挨拶
アピナとセイナはその後二人組になった。モネーへのちょっかいは止んだよ。けれど、仲良くはなっていない。僕はたまに話をしているけど、モネーと口を聞いている姿は見たことがない。
ミカは翌日、僕の隣に腰を下ろした。あなたたちと一緒に勉強するのって、楽しそうよね。そう言いながら、笑顔を見せた。
僕とモネーは表情を変えずに頷いたけれど、内心では喜んでいた。ほんの短い時間だったけれど、共に戦った記憶は、僕たちを強く結びつけた。絆が生まれた瞬間だったんだ。
その日から僕たちは三人で行動をしている。モネーは相変わらずだし、僕もそれほど変わってはいない。ミカだけが、本性を現しているけれど、僕やモネーだけでなく、その姿はクラス中から受け入れられているよ。
トゥーリはそんな僕たちの後ろの席に腰を下ろした。モネーの言葉もミカとのやり取りも聞いていたはずだけど、なんの反応も示さない。正直、不気味に感じている。
全校生徒の前での挨拶でも、教室での挨拶でも、トゥーリはよろしくの一言しか口にしない。先生たちも、詳しい説明はなしだ。その姿からトゥーリが何者なのかは誰が見ても明らかなんだ。なぜなんだって感じていた。
トゥーリとはどのように接していいのか分からない。トゥーリがトイレに行った頃合いを見計らい、ミカに尋ねた。
仲良くした方がいいのか? っていうか、どうして誰もなんの説明もしないんだ? あいつは連合軍だろ? しかも半魚族だぞ!
トゥーリは連合軍じゃないわよ。その話はもうついているのよ。今は新興軍なのよ。あなたのお仲間ってわけね。
トゥーリが引っ越してきたその日にはまだ、その事件の詳しいことは知らなかった。ミカからその話を聞いたのは、数日が過ぎてからだった。
けれどこの世界は、人種の違いには寛容なんだよ。トゥーリはすぐに、街にも学校にも馴染んだ。連合軍を抜けた初めての半魚族であることも、街中が知っている。




