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悪魔がなぜ幼女に!? 上級悪魔の「とある失敗」から始まった冒険者生活はどうやったら成功するのか?  作者: 草沢一臨
第二章 次の仕事に出発なのじゃ、といいたいところだが
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一網打尽じゃ

 頭を振って頭に付いた奴を追い払う。だが私の怒りは頂点に達しつつあった。

「戻ったら、温泉で頭を良く洗わねばならんな。ん? 温泉……湯気……霧……そうじゃ、死の霧(デスフォッグ)とかどうじゃ。建物全てに充満させれば一網打尽じゃ!」

「煙で燻して追い出すとか、殺すってのは聞いたこと有るけど、似たようなもん?」

「そんなようなもんじゃな」

 腕を組み、どうだと言わんばかりにふんぞり返る。

「ただこの教会、結構広いよ。全部いける?」

 流れをへし折るように、フィリアが突っ込みを入れてきたが。

「私を誰だと思っておるのじゃ!」

「……ちっこいつるぺた?」

「……棒切れ、お前さんも一緒に死ぬか?」

 苛立っている状況で、余計な口を挟むようなら纏めて葬ってやらんでもない。エルフの一匹程度混ざったところで一向に困らん。

「あー、『奴ら』とは一緒に死にたくないね」

「ふむ。ではその代わり、後片付けはナサリアと共にやるんじゃぞ。任せたからの」

「……え!」

 驚いて振り向いたアホエルフに満面の笑みをくれてやる。発言の責任を取らせる事も大事なのじゃよ。仕事の分担という単純な理由だが、私は奴らを触りたくもないからの。


 奴ら別名『黒い悪魔』とか言われておるらしいが、悪魔の立場から言わせて貰えば、兎にも角にも、奴らと一緒にされるのは勘弁して欲しい。そもそも、悪魔ってそんなに人間に嫌われているのか? 私は人間に対しては「かわいい」悪戯を何度かしたに過ぎないが。

 と、そんな事を考えているうちに、また奴らに体に貼り付かれたらたまらん。さっさと終わらせる方が良いな。

「シスター、この建物の中には他に誰も居らんか? 居ったら一緒に殺すぞ」

「今は誰も居ません!」

「では、さっさと戸締りをして、正面から揃って出るのじゃ。出終わったら魔法を発動させるぞ」

 全員で慌しく窓を閉め外部への漏れを防ぎ、内部の扉を開け放ち教会全体に霧が行き渡るようにする。

 シスターを入れて五人でやったので、さすがにすぐに終わった。

 私? 何もやっとらんよ。

 全員が外に退避すると、私だけが扉の前に立つ。

「バーサルン・デハイネス・フォロア……暗き深淵より這い出たる漆黒の霧よ我が意のままに、生ける者を食い尽くせ……死の霧(デスフォッグ)

 教会内部の中央に、黒い球体が浮かびあがり、そこから次第に闇の一部が漏れ始める。

「よし、上手くいったのじゃ。扉を閉めてくれ」

 私が言うと即座にボドルガが扉を閉める。先程のように、シスターの力で弾かれては困るので、私は触る気になれない。念には念を入れ、というところだ。

 戸締りをしなかったのはそれが怖かったからではなく、ただ面倒な事をしたくなかったということと、窓を閉めるのには、身長がちょびっと足りなかったというのが理由じゃ。ほんのちょびっとじゃぞ。

「で、どんだけ待つの?」

 興味津々に窓から覗き込むフィリア。

「あまり寄るなよ。漏れる可能性もある」

「おぅわっ!」

 悲鳴を上げて慌てて背後に飛び退る。

「まあ、効果時間もあるしの。奴ら尋常ではない生命力なのでな……あと百程数えれば良いのではないかな?」

 暇つぶしに、教会の脇に咲いていた赤い花を摘んで、髪に挿す。それを見ていたナサリアがニヤニヤと笑っている。気にするな、これは悪魔のちょっとした茶目っ気じゃ。

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