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第11話 王国の実力者たち

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俺が中央テーブルに近づくとニヤニヤしていたコンロンが近くの貴族たちに饒舌に語りだした。


「こいつは吾輩の同期なのですが、20年以上王城に努めているのに一度も出世していない、まさに底辺の魔術師なのですよ」


コンロンの説明にクスクスと周りの貴族が笑いだす。

コンロンは俺の近くに歩み寄ってくるとさらにつづけた。


「この男はまさしく何の役にも立っていない、魔術師と呼ぶのもおこがましいと言うものです」


そう言って俺の背中をバンバンと叩くコンロン。

痛てーな、そして酒がこぼれるだろ、やめろ。


がははと笑いながら周りの貴族たちにドヤ顔しているコンロン。

見れば男爵か子爵クラスの貴族たちのようだ。俺を蔑むような目で見ている。コンロンと同じく鼻持ちならない感じの連中が集まっているといったところか。

このコンロン、もっと上の貴族とつながっているのかと思っていたが、これを、見る限り大したことなさそうだ。

だいたいこんなバカを誰が出世させたのだろう?

こいつはただ多少他よりも魔力が高いという以外取り柄がなかったはずなんだがな。


魔法省の訓練場で、他の一般魔術師が操る<火球>(ファイアーボール)の3倍の火球を作って周りの度肝を抜いていたことは覚えている。

だが、その火球は見てくれだけの張りぼてだ。魔力の質が悪い。魔力を圧縮するために魔力を「練る」という作業が必要になるのだが、この魔力を練るという作業をうまくこなせる魔術師がほとんどいない。多くの魔術師は「質の悪い」魔法の出来になっているのだ。


コンロンの放つ3倍デカイ火球も、よくてCランク魔獣のファイターボアを一撃で仕留められるかどうか、と言ったところだろう。Bランク以上の魔獣にはまず通用しないだろうな。

それは実践を経験していれば当人でもわかることだと思うのだが、よほど弱い魔獣としか戦った経験がないのか、もしくはほとんど実践を経験していないのか、コンロンが自分の魔法に疑問を持っている様子はない。ぶっちゃけコネと策謀で出世したのだろうか。とりあえずヤツに実力はないだろう。


中央のテーブルに俺を呼んで大声で罵倒し、笑いものにすることによって優越感を得ているのだろうか。または貴族どもに部下を罵倒しているところを見せて自分の立場を明確にしようとでも思っているのだろうか?

結構離れている貴族たちからは白い目で見られていると思うのだが、コイツら気が付いていないみたいだ。

がははと下品に笑うコンロンや蔑んだ目で見てくる貴族たちから離れ、俺は中庭の端へ戻ることにした。





「サーレン先輩すごいですね!」


ニコニコと笑顔を向けてくるメイドの女性。確かサリナさんだったなか?


「先輩って・・・、部署違いますよ?」


俺は少し困った顔を向ける。この子はメイドに上がって2年目のまだまだ新人さんらしい。魔法省でうだつの上がらない底辺魔術師の俺を先輩と呼ぶこともないだろう。


「先輩は先輩じゃないですか。私なんてお酒を配るのもおどおどしてうまくできなかったのに、貴族の方たちとお酒を通じて談笑するなんて・・・先輩凄すぎますよ」


胸の前で両こぶしを握ってフンスッと意気込むサリナ嬢。

後輩から褒められたり憧れられたりしたことは今まで皆無のため、些か居心地が悪い。


「フンッ! 貴様のやり口はサーヴァントとしては失格だがな」


鎖のついた銀縁眼鏡をクイッと上げて完璧執事のようないで立ちの男が睨んできた。


「クレスト様・・・」


サリナ嬢がちょっとおどおどしながら長身の男を見上げる。

きっと上司なのだろう。何はと言えないが、かなりやりそうな男だな。


「すみませんで、魔法省の筋肉ゴリラが勝手な事を申しまして」


暗にコンロンのせいだから俺に文句言わないで、ってことだけどね。


「フンッ!魔法省に所属しているのならば貴様も魔術師の端くれなのであろう。それらしく振舞うのだな!」


言葉尻は厳しいが魔術師としてちゃんとしろ、と言われているようだ。案外悪い奴じゃないのかも。いけ好かないイケメンだけど。この若さで侍従長クラスなら相当な有望株だろう。メイドさんたちからも狙われまくりのリア充君だろうね、

・・・全然うらやましくありませんが、なにか?


「ほう、君は魔術師なのか」


後ろから声がかかる。


「これはこれはローズクォーツ伯爵様」


恭しく礼をするクレスト。どうやらお偉い貴族様のようだ。


「カレント・フォン・ローズクォーツ伯爵様ですよ・・・。伯爵当主様ですので、魔法省に所属していないですけど、先の戦争で大活躍した魔法の達人ですよ・・・。魔法省でも研究職のトップにいるイザベラ・フォン・シルクローディン伯爵様と双璧をなすガーレン王国の二大魔術師の一人ですよ」


俺の耳元に口を寄せ小声で教えてくれるサリナ嬢。存外貴族通なのだな、サリナ嬢は。

それにしても王国二大魔術師の一人ね。戦争で活躍する超実践派のカレント・フォン・ローズクォーツ伯爵と、魔法研究のトップであるイザベラ・フォン・シルクローディン伯爵ね。イザベラ卿が貴族当主でも女性だからか、実践に出ないからか魔法省に所属しているのに対し、カレント卿は魔法省に所属していないのか。戦争時は国から貴族当主に直接戦争参加の依頼があるという事か。つまり、領地持ちで、領地への報酬を元に戦争へ参加を行う、という事だな。


「君は・・・失礼、私の方が若輩だな。貴方は魔術師なのか・・・? ローブの上にエプロンをして給仕をしているとは不思議だね」


「これは失礼を。サーレンと申しまして、魔法省では最下級の役人として働いております。魔術師としての実力は最底辺ですので、事務方なのですよ。宮廷魔術師補佐筆頭のコンロンが私に本日は給仕として働くようにと」


「ははあ・・・魔法省というのも大変なのだね」


どうやら俺の説明だけで、魔法省の中でどのようなものが蠢いているのか感じ取ったようだ。大した人物のようだな。


「・・・私は会った人物の魔力を大体量れるのですが・・・あなたの魔力はちょっと違和感を覚えますね」


「え?」


「魔力に雑味があるというか、まるで明らかに隠微されているかのような上っ面だけしか感じられないのですよ」


わお、俺は正直『鑑定』のスキルをかけられてもSランクの『隠微』スキルで俺の能力が知られることはまずない。だが、俺の隠微した魔力に違和感を覚えるという事は少なくともAランクのスキルか能力を持っているというところか。コンロンのような見てくれだけの男ではないな。


「コンロン君のようなハリボテならすぐわかるんだけどね・・・。宮廷魔術師長のラッセル殿もだいぶ衰えが目立つようになったし・・・」


マジか、完全に正しい見極めができているな。実践でも敵の実力を見極めることは極めて重要なファクターだ。この男、本物だ。


「まあ、魔法省のようなわかりにくい組織の中だと苦労も絶えないんだろうね」


酒のグラスを一つ取って中央の方へ戻っていく。


(いや~、この王国ザコ魔術師しかいないのかと思っていたが、やっぱり実力者はどこにでもいるんだな)


思わずうなる。

バカのコンロンやヨボついたラッセル卿がトップにいるような国だから、ろくな魔術師がいないのかと思っていたけど。噂では魔法省研究部門のトップにいるイザベラ卿は魔法陣の改良や新魔法の開発にいくつも成功している才媛らしいし。


そこへ中庭全体に声がかかる。


「ドネルスク・デュラン・ガーレン国王様、御成りになります」


どうやら王家の面々が登場らしい。

俺はお盆を酒の並んだテーブルに置くと、壁を背に中庭の端に身を潜めた。




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[気になる点] よほど弱い魔獣とした戦った経験がない なんか言い回しがビミョー した が多いのか しか のゴジゴジくんか ・・・ よほど が頭についてるから しか のゴジゴジくんと考える方が自…
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