トイレ
僕とモネーは、どちらから言い出したわけでもなく、同時にミカを追いかけて行った。モネーはその際、アピナにぶつかり、アピナを吹っ飛ばしていた。なかなかにいかしたその歌が、終了した。アピナの叫び声が、背中にぶつかる。
追いかけたとは言っても、流石に僕とモネーは、女子トイレの中には入れない。トイレの前で、ミカに叫んだ。
昨日はありがとうな! あのままだと僕の身体が燃えていたかも知れない。助かったよ。
僕の言葉に、ミカからの返事はなかった。
俺は別に気にしていないぞ。女の涙は初めて見たけど、美しいって感じたよ。
アピナの言葉には、ミカは反応した。
うるさいわよ、バカ!
ミカの声はもう、泣いてはいなかった。
それから少しの間を置き、ミカがトイレから出てきた。
こんなところで女の子を待ち伏せするなんてよくないわよ。
ミカはそう言ったが、笑顔を浮かべてもいた。
三人で教室に戻ると、僕とモネーの席が、なくなっていた。置いてあった荷物もなくなっている。
僕はすぐにアピナを探した。しかしアピナは、教室内にはいなかった。
あの野郎! なんて大声を出していると、クラスの女の子が、あそこだよと、窓の外を指差した。僕たち三人は慌てて駆け寄り、窓を開けて、外を覗き込んだんだ。そこには粉々に砕けた机と、中身の散らばった僕とモネーのカバンが見えていた。




