両親をどうにかします
いつも通り兄と昼食をとっているとそれは突然やってきた。
「ロレッタ、アドニス、行くぞ」
唐突に現れた父は、父の使用人に命令し、私達を無理やり車に乗せた。
「お、お父様......」
「何も聞くな」
これ以上何を言っても無駄だと判断した私達は大人しく連れ去られることにした。
にしても、初めて父を生で見たが、非常に美形である。
その端正な顔立ちでどれほどの女を虜にしてきたのか気になるところだが、今は冗談でもそのようなことを聞ける雰囲気ではない。
長い長いドライブを終え、着いたのは高級そうなホテルだった。
私が尻込みする中、堂々と入っていく父と兄。置いていかれるのは嫌なので黙ってついていく。
ホテルマンに案内されたのは景色が綺麗な最上階のレストランだった。
全て個室で内緒話をするのにはもってこいだ。
もう嫌な予感しかしない。
父が1番奥の個室を開けると、そこで待っていたのは1人の美しい女性だった。母である。
「待たせたな」
「ええ、本当に」
そこは嘘でも全然待ってないわよ、って語尾にハートマークをつけて言うべきでしょうよ!!
ほら、父もイラッとした顔してるじゃん!!
ぜひとも2人には間に挟まれる私達の気持ちになって欲しいものだ。
しかし、こんなところで何故家族会議をするのだろうか。家でやればいいのに。
と、まぁそんな考えは一瞬で打ち消されるんですけど。
「今日で最後にしよう」
「そうね、いい加減あの家に帰るのも嫌気がさしていた頃ですもの」
前世でそれなりに生きていた私はその会話で全てを察した。
この2人はもう離婚寸前なのである。
そりゃ嫌気がさすくらいあの家に帰りたくないなら、話し合いをあの家でするわけがないよね。
私達が連れてこられたのはきっと親権問題解決のためだろう。
離婚するだけなら離婚届を出せば済む話だし。
これだけ長引いているということはどちらが誰を引き取るか相当揉めたのだろう。
「何度も言うが私が引き取るのはアドニスだけだ」
「兄妹を引き離すおつもりですか?アドニスを引き取るのならロレッタも引き取るのが道理ですわ」
「ロレッタを引き取りたくないのならハッキリそう言えばいいじゃないか」
「あなたこそ後継者しか引き取るつもりは無いとハッキリおっしゃったらどうです?」
どうやらこの2人が揉めている原因は私のようだ。
......そう言えば、ゲームで語られたロレッタの過去にこんな場面があった気がする。
結局話し合いは決着せず、離婚はしなかったが、それから両親が家に帰ってくる回数はめっきり減った.....
うん、ロレッタがあまりにも可哀想すぎるよね。
こんなハッキリとロレッタがいらないって言われてるんだから。
かと言って後継者としか見てもらえていないアドニスもアドニスだけど。
ひとまず、これを乗り越えれば何とかなりそうだ。
頑張れ、私!
「お父様、お母様。私、お兄様と離れるのは嫌です」
「ほら、本人もこういっている事だし......」
「ですが、お父様とお母様が離れるのはもっと嫌です」
母の嬉しそうな言葉を途中で遮り、説得する。
「私は仲良しな家族になりたいです。使用人から聞きました。お兄様や私が産まれた時、お父様とお母様は笑顔だったと言われました。でも、私はお父様とお母様の笑った顔を見ていません。私はみんなで笑顔でご飯を食べたいです。みんなで笑顔でお出かけしたいです」
母や兄の目には涙が溜まっていく。
父は眉間にシワを寄せただけだが、あともう一押しだ。
「お父様とバイバイするのは嫌です。お母様とバイバイするのも嫌です。でもお兄様とバイバイするのはもっと嫌です!みんな一緒じゃないなら私はお兄様と2人で暮らします!喧嘩ばっかりのお父様やお母様なんて嫌いです!大嫌いです!!」
ここで私が大泣きする。
するとどうでしょう。みんな私につられて涙を流し始めました!なんて完璧な作戦なんでしょう!
「ごめんなさい......アドニス、ロレッタ。私達はいつの間にか自分のことしか考えられなくなっていたわ......」
「2人とも、こんなに大きくなっていたんだな......私達がお前達のことをちゃんと見ていなかったばかりに何も気づけなかった。こんな不甲斐ない父ですまない。2人が許してくれるのならば、もう一度やり直すチャンスをくれないか」
2人とも涙を流しながら私達に頭を下げる。
私と兄は2人で顔を見合わせ、笑う。
「僕は仲が良い家族に憧れていました。それが実現するのならもう何も望みはありません」
「私もお兄様と同じです!みんな仲良しが1番です!」
その言葉を聞いたお母様は泣き崩れた。
「すまない、2人は先に帰っていてくれないか。......今日の夕飯は家族全員で食べよう」
きっと父は母と改めて話すこともあるのだろう。
私と兄は笑顔で頷いて使用人と家に戻る。
帰る途中、疲れて寝てしまったが、起きた時に兄が膝枕をしてくれていたことが印象的だった。
「ロレッタ、今日はお疲れ様。ロレッタがいなかったら僕達は離れ離れになっていたかもしれない。......ロレッタは自慢の妹だよ」
恥ずかしがりながらも、頭を撫でながら労わってくれる兄が愛しくて、起き上がって勢い良く抱きつく。
う゛っ、という声が聞こえたが、無視無視。ひ弱な兄が悪い。
「私、大好きなお兄様と一緒に暮らせて嬉しいです!これからもよろしくお願いします!」
「はいはい、よろしくしてあげるから離れてくれないかな。降りれないじゃないか」
「もう少しこのままがいいです!」
ツンデレな兄のデレの時間はもう終わったのか、私を引き離すと颯爽と家に入ってしまう。
だけどその時、耳が真っ赤になっているのを見てしまったので、また私は嬉しくなって兄を走って追いかける。
ちなみに、今日の夕飯は家族全員で食べた。
いつも一緒に食べる使用人も今日は遠慮したのか、ボディーガードさんとドアの外で待機していた。
これからも夕食は家族全員で食べることと、今度お出かけすることが決まったので、ひとまず家族問題は解決したと言えよう。




