第15話 とりあえずバカは排除してから身の振りを考えてみる。
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また、クレイリア王女殿下の所属している騎士団を「王宮騎士団」に変更します。
今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!
「遅いっ!遅い遅い遅いわぁぁぁ!雑魚が我を待たせるな!!」
訓練場へ到着するなり訓練場の真ん中に立っていた宮廷魔術師長筆頭補佐であるコンロンが怒鳴りまくってきた。
「テイリー王女、あそこにいる筋肉ゴリラが遅い遅いですって。うるさい筋肉ゴリラでしゅね~」
「キャハハ!キンニクゴリラ!」
テイリー王女が爆笑だ。うんうん、子供は笑顔が一番だな。
「ばっ・・・! テイリー王女様に言ってんじゃねぇ!お前だサーレン!お前に言ってんだよっ! ・・・てか、何でお前テイリー王女を肩に乗せてんの!?どうなってんだ?」
コンロンが慌てふためいている。ははは、常に意味不明な自信に満ち溢れてた顔しか見ていなかったからな。面白い。
「いや、さっき訓練場に行けと指示をもらったばかりだしな・・・。ましてお前がここにいるなんて今初めて知ったぞ。だからお前を待たせていたなんて知らんな。ねー?」
「ねーでしゅ!」
俺は肩に乗ったテイリー王女と笑いあう。こういった爽やかな権力には全力で媚びておこう。
「ねーじゃねー!お前ふざけんなよ!大体お前のような雑魚が・・・」
「黙れ、コンロン」
「・・・!」
コンロンが冷や汗を流して黙る。
コンロンを遮ったのは姫騎士クレイリア王女殿下だった。
「サーレン殿。お呼びたてしてすまないな。ここへ来ていただくよう貴方の上司に伝えたのは私だ」
わお、クレイリア王女殿下が俺をお呼びとな。
もう嫌な予感しかしませんけども。
「今からコンロンと模擬戦を行ってもらう。貴方の実力を見せてもらいたい」
「えーと、何をおっしゃっているのでしょうか・・・?」
言われている内容はわかる。だが、なぜこんな急に模擬戦で実力確認と言う流れになっている? もう少し、「あんな雑魚を確認する意味などあるのか?」とか「あんな下っ端役人にそんな価値が!?」みたいなツッコミがあってもよさそうなもんじゃない?
「試されるのが不思議か? だが私は貴方の実力をもう疑ってはいないのでな」
姫騎士クレイリア王女殿下は腕を組み、悠然と佇んでいる。
その周りの騎士には「ホントかよ?」「まさかなぁ」という雰囲気はあるものの、この模擬戦を止めようというものはいないようだ。俺は大きくため息を一つ吐く。
「ふおおっ!えいゆーしゃんガンバレ~でしゅ!」
テイリー王女を肩から降ろすと、ターニア第三王妃とともに下がりながらも俺を応援してくれる。ほっこりするな。思わずコンロンを殺してしまいそうだ。
「はっ!すぐにお前をぶっ倒してクレイリア王女殿下の目を覚まさせてやろう!」
そう言って高そうなゴツイ杖を構える。
こいつ、模擬戦の意味わかってねーな。俺を殺す気満々じゃねーか。
通常魔術師の模擬戦の場合、同じ魔法媒体を使用する。高品質の魔法媒体だと魔力のブースター機能や収束機能を高める機能があるため、魔術師本来の実力を比べられないからだが・・・。
そう言って初めの言葉も聞かず、火球の魔法の詠唱を始めるコンロン。
コンロンの頭の上に大きな火球が生成されていく。
「フハハハハッ!貴様の存在をチリに変えるほどの火球が生成されていくぞぉ!」
なにやらコンロンが騒ぎまくっているが、魔力生成が甘く、火球の収束も雑だ。ただ大きく作るだけで、熱量を高める努力を怠っている。まあ、見た目だけの張りぼてだな。
だいたい、一対一の模擬戦で相手の目の前でダラダラと呪文詠唱を行うとは、戦闘と言うもの自体を舐めているとしか思えない。俺ならばこの瞬間までに千回はコンロンを殺している。
「はあ・・・、どうすっかな」
俺は頭をぼりぼりと掻く。
「お前、模擬戦って意味わかっているのか?」
俺は一応コンロンに声をかける。
「安心しろ、お前が死んでもこれは模擬戦中の不幸な事故だ」
メチャクチャだな。どこが事故なんだ。殺す気満々で魔法を生成してるくせに。
「死ねぇ<超火球>!!」
コンロンが頭の上の火球をこちらへ放り投げる。
火球が放たれるスピードも遅い。すべての魔力を火球自体を大きくすることに費やしているようだ。しかも魔力生成が雑と来ている。
俺は弱い風魔法を発動、自分の周りの空気の流れを作り、火球の熱を流しながらコンロンの横に回り込む。コンロンは火球を放つことに集中しており、自分の勝ちを疑わないのか周りの状況把握が疎かになっている。
俺は火球を放って無防備の状態のコンロンの横に走り込むと、持っていた魔導士の杖を振りかぶり、思いっきり脛を打ち付ける。
イメージ的には弁慶の泣き所をゴルフのアイアンクラブでフルスイングして打ち抜く感じかな?
ゴスッッッッッ!!
「ウッギャア―――――!!」
もんどりうって倒れ、脛を抑えて転がるコンロン。
俺はほとんど魔力を使ってないし、雑魚戦力でもうまくやれば勝てるよ、くらいのイメージになってるかな?
ちなみにコンロンの放ったハリボテ火球は最初に俺が立っていた訓練場の中央部分で爆発した。だが、魔力生成の甘い火球のため大した威力はなく、燃えるものが無い広場では派手に爆発しただけでクレーターもできておらず訓練場にダメージはないし、少し風の魔法を展開したので、応援してくれていたテイリー王女やターニア第三王妃に火球の熱が伝わることもなかった。
ふと周りを見ると、姫騎士クレイリア王女殿下はニヤついているが、その他の連中は苦笑している感じだ。これはうまくいったぞ。俺がすごいんじゃなくて、コンロンがバカなだけだという認識だろうな。
「・・・ラッセル翁、これが宮廷魔術師筆頭補佐の実力ですか? サーレン殿の実力はともかく、これはあまりにもひどいのでは・・・?」
訓練場の端で見学していたローズクォーツ伯爵が宮廷魔術師長のラッセル・クロウバードに問いかけていた。
「ぐむ・・・」
苦虫をかみつぶしたような表情で唸るラッセル宮廷魔術師長。
まあ、魔導省の王城組実質ナンバー2がほぼ最弱と侮っていた下級魔術師に模擬戦で完封されたわけだしな。さらにコンロンは俺を殺すつもりで魔法を放っていた。まあ言い訳は聞かないだろう。
「しっかし、あれだけザコザコと騒ぎまくっていた相手にあっさり伸されるって、マジでこいつが宮廷魔術師筆頭補佐とかありえねーだろ・・・。ま、こんな雑魚じゃ何もわからんってことだな。じゃあ別なヤツが実力を確認するしかねーだろーなぁ?」
そう言って真っ赤なくせっ毛の髪が特徴的な女剣士が俺の前に歩いて来た。
訓練用の刃引きした剣のようだが、両手でそれぞれ剣を持っているところを見ると、双剣士なんだろう。
「『王宮騎士団』第三軍団長、『赤い閃光』のミランダ・フェルトエンドだ。アタイがお前の実力を見極めてやるよ」
・・・なぜか俺は連戦が確定しているようだ。
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