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第9話 王家の人々

ブックマーク追加誠にありがとうございます!

大変励みになります。

今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!


まいった、まさかこんな場所でばったりと“姫騎士”クレイリア・デュラン・ガーレン第一王女殿下にあってしまうとは・・・。

しかも、どこかであったかなどと聞かれては、もちろん会ってませんと答える以外にない。


「いいえ、初めてお会いするかと思います。クレイリア王女殿下」


とりあえず如才ない挨拶を返しておけば問題ないだろう。


「ほう、私の顔は知っているか」


「ええ、それはもちろん。王女殿下は有名でいらっしゃいますから」


ヤッベー、どちらさまですか?とか言った方がよかったか?


「そうか、私は3年ほど長期にわたって辺境へ魔獣討伐に出ていたのでな。久しぶりに会った人たちには驚かれるのだよ。身長が伸びて顔つきが多少変わったようでな」


少し目を鋭く細めて俺を見るクレイリア王女殿下。

マジヤッベー。この人かなり鋭いな。俺が驚きもせず普通に挨拶したということは、辺境から戻ったクレイリア王女殿下の姿をすでに見ていたと判断したのだろう。

それが、『あの時』つまり暗殺者を撃退した時に目が合ったと思い出されると大変困る。

俺はうだつの上がらない底辺魔術師の役人でしかない。雲の上の存在であるクレイリア王女殿下とのつながりなどあり得ないのだ。


「いえいえ、クレイリア王女殿下の雄姿は聞き及んでおります。一目でわかりますよ」


あえて穏やか且つにこやかな笑顔を向ける。

あまり俺に対する疑念を深められては俺のスローライフに悪影響を及ぼしかねない。


「・・・そうか、掃除の途中であったか。邪魔したな」


そう言ってクレイリア王女殿下が俺の横を通り過ぎる。

俺は無言で深々と頭を下げる。

横目で離れていくクレイリア王女殿下の後ろ姿を見送ると俺はホッとため息を吐く。


「・・・マジで冗談じゃない。あんな立場の人に目をつけられたらどうなるかわかったもんじゃないよ」


俺は全く使っていないモップにこれまた全く使っていないバケツを引っ掛けて次の便所に向かうことにした。






「よう!便所の達人!」


いや、太鼓の〇人じゃないんだから、なんだよその呼び名は。


あれから数日。クレイリア王女殿下の凱旋は盛大に行われた。

凱旋と言ってもあの日は王城に入るまでで、凱旋パーティは数日後に盛大に行われるらしい。なんでも聞くところによると、王族勢ぞろいで王都の主だった貴族や、辺境の貴族も子爵以上は王城に呼ばれてのパーティを行うようだった。

そんなわけでまだまだ王城内で凱旋パーティの準備でバタバタしている人が多い。


「もうすぐクレイリア王女殿下の凱旋パーティが行われるんだ。貴様のような落ちこぼれでも得意な作業があってよかったな! 便所掃除」


そう言って大声で笑うコンロン。

今日もイヤミとウザさが全開フルスロットルだな。

確かにあの日一日便所掃除を続けた俺だが、あまりの便所の綺麗さに多くの人間に驚かれてしまった。だが、俺が褒められたり評価されるのがコンロンは気に入らないらしく、事あるごとに俺の事を「便所掃除しかできないクズ」などと大声でしゃべってバカにしている。鬱陶しいったらありゃしない。


「舐めるように便器を掃除しておけよ! 尤も凱旋パーティ当日は貴様には別の仕事があてがわれるがな」


ニヤリと笑いながら俺を見るコンロン。


「別の仕事?」


「当日を楽しみにしているがいい。それまで便所掃除さぼるなよ!便所の達人!」


せめて便所掃除の達人って言ってくれよ。便所の達人じゃ、便所を使うのがうまい人みたいに聞こえるじゃないか。

ま、どうでもいいかと俺はコンロンの言葉を無視することにした。






「は~~~、最近は面倒な事が多いなぁ・・・」


やっと8時間の勤務を終えて下町の長屋に帰ってきた。

今日は天気もいいし、長屋の玄関横にあるベンチに座ってメロンパンをかじる。

もちろんパン屋のマーサから買ったいつものパンだ。


「ぴよぴよ~」


パタパタと空から舞い降りたヒヨコが俺の肩に止まる。

俺はメロンパンをつまんで崩すと、手の平にパラパラと乗せる。


「ぴぴー」


俺の手に乗り、嬉しそうにメロンパンをついばむヒヨコ。


『ボス、王家の人物に関して調査が完了しました』


『ご苦労。報告してもらおうか』


『ははっ!』


何を隠そうこのヒヨコは俺の使い魔だ。そして使い魔のヒヨコはこの一羽だけではない。実はヒヨコ軍団は相当多い。いろんな所へ情報収集に出向かせている。

その中でもここ数日はこのガーレン王家の調査に時間を割いている。

何せ25年以上働いてきているが、王家のことなど全く興味がなかったので、王の名前すらうろ覚えだ。もちろんその子供が何人いるかなど全くと言って知らない。

そんなわけで、今更ながらだが、王家の面々の情報を仕入れておこうと思ったわけだ。

面倒臭いことに巻き込まれないためにも、事前に知ることは重要だな、うん。


『王家は現国王であるドネルスク・デュラン・ガーレン14世、その第一王妃であるパメラ、第二王妃であるマチルダ、第三王妃であるターニアがおります』


『わお、奥さん三人もいるんだ』


『はい、それぞれに子供がおります』


『お盛んな事で』


『第一王妃のパメラにはクレイリア第一王女殿下20歳、クリオ第一王子殿下18歳の二人がおります』


『第一王妃に男女の子がね・・・』


『第二王妃マチルダにはダスター第二王子殿下17歳、リストン第三王子殿下15歳の二人がおります』


『男ばっかり』


『第三王妃ターニアにはテイリー第二王女殿下5歳の一人だけです』


『一人だけ若いな』


『数年前にターニアを見初めて急に娶ったそうで』


『王様あるあるかな?それにしても子供が五人もいるのね。多いな』


『そうですか?我が里の族長など、101羽ヒヨコちゃん大行進できるくらい子供がおりますが』


『どっかで聞いたような物語だね。それで王家の仲はいいのかな?』


『ギスギスです』


「よし、近寄らないことに決めた」


使い魔であるヒヨコと念話で話していたのに、思わず声に出して決意表明してしまった。


『ブッチ切りでクレイリア王女殿下の人気が高いのですが、当人が女王として国をまとめることに難色を示しており、そのため今は第一王子であるクリオ殿下が有力視されておりますが、第二王子のダスターが王への執着を見せており、派閥の拡大に躍起になっているようです』


『派閥ね。俺から最も遠い世界の話だね』


まかり間違ってもうだつの上がらない魔術師を派閥に入れようなんて話は出てこないだろうさ。ま、誰が王になろうと俺の知ったことではないけどね。


「おっしゃん!そのヒヨコかわいいでしゅね!」


見ればいつの間にか長屋の管理人さんの娘であるフィーナちゃんがやってきて俺の手のひらに乗っているヒヨコを凝視している。


「んー、かわいいヒヨコならまだまだいるよ?」


俺はピィーッと指笛を吹く。するとヒヨコが10羽以上飛んできてフィーナちゃんにとまる。


「ふおおっ!? ヒヨコがいっぱいでしゅー!!」


ヒヨコと戯れるフィーナちゃんを見ながら、このスローライフを守るためには王家と絶対関わるべきではないと強く心に誓った。


・・・フラグじゃないよな?


今後とも「おっさん魔術師」応援よろしくお願いします!

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