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見つからない手がかり
お料理の本
見たこともない童話
ある冒険者の伝記
いくら探せど感情を奪う魔女についての本が見つかりません
もう、探し始めて1週間になります
「お手紙をくれた人も、地図を描いてくれたって良かったのに」
王女様の口から文句が出てきてしまいます
それもそうです、あんなにたくさんあると思った書庫の本のほとんどを調べ尽くしてしまったのですから
見つからなくてがっかりして、手紙をくれたひとにぷりぷりと文句をたれる
そのたびに初夏の晴れた空から小さな雹がふってくるのです
いつもは部屋にこもっている王女様が、毎日書庫に通うのは、あまりにも珍しいことでしたのでお城のみんなが知っていました
体質のせいで腫れ物のように扱われる王女様ですが、もともとはとても優しく可愛らしい王女様です
深くは関われずとも、お城のみんな部屋にこもりがちの王女様を心配に思っていたのでした
「何を探しているんだい、王女様」
そう声を掛けてきたのは、仲良しだった年の近い召使いの男の子、ダリルでした