それは偶然の出来事
ダリルは親子代々お城に仕えてくれる庭師の息子で、ダリルもまた、お城のお庭をきれいに手入れをしてくれています
彼とは年も近く、小さい頃は兄弟のように仲良く遊んでいました
ですが、王女様の特異体質のために遊ぶことが禁止され、今では廊下や庭で顔を見れば軽く会釈をするだけでしたので、おしゃべりするなんていつぶりでしょう
うしろから声をかけられたものですから少しびっくりしてグラリと地震が起きます
その揺れで本棚の上から書籍が数冊バサバサと落ちてきました
「あのね、私、魔女様のことを調べているの」
「魔女?」
「そう、出会った人の感情を奪ってしまう、素敵な魔女様よ。あなたは何か知らない?ダリル」
「感情を奪う魔女…それならお祖母様から聞いたことがあるよ」
「本当?!どこにいるの?!」
ぱぁっと喜んだ王女様の周りで風が吹きます
「聞いたことはあるけれど、そんな魔女がいるということだけだよ。どこにいるかまでは…」
「そっか…そうよね…」
がっかりしてふと手元に視線を落とすと、さっき本棚の上から落ちてきた本が…
王女様の起こした風で乱暴にめくられたその本の1ページに真っ黒な服を着た女性の挿し絵が入っていたのでした