第13話 姫騎士クレイリアの提案
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「・・・クレイリアよ、その方本気で言っておるのか?」
「本気です、国王様」
国王謁見の間。
通常ならばこのような謁見の間で話し合いを行うようなことはない。
だが、軍部、魔法省、その他実践を経験した上位貴族や内政を担当する大臣など、二十名以上の参加者が詰めかけたため、謁見の場に話し合いの場を移したのである。
姫騎士クレイリア王女殿下が提案した内容。
それは、勇者討伐パーティである勇者、賢者、聖女の三名にサーレン・マグデリアを加えた四名にて討伐の旅へ送り出すべき、と提案したのだ。
もちろんその提案は当初一蹴された。
聞けばサーレンなる者、魔法省の最下級役人で二十七年間一切出世していない木っ端役人であったからだ。
特に魔法省の宮廷魔術師長補佐であるコンロンからは馬鹿にするような発言があり、近衛兵と一触即発になるような場面すらあった。
だが、それに対して、「面白い」とつぶやいた人物がいた。ローズクォーツ伯爵であった。
「面白い・・・かね、カレント伯」
「そうですね、実に面白いですな。ラッセル翁」
宮廷魔術師長であるラッセルににやりと笑いながら答えるローズクォーツ伯爵。
「あのようなザコに一体何があるというのです! 勇者パーティの荷物持ちすらこなせるかどうか怪しいものですぞ!」
むきになってコンロンが喚くが、コンロンに同調する参加者は少ない。
「だが、その実力が不明な事には疑問が晴れませんぞ?」
『王宮騎士団』副団長のダイムスが口を開く。
彼は姫騎士クレイリア王女殿下と辺境の魔獣討伐に軍を率いていた一人だったが、討伐が一段落して先に王都へ報告のために帰ったクレイリアとは別に、勇者たちを連れてゆっくり軍をまとめて帰ってきていた。
そのため、勇者たち三名を王都まで連れて帰る途中ダイムスはよく観察していたのだ。
その時思ったことは、良くも悪くも「まだまだ子供」ということであった。
この三人を何の保護もなく送り出せば魔獣に返り討ちにあうことはもちろん、悪意を持った人間たちに騙されたりして魔王討伐どころの騒ぎではなくなる可能性だってある。
「そうだね、アタイらが同行出来ないってなら、そいつに戦闘力があるかどうか試せばいいんじゃねーの?」
両手で後頭部を抱えながら退屈そうに欠伸をする女騎士を一斉に周りが睨みつける。
だが、そんな視線など意にも介さない。
『王宮騎士団』第三軍団長の座をその実力のみで勝ち取ったとされる、『赤い閃光』の名を持つ双剣士、それがミランダ・フェルトエンドであった。
第五軍まである『王宮騎士団』の第三軍を預かる軍団長としてまったく後ろ盾がない中で戦功だけでのし上がったのはミランダのみである。
口の悪いものは体で取り入っただの陰口をたたくが、『王宮騎士団』のトップはまさしく姫騎士クレイリア王女殿下であり、その片腕となる全軍の副団長のダイムスも男爵という比較的貴族階級では低い爵位ながらその実力をクレイリアに認められてその立場にいた。
そんな『王宮騎士団』において、コネが通じるのは『王宮騎士団』に入団できるかどうか、くらいであろうと言われていた。入った以上はその軍団長、もしくはその下にいる隊長クラスのしごきについて行けるかどうかにかかっているのである。生半可な連中が所属できる騎士団ではない、それがガーレン王国『王宮騎士団』であった。
「ばかばかしい!そんな必要もない!ヤツは最低最弱の魔術師と呼ぶことすら嘆かわしい愚か者なのだ!」
「ギャーギャーうるせーんだよ!だからその実力を確かめりゃいーだろーがって言ってんだよ!文句があるならテメーが魔王討伐の旅に出ろ!!」
「ぐっ!」
ミランダの怒鳴り声に委縮するコンロン。
コンロンにはそれだけ反対するなら貴殿が魔王討伐に出てみては?と打診があったのだが、王城の警護がどう、と返事をのらりくらりかわしていた。要は行きたくないのである。
「確かに、試してみれがはっきりするのではないかね?」
言葉を挟んだのはドモン伯爵だった。
「おお、ドモン伯爵。そちもそう思うのか?」
国王であるドネルスク・デュラン・ガーレン14世が嬉しそうに顔を向ける。
国王ドネルスクは若い頃から同じ年代であるドモン伯爵とはウマが合い、いろんな相談事をする間柄であった。そのドモン伯爵も試してみればいいと言う。
「恐れながら、クレイリア王女殿下がサーレンなる男を推挙するにはそれなりに理由があるとお見受けいたす。だが、その理由がわかりにくいのであれば、試験を持ってその実力を試してみるのがよろしいかと」
恭しく国王に説明するドモン伯爵。だが、その伯爵の言葉にコンロンが噛みつく。
「あのような者のためにそのような試験を行うなど、時間の無駄です!」
「お主、一体どうしたんじゃ・・・?」
隣にいる宮廷魔術師長ラッセルが激昂するコンロンに声をかける。国王とドモン伯爵が話していたのに怒鳴り声をあげて口を挟んだのだ。周りはドン引きである。
「じゃあ、お前が相手をすりゃいーじゃん」
欠伸をしながら声を上げたのはミランダだった。
「そんなけ相手をザコザコ怒鳴り散らしてるんだ。まさか負けたりしねーよなぁ?」
ニヤリとしてコンロンを小ばかにするようにじろっと睨むミランダ。
「・・・いいでしょう。時間の無駄だという事をわからせて差し上げましょう」
コンロンは青筋を立ててミランダを睨む。
サーレン自身が全く知らぬところで、なぜかコンロンと戦うことになっていたのであった。
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