セイナ
僕たちの行動は、少しばかり遅かった。駆けつけたとき、カオンはもうそこにはいなかった。トゥーリは瀕死の状態だったけれど、息はしていたよ。ミカが看護し、僕が治療した。僕の身体には宇宙人の怪我を癒す成分が備わっているからね。完ぺきではないけれど。
トゥーリはすぐに意識を取り戻し、カオンのことを語った。
カオンはとても興奮していたよ。俺だけじゃ満足できなかったようだ。戦いたくてウズウズしている。そんな感じだった。もっと歯ごたえのある奴はいないのかと叫んでいたよ。
まったく、面倒な奴ね! そう言ったのはミカだった。新興軍のミカは、トウッカ族の生態を聞かされていたそうだ。身体的な戦いで、地球人は最強だからね。女であっても、本気になった地球人には誰も敵わないよ。
そのときだよ。ウオォー! なんて叫びが聞こえた。僕は当然のようにアピナの声だと考えた。なにか騒ぎが起きると、その中心には大抵アピナがいるんだ。
けれどそれは、間違っていた。
慌てて駆けつけた僕たちの前で繰り広げられていた光景は、予想外過ぎていた。まさかだよな。セイナがアピナの前に立ちはだかり、カオンの攻撃を全て受けていたんだ。
アピナはカオンの影に蹲っていた。
叫びをあげていたセイナだったが、その身体に異変が起きていた。肩幅の広いその身体に、ヒビが入っていたんだ。
やめなさいよね!
ミカはそう叫び、飛び出した。
尻尾を使って攻撃をやめないカオンに対し、ミカはその尻尾を避け、腹に一発お見舞いした。それだけでカオンは崩れ落ちたよ。
けれどときは遅かった。ミカの背後で、セイナも崩れ落ちる。その身体が、粉々に砕けて散った。




