尻尾
す尻尾が取れるとカオンの身体は倍ほどに大きくなり、全ての肌から毛が生えてきた。代わりにというか、元からあった頭の毛が短くなる。全身を二ミリ程度の毛で覆われている感じだった。目の周りなど一部には生えていない箇所があったんだけれどね。
おいおい、勘弁してくれよな。トゥーリは意外なほどに冷静さを保っていたようだ。
けれど、その憶測は間違っていた。
さぁて、久し振りに暴れさせてもらおうか。カオンはそう言いながら、千切った尻尾を振り回す。そしてトゥーリに攻撃をする。
トゥーリは強い。もしもまともに戦っていたなら、余裕で勝っていただろうな。しかし、その尻尾が、トゥーリを邪魔する。凶器がずるいってわけじゃない。トゥーリにとってはだけれど、その尻尾は理性を刺激する。
カオンの尻尾の先は、ボールのように丸く、振り回すことで音が鳴り、しかも七色に発行するんだ。トゥーリの視線がそのボールを追いかける。とてもじゃないが戦いになんて集中できない。光る物を追いかける習性が、半漁族にはあるんだよ。
尻尾の攻撃を交わすことは容易にできたが、その隙にやってくる攻撃には全くの無抵抗だった。トゥーリはあっという間にその場に這いつくばった。
僕たち三人は、まさかそんな事態が起きているとは想像もしていなかった。けれど、すでに僕たちは、どこかで繋がっていたのだろう。なにかを察知し、いつもは歩かない廊下を突き進んだ。その先には職員室があるんだけど、その道はどういうわけか生徒も先生も通らないんだ。どこへ行くにもちょっとばかし遠回りになる不思議な廊下なんだよ。生徒間の逢瀬や喧嘩に利用されることはしばしばある。そんな道なんだ。




