自分を褒めてやりたいと思った。
だが、ゴーストたちは無造作にミランダの頭をむんずっとつかむと、
「寝るですー」
「寝るですー」
記憶を探りながら電撃を食らわせるゴーストたち。
「みぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
思わずミランダは悲鳴を上げてしまった。
「ん~~~~? できるだけ優しく運んであげてくださいね?」
サーレンはどこまでも呑気だった。
結局、サーレンは「特にフォローしない」というお任せ投げやり何とかなる、という楽観的な判断をしたようです。(後で大変なことに(笑))
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