第14話 英雄行為、バレる!?
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「ふおおー!!えいゆーの匂いでしゅ!」
俺は今なぜかしっかりと足にしがみつかれている。
これがどっかの子供なら引っぺがしてそこいらにほっぽっておくところだが、俺の足にしがみついているのは恐れ多くもテイリー第二王女殿下5歳である。
誰かに見られたら間違いなく事案な気もする。
だいたい、俺は現在職務真っ最中である。とある書類を届けに王城の廊下を歩いていたのである。俺の仕事なぞ、底辺中の底辺であるからして、この今歩いている場所も王城の一階であり、決して王家のやんごとなき方々がうろうろしていい場所ではない。そんな場所になぜお付きの侍女もなくテイリー王城殿下が一人で歩いてきたうえに俺にしがみついているのか。
「あの・・・どなたかとお間違えでは?」
チラリと視線を下に向けてみる。
「にへへー」
俺が視線を向けると、にぱっと満開のひまわりのような笑顔を向けてくる。
その瞬間、脳裏に長屋に住むフィレーヌさんの娘さんであるフィーナちゃんの「おっしゃん!知らない女にデレデレするなでしゅ!」と言う怒った顔がなぜか浮かんだが、気のせいだと思うことにする。
「テイリー王女様~!」
「どこですか~テイリー王女様~」
明らかにお付きの侍女らしき二人が声を張り上げながら走ってくる。
「ふおおっ!まずいのでしゅ!見つかったら連れ戻されてしまうのでしゅ!早速隠れることにするでしゅ!」
そう言って俺のローブをまくり上げてローブの中に隠れるテイリー王女。もし俺がローブの下がパンイチだったらテイリー王女には恐ろしい悪夢を見せてしまった事だろう。だが、幸いなことに俺はコートの下が裸、みたいな変態ではなく、ちゃんとローブの下に服を着ているので問題はない。
「貴方、この辺りでテイリー王女を見かけませんでした?」
侍女の一人が書類を持ったまま廊下に佇んでいた俺に声をかけてくる。
その瞬間、ローブの内側に隠れていたテイリー王女がきゅっとより強くしがみついた。
俺は思わず首を左右にプルプルと振る。
「も~どこに行っちゃったのかしら?」
「あまり長時間見失うと侍従長に怒られちゃうよ~」
そう言って走って行く侍女二人。
「危なかったでしゅ~」
にょっきりローブから這い出てくるテイリー王女。
そしてまた俺にしがみつく。
「えいゆーのいい匂いでしゅ!くんかくんか」
「いやいや・・・オッサン臭いですよ?どこがいい匂いなんでしょうかね?」
まさかオジサンキラーで加齢臭がたまらないわ!とかアブノーマルな性癖持ってたりしないだろうな?
どちらにしてもこの状態が見つかったら間違いなく俺の首が飛ぶ。社会的なだけでなく、何となく物理的にも危険な気がするのは気のせいだろうか? 早く何とかせねば。
と、思った瞬間。
「あら、テイリーちゃんこんな所にいたのね」
振り返ればそこにはターニア第三王妃がいた。
「終わった・・・」
ふ、思い起こせば王城務めを初めて早二十七年。長いようで長かったな。
「ふふふ、命の恩人に抱き着いて離れたくないのかしら?」
「!?」
第三王妃は今何と言った!? 命の恩人!? 何でバレた!?
「あら、サーレン様。どうしてそのように驚かれた顔を? ・・・もしかして、テイリーをお救い頂いたことがバレていなかったとお思いで?」
にこやかに話すターニア第三王妃。いや、にこやかなんだけど、俺自身バレてないと思っていたわけで。最悪クレイリア王女殿下に気づかれていたとしても、うだつの上がらない底辺魔術師の俺がテイリー王女を救ったなと言うヨタ話など誰も信用しないだろうと思っていたのだが・・・。
「テイリーには不思議な力があるんです。魔力の残滓を感じ取ることができるのですよ」
思わずハッとしてしまう。
俺はテイリー王女を助けるために風の魔法を使った。つまり魔法に俺の魔力が使われているわけで。確かに俺は<微風の覆布>の魔法で旗を使ってテイリー王女を包み込んだ。その魔力が俺のものだと判別できているという事か。
「えいゆーのいい匂いでしゅ!」
ずーっと俺にしがみついてくんかくんかしているテイリー王女(5歳)。
どう見ても事案である。
「よほど貴方の魔力が好きになっちゃったのね。まあ、テイリーの命を救った人だから英雄ねってお話したのだけど」
アンタのせいじゃねーかよ!
「えーと・・・、何かの間違いとか勘違いとか・・・」
「無いですわねぇ。テイリーの魔力感知は特別ですから。たまにメイドが悪戯したりしますけど、誰が悪戯したかテイリーは見抜いているみたいで、悪戯したメイドのお尻をペンペンしていますから」
・・・なんも言えねぇ。
「・・・すごいんですねぇ、テイリー王女は」
どんな能力か知らないが、誰の魔力残滓かわかってしまうなら、もはや俺には言い訳の内容が思いつかない。
ヒシッと俺の足にしがみついているテイリー王女を不敬かとも思ったが、ひょいっと持ち上げて肩に乗せる。
「ふおおっ!? 高いでしゅー!」
テイリー王女がドレスをお召しになっているからな。
肩車でもしようものなら事案発生だ。
だが、肩に乗せるなら大丈夫だろう、大丈夫だよね?大丈夫じゃないかな!
足をパタパタさせてドレスの裾がひらひらしてもきっと大丈夫だよね!誰か大丈夫だと言って! ターニア第三王妃も怒ってないし大丈夫だよね!?
と、思っていたらツッコミは別の所から来た。
「おおっ、サーレンこんなところにいたか! お前に呼び出しがかかって・・・って、お前何やってんの!?」
誰かと振り向けば・・・誰だっけ?
「・・・お前、俺が誰だっけとか言う顔しているけど、マジじゃないよな?」
いや、マジですけど。ああ、顔は思い出した。俺の上司だな。名前は知らん。
「・・・もういい。なんか知らんがお前を試験するから呼んで来いって。訓練場まで行ってくれ」
額に手を当てて首を振る上司。
「いや、出世とか興味ないんで試験はパスで」
しれっと俺が回答するとキャッキャとテイリー王女が笑った。
「いや、そう言う問題じゃないから! てか、お前よく見たら肩に乗せてるのテイリー王女様じゃないか! どうなってるんだ!? なんでお前の肩にテイリー王女様が乗っているんだ!?」
慌てまくってまくし立てる上司。
「わかりません」
わからんモンはわからんのだ。
「・・・もういいから早く訓練場に行け――――!!」
あっさり上司がキレたのでしぶしぶ訓練場に向かう。
全く持ってパワハラだな、うん。王城はブラックな職場だな。
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