第12話 思えば、「この時」が人生の岐路だったのだろうと後で俺は溜息を吐いた
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「新鋭なる我が王国の諸君! よく集まってくれた」
二階のバルコニーに姿を見せたのは国王ドネルスク・デュラン・ガーレン14世その人だ。
そしてその横にパメラ第一王妃、マチルダ第二王妃、ターニア第三王妃が並ぶ。
さらにその横にクレイリア第一王女殿下、クリオ第一王子殿下、ダスター第二王子殿下、リストン第三王子殿下、テイリー第二王女殿下と続いて姿を見せた。
・・・テイリー第二王女殿下はまだ5歳だしな。ちょろちょろして危ないぞ。後ろでメイドがテイリー第二王女殿下の肩を抑えて落ち着かせようとしているな。
それにしても、国王ドネルスク・デュラン・ガーレン14世はまさに、ザ・国王といった感じの雰囲気だな。白めの髪がライオンヘアーのようだ。立派なひげも蓄えてゴツイ体を見る限り、武闘派に見える。
パメラ第一王妃はゆるふわな金髪の美人だ。まだ40前に見える。
マチルダ第二王妃は少し目の吊り上がりが気になる悪役令嬢顔の美人だ。水色の髪がよりクール感を醸し出している。
ターニア第三王妃はちょっと異色だな。メチャクチャ若いぞ。他の二人と明らかに年齢が違う。なんならクレイリア王女とさして変わらんぞ。子供であるテイリー王女をいつ生んだんだって感じだ。
思わず若いメイドに手を出して気づいたら第三王女に成り上がりって感じ?
ラノベで1本行けそうなシチュエーションだよ。
ターニア第三王妃だけ明らかにもう髪だけじゃなくてその笑顔を見る限り性格がゆるふわでぽわんぽわんしている感じがする。
パメラ第一王妃、マチルダ第二王妃からイジメられていそうな感じはしないが、どう考えても年齢離れすぎでは?王様、裏でパメラ王妃やマチルダ王妃から絶対何か言われているだろ。あんな若い子に手を出して!とか。
「此度は我が長女クレイリアの北方辺境での魔獣討伐を終え見事凱旋してくれた! その功績をたたえパーティを開いた。今日はゆっくり楽しんで行ってもらいたい」
国王の言葉にグラスを傾け歓声を上げる貴族たち。
その後も国王様のこの国を愛する何某を熱く語るありがたいお話が延々と続く。
どうしてこう偉い人ってのは話が長いのかね?
前世でもいたっけ、こういう偉い人。小学校の校長とか?
バターンって少女が倒れるまで話しているのはどうかと思ったけどね。
「だが、この勝利に浮かれている場合ではない。わが娘クレイリアがどうやら魔王の復活について確認してきたとのことだ」
「「「魔王!!」」」
一気に会場がざわつく。
そりゃそうだ、魔王復活って簡単に説明していい内容じゃない気がするが。
「国王様!それはまことの事でしょうか!」
「魔王復活・・・それが事実ならば大至急対応を練らなければ・・・」
「まあ怖い・・・この国はどうなってしまうのでしょう・・・」
「皆の者、落ち着けい!」
国王の一括に会場がシンとなる。あんたの放った爆弾発言のせいだけどな?
「クレイリアより話しをさせる。皆の者よく聞いてくれ」
そうして国王はクレイリアを手招きして隣へ呼ぶ。
「はっ!」
国王の娘であるクレイリア王女だが、騎士の儀礼服を着ているし、この場では国王と臣下と言う立場を崩さないようだ。
「皆の者、いきなりの事で驚かせてすまない。だが、私が北方の辺境へ魔獣退治に出かけて回っていたのだが、明らかに魔獣の発生する量が多いことが分かった」
クレイリア王女の説明では、どうも北の山より魔獣が南下して来ており、その量がとてつもなく多く、統率がとれており、明らかに何者かが魔獣を操っている雰囲気があったという。
・・・雰囲気だけで魔王復活を宣言してしまっていいのだろうか?
魔王復活・・・俺も異世界で45年も生きてきているが、何せ魔王なんて単語を聞いたのは初めてだ。
まあ、俺の行く色街や場末の居酒屋では魔王なんて話題が出なかっただけかもしれんけどな。
「だが、私は打倒魔王の切り札ともいえる希望の光たちと出会うことができた。『勇者』『賢者』『聖女』の3名だ」
おおおおおっ!と歓声が上がる。
へえ、3人組ですか。ドラ〇エⅡですかね?
「まだ年若く一人一人は未熟ではある。だが、彼らをサポートし、鍛え上げ、この国がバックアップすることによりきっと本懐を遂げてくれることだろう」
再び上がる歓声。
なんでしょうね?明らかに勇者某に押し付ける感がありますけど?
国で軍隊送り込んで数で魔王を圧倒、とかダメなのかね?
その時だった。
だれもがクレイリア王女の話に耳を傾け、視線を送っていたため、わずか五歳の小さな王女様がふらふらバルコニーの欄干に近づいたことに気が付かなかった。
バルコニーの下には王国の国旗や騎士団の旗など、突き出たポールに旗がたなびいている。
その旗の動きに誘われたのか、手すりにテイリー王女は近づいてしまったのだ。
手すりは大人の腰くらいの高さまであり、テイリー王女の頭まで届いていない。
手すりを支える柱の間隔は大人ならともかく、小さな子供ならすり抜けてしまえそうな距離感だった。
そしてテイリー王女は手すりの柱に手をつくと、バルコニーの外に突き出たポールに括り付けられた旗に手を伸ばした。
「あっ!」
一瞬、上がる声。
真っ先にクレイリアが気づき、目線を左下に送るが、すでにその時テイリー王女の体はバランスを崩し、バルコニーの外へ投げ出されていた。
この高さから、頭を下に落ちれば命の危険がある。
「チッ!」
その瞬間、ボーッとクレイリア王女の話を聞き流していた俺は、テイリー王女の発した声に気づき目を向ける。バランスを崩しバルコニーの外へ転落しかかったテイリー王女を救うべく魔法を発動する。
「シッ!」
唇に指を当て、すぐに魔法を発動させる。
すでに<思考加速>を発動し救出までの道筋を高速で処理している。
次に発動させたのは<風の針>。鋭く二発発射させ、ポールに括り付けられた旗を結ぶひもを切る。
さらに次の魔法、<微風の覆布>を発動させる。
この魔法は優しい風で対象を包み、衝撃を和らげ、空中にあればゆっくりと降下させることができる。今回は外した旗を巻き込むことにより、偶然旗に包まれてゆっくり地面に落ちたため、無傷で助かった、という奇跡を演出できただろう。
無事、包まれた旗が地面にゆっくり落ち、ひょっこりテイリー王女が顔を出した時、奇跡だと歓声が上がった。
だが、誰もが傷一つなく助かったテイリー王女に目を向けている中、俺はクレイリア王女だけがバルコニーから俺を凝視していることに気が付いた。
・・・マズイ。
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